適応能力
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。
興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]
■公開済エピソートのプロットを公開中
「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。
https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
「ふぅー……寒いなぁ」
玉座の間の最奥。壇上に鎮座する王の座。
そのすぐ隣に、勇者ハルトの椅子はある。
肌寒さに思わず身を縮めながら、彼は呟いた。
「なぁ……フィデリア。寒くないかい?」
いつも通り、他愛もない夫婦の会話だった。
その中でハルトはそんなことを口にした。
伴侶への気遣いというより、単に共感を求める口ぶりだ。
彼は半袖に短パン。
魔王の御前に出るには、いささかラフ過ぎる格好だった。
「ふむ……空調が効きすぎておるのかの? ミナ、いまの設定はどうなっておる?」
玉座の肘掛けに頬杖をつきながら、フィデリアは静かに問いかける。
その視線に応えるように、傍に控えていたミナが一歩前へ進み出た。
「はっ! ただいまの温度設定は十五度にございます」
計器の確認は不要。
管理されたいつもの室温。それをミナは答えた。
この薄暗く厳かな空間にふさわしい、魔族好みの低温。
「どうりで寒いはずだよっ!」
ハルトは思わず声を上げた。
魔族にとっては心地よい冷気も、人間には暖房が欲しくなる寒さだった。
「そうは言いますが。この場の温度設定はいつもと変わりません。勇者さまがそのような格好をしているからでは?」
ミナは銀縁メガネを指先で直しながら言った。
呆れたような声色だった。その言葉には、わずかなトゲも含まれている。
さすがのハルトにもそれは伝わっていた。
「ミナ。この部屋は寒いが、外は暑いんだよ。仕方ないだろう?」
ハルトは半袖に短パンという格好のまま肩をすくめる。
肌を半分露出した格好だが、外に出ればすぐに汗ばむ暑さなのだ。
「はぁ……勇者さま。ですが、この場所でそのご格好は……さすがにいかがかと……」
ミナはちいさくため息をつき、頭を抱えた。
ハルトは魔王の伴侶であり、最強の勇者。
軽々しく叱りつけられる立場ではなく、ミナ自身、彼への敬意も持っている。
それでも、聞き分けの悪い子供に言い聞かせるように、言葉を選んで諭す。
「ん? 何か問題かい?」
ハルトは悪びられる様子もなく、きょとんとした顔で問い返す。
「ですから、ここは魔王さまの御前。場にふさわしいお召し物でお願いしたいのです」
ミナは再度のため息を混ぜながら、静かに首を振る。
ハルトはまだ事の重大さを理解していない。
彼は助けを求めるようにフィデリアに視線を向けた。
フィデリアはそんな夫の視線を感じながらも、両目を閉じたままだ。
口元には僅かに笑みを浮かべている。
「仮にこの場がリオネスの王宮だった場合、そのような態度でいられますか?」
ハルトはリオネス王国の勇者だ。
フィデリアと結婚し、浮遊城に居を移しても、その肩書きは変わらない。
「うっ……それは……」
リオネス王国での彼の評判は極めて良好だった。
実力も礼節も兼ね備え、国のために身を捧げる真の勇者と称えられている。
唯一の欠点は、女遊びが過ぎたことだけ。
だが、それすらも彼の名声で霞む“わずかな傷”に過ぎなかった。
ミナはリオネスでのハルトの品行方正な一面を知っている。
つまり、いまの彼は浮遊城という環境に甘え、完全に気が緩んでいるだけ。
それを思えば、ミナの苛立ちも当然だった。
「勇者くん、さっきは自室が暑すぎるーって、ずーっとわたしにくっついてたんですよ。わたしの肌、冷たくて気持ちいいらしいです!」
ネメラがそう口にしたのは、悪戯心からだった。
ほんの一時間前。彼の自室でふたりきりだったときに飛び出した、彼の失言への、ささやかな仕返しだ。
「あっおいネメラ! 言うなよ! 恥ずかしいだろ?」
ハルトは椅子に座ったまま、前のめりになって声を上げた。
「まったく、チグハグですね。ネメラの素肌は死霊のもの。“絶対霊度”に触れれば、普通の人間なら即死です。我々、魔族ですら、みだりに触れることはありません」
ミナは腰に手を当てながら、大きく頭を左右に振る。
「えっ? そうなの?」
「そうですよー。ほら、わたしって~。生きながら死んでるじゃないですかー? 触っちゃうと、その人が霊界に引っぱられちゃうみたいでー」
ネメラは胸を張った。その動きに合わせて、豊かな胸元がパツパツと張り詰める。
メイド服の上からでも、はっきりわかるほどだった。
「勇者さまはアイゼル山脈を横断したこともございますよね? それに比べればこの程度の暑さ寒さは、何ともないのでは?」
「まぁ気を張ってるときは平気なんだよなぁ」
ハルトは肩をすくめる。
魔族たちは人間よりも暑さ寒さに強く、タフだ。
だが、耐性系の技能を発動したハルトは、その程度ではない。
まさに無敵そのものだった。
「でしたら、この玉座の間ではそうしてもらえるといいのですが……」
「えぇ……誰か来るわけでもないだろう」
「品格というものは、人目がない瞬間にこそ試されるのです。ご覧ください、我々メイド隊は真夏であっても、決して服装を乱したりはいたしません」
百人のメイド隊は誰ひとり動かず、静かに正面を見つめていた。
それが彼女たちにとっては、当たり前の振る舞いだった。
「うーむ……」
ハルトは何も言い返せず、唸るしかなかった。
そのやりとりを静かに見守っていたフィデリアが、ふと口を開く。
「ミナ、そうハルトを責めるな。人間は我々とは違って暑さ寒さに敏感なのだ」
フィデリアの柔らかな声に、ミナはちいさく息を吐く。
魔王の伴侶に対する甘さを感じつつも、その言葉は何よりも優先される。
「ハルトにとって快適であることを最優先せよ。我々には些細な差など問題にならぬ」
「仰せのままに」
フィデリアが淡々と告げ、ミナは即座に頭を下げた。
「うーん……なんだか、すまないね。我慢しろって言うなら我慢するけどね」
ハルトはすこしバツが悪そうに口を開く。
「かまわん。暑さ寒さは、子種の質に影響すると文献にもあるでな」
「いつもどんな本読んでるんだよ?」
「ふふふ、わらわは読むぞ。花占いから軍略書まで。知識とはそれ自体が価値となるものよ」
フィデリアは、本好きとしても知られている。
浮遊城にある彼女の蔵書は、大都市の図書館に匹敵するほどだ。
だが、不思議なことに、誰も彼女が本を読んでいる姿を見たことがない。
いつ読んでいるのか。誰に聞いてもわからない。
ハルトは彼女にとって特別な男だ。
裸を見せることにも、彼女はさして抵抗を持たないだろう。
いずれ共に眠るのだからと、ことさら隠し立てもしていない。
それでも、そのハルトですら、本を読む姿だけは一度として目にしたことがない。
魔王の威厳を損なわぬよう、努力する姿は見せない。
それが彼女の流儀なのだろう。
しばらくして、ハルトがぽつりと呟く。
「丁度良い温度になってきたよ」
ミナは、またひとつため息をこぼす。
「はぁ……まったく」
「どうしたミナ? また情けないとでも言う気かい?」
ハルトは軽く笑いながら問いかけた。
ミナは苦みの混じった笑みを浮かべ、肩をすくめる。
「いいえ……ただ、やはりすこしチグハグだなと可笑しかっただけです。これほど暑い寒いと愚痴をこぼす割には、リッチともイフリートとも交われるのですから」
「それとこれとは話が別だろう?」
ミナはハルトの言葉を流し、話を続けた。
「同じ話です。それだけではありませんよ? フレッシュゾンビ、サキュバス、ゴースト――魔王軍には、まだまだ異なる性質を持つ種族が数多く在籍しています」
魔王軍には、人間が“恐れ、惧れ、畏れる”魔族たちがいる。
多種多様な種族と属性が混在する、八千人の“受精体”たち。
その全てと子をなすこと。
それが、ハルトに与えられた使命だった。
「貶しているわけではありません。どのような“雌”でも抱くことができる、“超雄力”。魔王軍の“種馬”にはソレが必要なのです」
「種馬てっ! てかそれが理由なの!?」
「勇者としての“最高傑作”。そして、どんな存在とも交われる“適応能力”、それを併せ持つのはハルト。貴様だけだ。誇らしいぞ、我が夫よ」
「誰とでも寝るみたいなこと言うなよっ!」
ハルトが思わず声を張る。
「事実です」
即座にミナが口を挟んだ。
「君らのおかげでなっ!」
ハルトの叫びが玉座の間に響いた。
最後までお付き合いいただき、感謝です!
「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!
今後の励みになりますので、もしよろしければ……!




