表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

第11章「糖尿病鬼との決戦」、第12章「脂質異常獣と肥満魔」

命の工場に迫る“病の軍勢”──その先陣を切るのは、糖と脂質のバランスを乱す二大存在。


第11章では、リュウたちは「糖尿病鬼」と対峙する。

それは、インスリンの鍵が合わなくなった結果、体内を彷徨うグルコースの怒りが生んだ“血糖の魔物”。

乱れた代謝が、命を蝕む姿を見せつける。


続く第12章では、「脂質異常獣」と「肥満魔」が立ちはだかる。

エネルギーの過剰蓄積が招く、脂質の暴走と炎症の連鎖。

果たしてリュウたちは、この“見えない慢性の敵”に打ち勝てるのか──?


これは戦いであり、問いかけだ。

私たちは日々、何を体に取り入れ、どう生きているのか──

命の均衡を取り戻す旅が、ここに始まる。

第11章「糖尿病鬼との決戦」

均衡の地を旅立ったリュウたちは、暗雲渦巻く荒野に辿り着いた。

空は重く垂れこめ、地面には黒い裂け目が走っている。

 その裂け目から、蒸気のような甘ったるい匂いが立ち上っていた。

「ここが……血糖暴走地帯……!」

グリコが眉をひそめた。

「血糖が制御不能になり、体を蝕んでいるんだ!」

リュウは剣を握りしめた。

 ここに、疾患族の一体、「糖尿病鬼」が潜んでいる。

突如、地響きが起こった。

裂け目の奥から、巨大な影が現れる。

 それは、どろどろに膨れ上がった鬼だった。

 肌は糖の結晶に覆われ、目は血走り、手にはねっとりとした鎖を巻きつけている。

「グガアアア……! オレハ、トウニョウビョウキ……!」

糖尿病鬼が咆哮する。

「インスリンノ力ヲ奪イ、血糖ヲ支配スル!」

リュウは息を呑んだ。

インスリン──血糖を細胞に取り込ませるために不可欠なホルモン。

 それが機能しなければ、血糖は血液中に溢れ、体を蝕む。

「リュウ、気をつけて!」

アミナが叫ぶ。

「この鬼は、二つの顔を持つ!」

一つは、インスリンそのものが作られない【Ⅰ型糖尿病】の顔。

 一つは、インスリンがあっても効かない【Ⅱ型糖尿病】の顔。

「どちらも、体に深刻なダメージを与える……!」

鬼は雄叫びをあげ、黒い糖の鎖を振り回した。

 周囲の草木が絡め取られ、たちまち枯れていく。

リュウは飛び込んだ。

剣を振り上げ、鎖を断ち切ろうとする。

 だが、鎖はしつこく絡みつき、リュウの動きを鈍らせた。

「うっ……重い……!」

「それが高血糖の恐ろしさ!」

グリコが叫ぶ。

「血液がドロドロになれば、全身に酸素も栄養も届かなくなる。

 目も、腎臓も、神経も、心臓も──すべてが侵される!」

リュウは必死に抗った。

 だが、鬼の力はあまりにも強い。

そのとき──金色の光が走った。

「まだ諦めるな!」

現れたのは、インスリンの賢者だった。

彼は手に持った光の杖を振るい、リュウに力を送る。

「インスリンの力を、今一度!」

リュウの剣が輝いた。

彼は素早く動き、鬼の鎖を断ち切った。

鬼は呻き、後退した。

「ナゼダ……! 血糖ガ……整ウ……?」

リュウは叫んだ。

「血糖は、体と共に生きるものだ!

 勝手に暴れ回るものじゃない!」

リュウは剣を振るい、最後の一撃を叩き込んだ。

糖尿病鬼は悲鳴を上げ、霧散していった。

 暗雲も、少しずつ晴れていく。

静寂が戻った荒野で、リュウは深く息をついた。

「血糖って、本当に体にとって大事なんだな……」

グリコがうなずいた。

「そうだよ。高すぎても、低すぎても、命は危ない。

 だからこそ、体は絶えずコントロールしてるんだ」

アミナが空を見上げる。

「でも──次は、さらに大きな敵が待っている」

リュウたちは、顔を引き締めた。

次なる戦いは、「脂質異常獣」との激突。

 生活習慣病の闇、その本質へと挑む時が来る──!


第12章「脂質異常獣と肥満魔」

荒野を抜けたリュウたちは、黒く濁った湖のほとりに立っていた。

湖の水面には、どろりとした脂のような膜が広がり、

 空には不吉な雷がうごめいている。

「ここが……脂質異常の地……」

グリコが顔をしかめた。

「脂肪とコレステロールのバランスが崩れ、命を脅かす地帯だ!」

リュウは剣を握りしめ、湖の中央を見つめた。

 そこには、何か巨大な影が蠢いている──。

大地が揺れた。

湖から這い出してきたのは、

 巨大な異形の獣だった。

体は厚い脂肪に覆われ、

 背中にはトゲのようなコレステロールの結晶が突き出している。

「オレハ……脂質異常獣……!」

獣は低く唸った。

「血管ヲ、詰マラセ、壊ス……!

 トリグリセリドヲ溢レサセ、命ヲ脅カス……!」

リュウは息を呑んだ。

「脂質異常症……!」

グリコが叫ぶ。

「悪玉コレステロール(LDL)が増えすぎたり、

 善玉コレステロール(HDL)が減ったり──

 血管に脂肪がたまり、動脈硬化を引き起こすんだ!」

獣は口から黒い液体を吐き出した。

それは血管を模した地面に染み込み、

 どす黒いプラークを作り出していく。

「早く止めないと……!」

アミナが剣を抜いた。

「このままじゃ、血管が詰まって心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす!」

リュウたちは獣に向かって突進した。

だが、獣の周囲には、さらに小さな怪物たちが群がっていた。

その中の一体が、膨れ上がった体でのしのしと歩み寄ってきた。

「オレハ……肥満魔……」

だらしない笑みを浮かべ、体中から余分な脂肪を撒き散らしている。

「余剰エネルギー、体ニ溜メ込ム……! 動キヲ鈍ラセ、病ヲ呼ブ!」

さらに別の影も現れた。

鋭い爪を持った細身の影──高尿酸鬼。

「オレハ……コウニョウサンキ……」

彼はにやりと笑い、体内に「痛みの結晶」(尿酸結晶)を撒き散らしていく。

「関節ヲ、腎臓ヲ、蝕ムノダ……!」

リュウたちは三方向から襲いかかる敵に立ち向かった。

「糖だけじゃない、脂質も、体を守るためにはバランスが必要なんだ!」

リュウは剣を振るい、脂質異常獣の結晶を砕いた。

アミナは素早い身のこなしで、肥満魔の脂肪を切り裂き、

 グリコは光の矢で高尿酸鬼を打ち払った。

だが、敵はしぶとい。

日々の積み重ね──食生活、運動、ストレス。

 それらが少しずつ少しずつ、命のバランスを狂わせ、巨大な敵を育てていくのだ。

戦いの末、リュウたちはついに三体を撃破した。

黒い湖は静かになり、空に光が戻った。

リュウは地面に膝をつき、息を整えた。

「日々の暮らしが……命を作るんだな」

グリコが微笑んだ。

「うん。

 ちょっとの積み重ねが、大きな違いを生む。

 体って、毎日が小さな選択の連続なんだ」

アミナがそっと言った。

「でも、気づいたら、取り戻せる。

 今からでも、命は変えられる」

リュウは拳を握った。

「俺は……絶対に、命を守る力を身につける!」

次なる地は、骨の城。

 命を支える「骨」と、それを守る「ビタミン」の力が待っている──!

リュウたちは、再び歩き出した──!


今回は「現代的な疾患」の代表格、糖尿病と脂質異常(および肥満)をテーマに描きました。


第11章では、糖が体内で適切に使われないことで起きる「高血糖状態」を、

インスリンという鍵と鍵穴のメタファーで表現しました。

鍵が合わなくなれば、糖は細胞に入れず、血中を彷徨い、やがて毒と化す──

その悲劇を「糖尿病鬼」として形にしています。


第12章では、余分なエネルギーが脂肪に変わり、炎症や脂質異常を招く過程を、

「脂質異常獣」「肥満魔」という存在に落とし込みました。

単なる体型の問題ではなく、慢性炎症、動脈硬化、インスリン抵抗性といった連鎖反応の怖さを描いています。


どちらも、日々の選択が積み重なった結果として現れる“生活習慣病”。

敵と向き合うことは、自分自身の生活と向き合うことでもあります。


物語を通じて、「知ること=防ぐ力」になることを願っています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ