第1章「最初の守護者たち──自然免疫の騎士団」、第2章「敵を見極める知恵者──樹状細胞の導き」
体に侵入する敵と真っ先に戦う、最前線の防衛線──「自然免疫」。
そして、敵の特徴を見極め、仲間に正しく伝える「樹状細胞」。
第3部では、体を守る免疫システムを騎士団の物語として描いていきます。
今回はその最初の2章。
いわば“免疫の基礎”ともいえる存在たちにスポットを当てました。
マクロファージや好中球といった即応型の守護者たち。
そして知恵の塔から戦況をコントロールする樹状細胞。
命を守る“盾”と“知性”の力、ぜひ物語を通して感じていただけたら嬉しいです。
第1章「最初の守護者たち──自然免疫の騎士団」
リュウたちは、堅牢な城塞の中へと足を踏み入れた。
そこには、鋼の鎧をまとった戦士たちが整然と並んでいた。
彼らは、体内のあらゆる門を守る──自然免疫の騎士団だった。
中央に立つ、巨大な盾を構えた騎士が歩み寄る。
「我が名はマクロ、マクロファージの隊長!」
その隣には、素早い身のこなしの若き戦士たち。
「俺たちは好中球隊! 突撃と掃討のプロフェッショナルだ!」
マクロは、リュウたちに厳かに言った。
「我ら自然免疫の騎士団は、敵の侵入を即座に感知し、
即座に立ち向かう最初の守護者だ!」
グリコが耳打ちする。
「自然免疫は、生まれたときから備わっている防衛線。
すばやく動くけど、敵の種類を細かく区別することはできないんだ」
そのとき、警鐘が鳴り響いた!
異形の影──細菌兵たちが、体内の門を破って侵入してきた!
「敵襲!!」
マクロは盾を高く掲げ、号令をかける。
「迎撃せよ!
ファゴサイトーシス(貪食)隊、出陣!」
リュウたちは、騎士たちの動きを目の当たりにした。
マクロファージは、敵を丸ごと飲み込み、消化してしまう。
好中球たちは、敵に素早く突撃し、毒の槍(活性酸素)を放って倒す。
「これが……体を守る最初の壁!」
リュウは感動した。
敵は圧倒された。
多くは消滅し、生き残った者たちも散り散りに逃げた。
戦いが終わった後、マクロはリュウたちに向き直った。
「だが……我らだけでは限界がある」
彼の声には、わずかな疲れが滲んでいた。
「敵が多すぎれば、突破を許す。
見た目の違わない敵(変異菌)には、対応しきれないこともある」
グリコが付け加えた。
「自然免疫だけでは、すべてを守り切れない。
だから次に──もっと賢く、特別な守護者たちが必要なんだ」
マクロは、光る紋章をリュウに手渡した。
「これを持って行け。
次の地で、真の選ばれし騎士たちに出会うだろう」
リュウたちは、再び歩き出す。
向かうは──敵を見極め、命を守る知恵を授ける者たちの地!
次なる章へ、希望の光を胸に──!
第2章「敵を見極める知恵者──樹状細胞の導き」
自然免疫の戦いを経たリュウたちは、
森の奥にたたずむ静かな塔へとたどり着いた。
その塔は、どこか賢者の住まう書庫のようで、
壁には無数の光る紋章が刻まれていた。
「ここが……知恵の塔」
グリコがつぶやく。
「敵を見極める知恵者──樹状細胞たちがいる場所だよ」
塔の扉が静かに開いた。
そこに立っていたのは、
薄青いマントを纏った知的な女性だった。
「ようこそ、勇敢なる者たちよ」
彼女は微笑み、名乗った。
「私はデンドリ──樹状細胞の導き手」
彼女の背には、まるで枝のような美しい光の線が広がっていた。
デンドリはリュウたちを塔の奥へ案内した。
中央には、巨大な水晶球が浮かんでいた。
水晶球には、さまざまな敵の姿──
ウイルス、細菌、真菌、寄生虫──が次々と映し出される。
「自然免疫は、敵の種類を細かく見分けることはできない。
だが、私たち樹状細胞は──敵の特徴(抗原)を読み取り、
正確に仲間たちに伝えることができるのです」
デンドリは水晶球に手をかざした。
すると、一体の異形が浮かび上がった。
それは変幻自在の仮面をかぶった、ウイルスの魔物だった。
「敵を知り、姿を暴き、仲間に伝える──
それが、抗原提示という力」
デンドリは、光の巻物をリュウたちに手渡した。
「この巻物には、敵の"顔"を記した証がある。
これを、選ばれし騎士たち──T細胞とB細胞のもとへ届けなさい」
リュウは巻物をしっかりと抱きしめた。
「情報がなきゃ、戦いにも勝てない……
知ることが、命を守る第一歩なんだ!」
アミナも深くうなずいた。
「無差別に戦うだけじゃない。
正しく敵を見極め、正しく対応する──
それが、命を守る知恵の力なんだ」
デンドリは優しく微笑み、リュウたちを送り出した。
「行きなさい、勇者たちよ。
選ばれし守護者たちが、あなたたちを待っている」
リュウたちは、光の巻物を手に、
新たな地──「選ばれし騎士たちの聖域」へと向かった。
命を守るために、知恵と力をたずさえて──!
お読みいただきありがとうございました!
第1章では、生まれながらに備わる自然免疫の騎士団──
マクロファージや好中球といった頼れる前衛たちを描きました。
スピード感がありつつも、敵の見極めには限界がある──という弱点も。
そして第2章では、その限界を補う「樹状細胞」という知恵者が登場します。
彼らの“抗原提示”という能力によって、
この後登場するT細胞やB細胞の“適応免疫”が活躍できる土台が築かれていきます。
戦うだけでなく、「敵を知ること」「伝えること」もまた、命を守る力。
免疫の冒険は、知恵と連携の世界へと続いていきます。