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ヴァルエンツァ魔王軍ハルト専属メイド隊

■ 本作について

本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。


■ 活用の具体的な範囲

自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。

興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]

■公開済エピソートのプロットを公開中

「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。

https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/


■ AI活用の目的とスタンス

本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。

ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。

また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。

 リオネス王国の南西、およそ二十キロに位置する断崖“エローザ岬”。

 海神の怒りを鎮めるため、巫女(みこ)エローザが身を投げたという伝承が今も語り継がれている。


 その先端に、まるで空から突き立てられたように浮遊城(ザイゲンシュタット)が浮かんでいた。

 三千メートルの高さを持つひし形の巨体は、中央で幅二キロを超え、上部には城と三本の物見やぐら――避雷針も兼ねた塔がそびえ、最高点で九百メートルに達している。


 下方は荒々しい岩盤がむき出しのまま垂れ下がり、その底部が海面にわずかに着水していた。

 外からは巨大な岩塊にしか見えないが、その内には幾層にも重なる構造体が隠されているという。


 岬の断崖と高さをそろえるように、その岩盤の途中、百三十メートル上に“最深部ゲート”が設けられ、一本の橋が岸との間を結んでいた。


 周囲には門番や見張りが配され、荷馬車が行き交う交易拠点として機能している。

 黒と赤を基調にした(よろい)(まと)った女兵士たちが、リオネスから来た商人たちと短く言葉を交わしていた。


 橋を渡り、岩盤内部の通路を抜けた先には、広大な城下町が広がっている。

 高所ゆえに空気は澄み、見下ろせば遥か下に海面が揺れていた。

 地上から見上げれば、浮遊城(ザイゲンシュタット)は常に雲の層に包まれているはずだが、ここには日差しが届いている。


 本来なら、潮風が家々の屋根や壁を腐食させてもおかしくはない。

 だが、魔力によって制御された巨大なエアフィルターが空気中の塩分を分離しており、磯の匂いすら感じられなかった。


 石造りの街並みはどこか乾いており、空の上にあるとは思えないほど落ち着いた空気を保っている。


「良い天気だ。我が故郷がはっきりと見える。シャーロットも同じ空を見上げているのだろうか?」


 城壁の外縁部、風を遮るものもない細い足場に、ハルトは静かに立っていた。

 その先は空と海しかなく、一歩でも踏み外せば落下は免れない。

 それでも彼は、空を見上げるようにして、(つぶや)いていた。


 勇者ハルトは、若く美しい元婚約者の顔を青空に思い描くが、ハッと我に返る。


「いかん、これは浮気か? そうかもしれないが、我が伴侶は妬きもちの一つも妬いてはくれないだろうな」


 そう口にしながら、彼の脳裏に浮かんだのは、かつての婚約者ではなかった。

 黒鉄の角、冷たい眼差し、吐息の匂い――妻の面影が、(まぶた)の裏に鮮やかに焼き付いていた。

 元婚約者シャーロットの姿は、もはや記憶の(もや)の中だ。


「さて、城に戻るとするか」


 城下町を囲む城壁は、浮遊岩盤の縁に沿って建てられている。

 ハルトは、監視塔のついた裏門を通って中へ入った。


 石畳の路地を抜けて、中央にそびえるザイゲンシュタット城へと向かう。

 城門の脇に立つ兵が敬礼すると、彼は軽く会釈を返して中へ入った。


 愛する妻が待つ玉座の間の前に立つと、自らの手で扉を開ける。


「「「「おかえりなさいませ、勇者さま」」」」

 

 玉座の間の壁際に並ぶメイドたちが、一斉に頭を垂れる。

 彼女たちは左右に二列、等間隔に並んでいる。

 いずれも魔王フィデリアに仕える、魔の血を引く眷属(けんぞく)たち。

 見目麗しい少女ばかりで統一された、異様なまでの整然さが場を満たしていた。


「おかえり、我が夫よ」

「ああ、ただいま。フィデリア」


 銀灰の肌に銀の瞳孔、白銀の髪を垂らした浮遊城(ザイゲンシュタット)の主――魔王フィデリアもまた、ハルトの到着に応じて顔を上げた。


 巨大な玉座に腰かけ、頬杖(ほおづえ)を突きながら、サイハイブーツに覆われた脚を優雅に組んでいる。

 その姿勢は明らかに尊大だが、高位魔族(エピックデーモン)の血を引く者にしては、声をかけるだけでも十分な誠意と言えた。

 ハルトに対してなにがしかの“気遣い”があることは、皆に伝わる。


 この広間に玉座は一つだけ。魔王のための、絶対権威の象徴。

 ハルトとてそこに座ったことはない。

 フィデリアは案外許すかもしれない――が、彼に試す気はないし、それを勧める者もまた、存在しなかった。


「勇者さま、こちらをどうぞ」

「ああ、ありがとうミナ」


 最近になって、ハルトのための椅子が用意されるようになった。

 装飾の一切ない簡素な造りだが、材や作りは確かなものである。


 かつてはフィデリアの傍らに立ったまま、他愛のない会話を交わすのが常だった。

 それが今では、椅子に座り、ゆるやかに時を過ごす関係へと変わってきている。


「まぁ、散歩に出かけていただけだよ。ただいま、という程でもないんだけどね」


 浮遊城(ザイゲンシュタット)の外縁は、直径およそ二キロほど。

 街として考えれば手狭だが、軍事拠点としては破格の広さを誇る。


 もっとも、ハルトの脚にかかれば、その端から端までの距離も、軽い散歩程度の話だった。


「それにさ……」

 

 ハルトは椅子に腰を下ろしつつ、壁際に整列するメイドたちへと目を向ける。


「毎回これ、ちょっと大げさじゃないか? 帰ってくるたびに、ずらっと並んで頭を下げられると落ち着かないよ」

「何を言っている。こやつらは貴様の為に用意された、専属のメイドたちだ。主である貴様を出迎えるのは当然であろ? 我が夫よ」

「ありがたいけどさ……百人は多くない? 一人か二人で十分な気がするんだけど……」


 言いよどむハルトに代わり、秘書であるミナが静かに口を挟む。


「正確には三百十六名です。二十四時間体制のため、三交代制でシフトを組んでおります。現在ここにいるのは、そのうちの百名です」

「はぁ~……」


 ハルトは重たいため息をひとつ。


「知っているよ、だからますますって話だろ? 一日中、稼働する必要あるかい? 僕だって日の三分の一は寝ているんだぞ?」

「いついかなる時でも、勇者さまが“催された”際に、即座に“受精”できるよう体制を整えております」

「受精てっ! だからそうだとしても百人は多いでしょ!」

「我が夫よ、何が不満なのだ? 浮遊城(ザイゲンシュタット)に在住する、選りすぐりの八千名の“受精体(おんな)”たち。その中からさらに精鋭を選んでいるのだぞ?」


 ミナが銀色の眼鏡を光らせ続ける。


「ヴァルエンツァ魔王軍の親衛隊。その多くが再編され、組み込まれております。我々の美と強さの結晶――それが“勇者専属メイド隊”なのです」

「いやいやいや、僕の話ちゃんと聞いてる!? 質の高さとか関係ないの! 多いって言ってるの!」

「……間引けと、言うのか?」


 フィディリアの声が静かに低く落ちる。

 ハルトはビクリと肩をすくめた。


「我が夫よ。こやつらは、貴様のために誇りを持って、この任に就いておるのだぞ?」

「う……間引くとか、そんな言い方されるとさ……それはそれで困るというか……」


 一瞬たじろいだハルトだったが、それでもなお、口を開いた。


「怒ってはいない、怒ってはいないんだが、トイレにまで着いてくる娘もいるんだぞ? 少々やりすぎではないか?」

「やりすぎ? 何がだ? 貴様のメイドだぞ?」

「ん? トイレだよ? 僕が用を足しに行ったら、すぐ後ろにピッタリだ」

「……何がおかしいのだ? 専属とは言うたが、当然ながらわらわの身の回りの世話も兼ねさせておる。が、あれらはあくまで貴様の専属だ。何ら不自然なことではあるまいに」


 ハルトは額を押さえてうめいた。


「魔王さま、勇者さまは平民のご出身ですから」


 ミナが横から静かに補足する。


「ふむ」

「おおう!? そうだよ、僕は平民出身さ。“貴族さま”は、用を足したあとにメイドに“拭かせる”とでも言うのかい?」

「そうだが?」

「えええぇぇええっ!?」

「我が夫よ、よもやだが……わらわが“下”の処理を自分でしていると思っていたのか?」

「と、いいますと!?」

「わらわは、そんなことせぬぞ。それは下賎(げせん)の者がすることだ。わらわは“王”だぞ?」


 フィデリアはふっと脚を組み替え、この場にいる存在すべてを見下ろすようにして言った。


「うそでしょ!?」


「嘘ではございません。“グルーム・オブ・ザ・ストゥール・メイド”――専用の役職名も存在する、由緒正しく、たいへん“名誉”な役目です。私、ミナ・クロイツナーですら、その栄誉を拝命するには至っておりません」

「平民出だろうが関係あるまい。いまや貴様は我が夫、我が半身なのだ。存分に――“拭かせる”がよい」


「拭かせるかっ!」

最後までお付き合いいただき、感謝です!


「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!


今後の励みになりますので、もしよろしければ……!

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