リーゼ
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。
興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]
■公開済エピソートのプロットを公開中
「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。
https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
そこは、浮遊城の内部に設けられた発着場だった。
魔獣格納庫と呼ばれるその巨大な空間には、竜やナイトレイヴンといった大型の魔獣が整然と並び、静かに待機している。
高い天井からは冷えた空気が降り、足音が鈍く反響する静寂が支配していた。
この格納庫から外へ出る手段は二つある。
一つは、城の天守に近い位置に設けられた魔獣発着甲板。
魔力駆動式の昇降台によって魔獣格納庫と上下に接続され、上空からの発着に用いられる。
もう一つは、格納庫と同じ高さに設けられた巨大な扉だ。
こちらは浮遊城の岩盤部に直結しており、岩盤が露呈している時にのみ使用可能となる。
現在、浮遊城は浅く着水しており、両方の出入口が使用可能な状態にある。
この日、ゆっくりと開かれたのは、岩盤部と通じる格納庫正面の巨大な扉だった。
霧が立ち込める海辺の空気が流れ込み、わずかに潮の香りが混じる。
その先では、出撃を待つ大型魔獣たちの吐息が、重く、低く響いていた。
「自分らだけなんやったら二人乗りしーや、ゴンドラ抱えるとスピード遅くなるしな」
ことの発端は、マンガナのひと言だった。
飛竜のマンガナは、竜騎兵リーゼ・シュトルムハイトの愛竜である。
リーゼはかつてヴァルエンツァ魔王軍竜騎兵部隊に所属していたが、現在は勇者専属メイド隊のハウスメイドとして仕えている。
「えっ……? 二人乗り……するの?」
リーゼは、控えめな声で言葉を発し、それよりもさらに遠慮がちに勇者ハルトへと視線を送った。
スカイブルーの瞳が、揺れる水面のようにわずかにきらめく。
髪もまた同じ澄んだ青で、肩より少し下あたりでそろえられている。
艶やかで清楚なその姿は、どこからどう見ても“正統派美少女”と呼ぶにふさわしかった。
だが本人は、その事実に自覚がない。むしろ、自信を持てずにいる。
両耳の上にあるこげ茶色の角は控えめで、髪の毛の房にすっかり隠れていた。
小さな尾も、メイド服のスカートの中に収まってしまうほどで、竜人の証とされる特徴はどれも薄い。
身長180センチのハルトよりも二回りは小さく、竜人の中ではかなり小柄な部類に入るだろう。
竜人たちの価値観では、竜の特色――角や鱗、尾といった身体的特徴が強く現れるほど、より“強く、美しい”とされている。
その意味では、リーゼのように人間寄りの姿は、“未熟”や“半端”と見なされがちだった。
実の姉である元竜騎兵部隊隊長のエルザ・シュトルムハイトは、まさにその理想像だった。
大きな角、肩や背中、脚にかけて浮かぶ竜鱗、そして堂々たる尾を持ち、人の姿に竜の威容を宿している。
だからこそ、リーゼは竜人としての自分に、いまだ誇りを持てずにいた。
「僕は構わないけれど、リーゼは大丈夫かい?」
ハルトの問いかけに、リーゼはわずかに肩を震わせながら、遠慮がちにうなずいた。
「わ、私ですか……? も、もちろんです、勇者さまさえ……よ、よろしければ……うれしいです……あ、いえっ……頑張ります!」
「ほらほら、そうと決まれば若者たち。のりーや!」
マンガナがニヤニヤと笑いながら、騎乗を促す。
「ほらほら。もっと詰めんかいっ、くっつかんかい!」
「あの……勇者さま。空は……危ないので……しっかり、つかまってください……」
「ああ、わかった。こうかな?」
言われるまま、ハルトはリーゼに両腕をまわして密着した。
胸と腰をぴたりと重ね、背に体重をあずけるように――ほとんど“おぶさる”形に近い。
二人の身長差があれば、自然とそうなるのは当然のことだった。
「ひゃ……」
リーゼは小さく、消え入りそうな声で短く悲鳴を上げた。
「ん? どうした、リーゼ?」
「いえ……平気です、勇者さま。そのままでお願いします……」
彼女は伏し目がちに言った。
顔はハルトから死角になるように逸らしている。
真っ赤に染まった頬をみられぬように。
その様子を、マンガナが後ろから見ていた。
大きな口の端をくいっと吊り上げ、鋭い牙をちらつかせながら、喉の奥でくくっと笑い声を漏らす。
「うわ~初々し~! うちまでドキドキしてまうやん……ええなぁ、青春やなぁ……くくくっ」
二人を乗せるマンガナが軽口を叩く。
「……マンガナっ、余計なことを言わないで……行くよ!」
「はいなぁ! 行き先はヴェルシュタインやんな!?」
轟音と共に、マンガナが翼を大きく広げた。
魔獣格納庫に設けられた出撃用滑走路では、飛行甲板作業員たちが光管を手に走り回り、発進準備を急いでいる。
「リーゼさま、第二滑走路へどうぞ!」
「進路クリア、射出角四度下げます!」
「飛行許可、オールグリーンッ!」
クルーの合図に応じて、マンガナが滑走路をとてとてと前進。
床面に設けられた魔力駆動式のカタパルトである“魔力圧縮軌条”が、ゆっくりと淡く輝き始める。
「リーゼぇ! いつでもいけるでぇ!」
マンガナの足元がしっかりとロックされ、カウントダウンが始まった。
光管を掲げたクルーが、大きく振りかぶり、進行方向へ鋭く振り下ろす!
「ヴァルエンツァ魔王軍、ハルト専属メイド隊――リーゼ・シュトルムハイト、行きまーすっ!!」
バシュウウウウウウッ!!
魔力圧縮の爆風と共に、空を裂いて飛竜が射出された。
「おお、ドラゴンの背中から見る景色は違うな」
ハルトが感嘆の声を上げた。
雲の切れ間から差し込む陽光が、眼下の海面に細い光の筋を描いている。
「……そうなんですか? 私は、いつもココなので……」
リーゼは前方から控えめに応じた。
風にさらわれそうなほど小さな声だったが、かろうじてハルトの耳に届いていた。
「ゴンドラの中は快適とは言えないが、これほどの向かい風はないからね」
空気が肌を撫でる。スピードに乗った風が、ふたりの髪をふわりと持ち上げた。
「そうですか……でも、風……気持ちいいです」
リーゼの声が、少しだけ明るくなる。
緊張がほんのわずかに解けたような、安堵の響きがそこにあった。
「そうだね。僕も好きだよ」
「えっ……?」
ハルトのその台詞に、リーゼは思わず小さく体をすくめた。
スカイブルーの瞳がぱちぱちとまたたきを繰り返し、頬に淡い紅が差していく。
彼女の反応に、マンガナが肩を揺らして吹き出した。
「勇者はん、あんた……いままでもそないして、よーけ女の子泣かせてきたんやろ? この子はそんなん慣れてへんのや。ちょっとは勘弁したってな?」
「ん? なんのことだい?」
首を傾げるハルトに、マンガナはガッと目を見開き、呆れたような笑みを浮かべる。
「あかん、あんた無自覚系やろ!? こらもう、ライバルだらけになるで~! なぁ、リーゼ!」
「やめてよマンガナっ……! 勇者さまは……魔王さまの旦那さま……なんだから……!」
声に力を込めるリーゼだったが、表情は真っ赤だった。
唇をぎゅっと結び、うつむいたままの姿は、否定よりも照れ隠しの色が濃かった。
「うひひひぃ♪」
マンガナは、楽しげに鼻先で風を切りながら、高度を上げていった。
風が強まり、衣擦れと羽ばたきの音が重なる中、しばしの沈黙が流れる。
ガクンッ――。
空気の層に触れた拍子に、マンガナの背が大きく揺れた。
その反動で、リーゼの腰に何か硬いものが、コツンと当たる。
「……ッ!?」
リーゼの体がぴくりと反応する。
前を見ておらず、伏し目がちで、手綱を握る手がわずかに震えている。
「あ……あの……?」
「ん? 何だい、リーゼ?」
後ろから尋ねられても、リーゼは顔を上げられなかった。
俯いたまま、声にならない言葉を口元でモゴモゴと繰り返している。
聞き取れず、ハルトが顔を近づける。
「……当たってます……」
「えっ? 当たってる?」
「腰に……当たってます……」
言い終えたリーゼの声は小さく震えていた。
ハルトは数秒、何のことかわからなかったが――
「ち、違うっ! 違うぞ、リーゼ!」
慌てて腰に手をやる。
そこには、鞘に収めたままの長剣があった。
柄の先端が、飛行中の姿勢のまま、リーゼの腰にぴたりと押し当てられていたのだ。
完全に、ハルトの“ナニ”だと誤解されている。
「……変態……」
美少女に変態と呟かれる。
諸説はあるが、一部の男にとってそれは“ご褒美”である。
睨まれながらでもよし、いまのリーゼのように赤面して囁くならば“なお良し”だ。
「リーゼ、誤解だぞっ!」
必死に弁明するハルト。
だが、一度“意識”してしまったのが運の尽きだった。
小さな身体に身を預けるその体勢では、意図せずとも彼女の甘い匂い、柔らかな体温がハルトの全身を包む。
加えて、リーゼ自身が“意識している”という事実が、ハルトの体の一部に変化をもたらした。
「……えっ? ……どうして……二本……なの?」
今度は剣の柄ではなかった。
腰に当たった追加の“ナニ”かに気づいたリーゼは、震える声で言った。
「違うっ! 違くないけど違うんだっ! これは仕方のない生理現象でっ!」
必死に言い訳するハルトだったが、リーゼには届かない。
当然だろう、このような状況下にあって、デリカシーの欠片もなく“おっ立てている”ハルトに非がある。
彼女はただ、ありのままの事実を淡々と認識しているに過ぎなかった。
「……変態……変態……」
本数に合わせたわけではないだろうが、リーゼは、二度つぶやいた。
その言葉に、ハルトはさらに硬くなるのだった。
「まて! 落ち着けっ! リーゼ! 確かにそういう事になってるかもしれないっ、それは認めるよっ!」
ハルトは肩を抱き寄せながら、必死に弁解を続ける。
「でも、キミとももっと色々なことをしているじゃないかっ!!」
「~~~ッ!?」
リーゼとマンガナがそろって目を見開く。
勇者専属メイド隊にとって、夜伽は任務の一環だ。
メイド達はその為に存在すると言っても過言ではない。
それはリーゼも例外ではなく、二人が肌を重ねる機会は確かにあった。
だが――
「あっ……でもリーゼと最後まで、“イケ”たことはまだ一度も――」
口が滑った。
踏ん切りがつかないからと挿入を拒んでいたリーゼの“純潔”が、あろうことか、いまここで暴露される。
この場で口にする必要はまったくない。
繰り返すが、勇者ハルトはノンデリだった。
「ド変態っ!!」
怒りに震えたリーゼが手綱を引く。
それに応じ、マンガナが空中でぐるんと横回転――
「うわあああっ!?」
突如の遠心力に耐えきれず、ハルトの体が宙を舞う。
「おわぁ! こらアカン、勇者さま落ちよったでぇ!」
高度はおよそ百メートル。
ハルトの体が、頭から真っ逆さまに落ちていく。
地面に盛大な“赤い花”が咲くのは時間の問題だった。
「ふんっ!」
ハルトの気合と共に、胸元の技能紋が薄く輝く――“技能:身体操作Ⅲ”。
これは身体操作に関する技能であり、ランクⅢにもなれば空中での自在な操作を可能とする。
彼は空中で体をくるりとひねり、両手両足を広げ、体全体で風を受けて落下速度を殺す。
やがて垂直の落下は滑空となり、まるで翼でもあるかのように空を滑っていく。
「まだだ……まだだ……いまだっ!」
もう一つの技能紋が光る――"技能:五点着地Ⅲ”。
地面が近づいた瞬間、ハルトは足先から地を蹴り、回転を始める。
すねの外側を滑らせ、尻で転がり、背中と肩で受け流す。
地面を転がりながら、落下の衝撃を五点へと分散させていた。
土煙の中から、ゆっくりと立ち上がるハルト。
服は乱れていたが、身体は無傷だった。
「ふぅ……」
ハルトは立ち上がり、土のついた制服をパンパンと払い落とす。
そして顔を上げ、空の彼方にいる少女へ叫んだ。
「リーゼっ! 僕が悪かった! 謝るから許してくれないか? この通りだ!」
胸に手を当て、深々と頭を下げる。
振り落とされたことへの怒りなど微塵もない。
彼にとっては、せいぜい階段を二、三段踏み外した程度の些事でしかなかった。
「……すごい……」
空中で、リーゼがぽつりと漏らす。
「なんやあの人……勇者やからって、なんでもアリやと思とるんか……ほんま、変態やなぁ……」
マンガナは口を半開きにしながら、呆れ気味に呟いた。
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