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受精体

■ 本作について

本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。


■ 活用の具体的な範囲

自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。

興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]

■公開済エピソートのプロットを公開中

「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。

https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/


■ AI活用の目的とスタンス

本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。

ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。

また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。

 城下町の空気は澄んでいて、空を漂う浮遊城(ザイゲンシュタット)の中心とは思えないほど穏やかだった。

 通りには多くの住人が行き交い、道端の花壇には手入れの行き届いた花が揺れている。


 そんな中、街路の角から姿を見せた女性兵士が、凛々(りり)しい敬礼とともに駆け寄ってきた。


「勇者さま! お会いできて光栄であります!」

「やぁ、こちらこそ」


 ハルトは笑顔で返したものの、なんとなく引っかかった。

 ――今のも女性……か。いや、たまたまだろう。


  *


 鍛冶屋の工房には鉄と火の匂いが立ち込め、打ち鍛えられた武具が壁に並んでいた。

 カン、カンと音を響かせるのは、若い女性職人。

 鉄火場には不釣り合いの美貌。

 鍛冶場の主にしては、随分と若く見える。


「勇者さまの仕立てをお任せいただけるとは……感激です」

「ん? ああ、よろしくね」


 礼儀正しく、技術も確かだ。だが……また女性か?

 いやいや、別におかしくはない。たまたまそういう巡り合わせだろう。


  *


 気取らない家庭料理の香りが鼻をくすぐる、人気の食事処。

 配膳に現れたのは、落ち着いた物腰の店主の女性。

 品があり、店の雰囲気にもよく馴染んでいたが、見た目から想像できる年齢は若い。


「勇者さま……私はこの食事処を任されているに過ぎない女ですが。候補としてお選びいただきましたこと。感謝しております、いつでもお呼びくださいませ」

「え? ……えっと、そっか……そうだね。追加の注文があったら呼ぶよ。ありがとう」


 食事は温かいままだが、気づけば咀嚼(そしゃく)が止まっていた。

 そういえばさっきの兵士も職人も……いや、たまたまか?


  *


 城内を歩けば、すれ違うメイドが一礼し、兵士が敬礼する。

 整然と整ったその応対に違和感はない。

 庭を手入れする庭師、洗濯物を抱えて小走りに行き交う洗濯係、調理場へと向かう食事係――すれ違う者は皆、若い女性ばかりだった。


「勇者さま!」

「やぁ、こんにちは」


 軽く会釈を返しながらも、ハルトは首を傾げる。

 まさか、そんなことは……いや、流石に考えすぎだよな……?


  *


 玉座の間、妻である魔王フィデリアの傍らに立つハルト。

 意を決したように口を開いた。


「なぁ我が妻よ」

「どうした、我が夫よ」


 横目でハルトを一瞥(いちべつ)しながら返す魔王の表情は、どこか人間を嘲るような色を帯びていた。

 だが、その冷笑にすら艶がある。

 肌も、髪も、まなざしも――おそらく百年、千年経とうとも色褪(いろあ)せることはない。


「鍛冶屋の親父さん体でも悪くしたのかい? 最近、顔をみていないが」

「ふむ……わらわも鍛冶屋の事情まで、把握をしておらんな。ミナ、何か知っておるか?」

「はっ! グラウベルト氏は本国へと帰還しております」

「だそうだ」


 ハルト付きの秘書であるミナの返答を確かめると、フィデリアは肩を(すく)めた。


「えっ、そうなの? なんでまた? 別れの挨拶をしたかったな。親父さんにはずいぶんと世話になったんだ」

「すみません、お声がけするべきでしたね。私の配慮不足でした。ですが、グラウベルト氏の孫が後任です。言付けを頼まれては? それと彼女は若いですが、腕前は確かです」

「そうなのか、ではまた改めて挨拶に向かうとするよ」

「はい」


 ここで一旦の話の区切りはついた。

 しかし、ハルトの本題は別にあった。


「それとだな……ついでに聞きたいんだが……いや、気のせいだとは思うし、偶々だと思うんだが……」

「どうしたハルト? 歯切れが悪いな」


 フィデリアがハルトの顔を見上げる。

 視線は下からだが、態度は上からだ。


「僕の知らない所で、何かしらの軍事行動を指示していたりしないよな?」


 魔王は一考し、答える。


「ふむ、いま浮遊城(ザイゲンシュタット)が停留しているのはリオネス王国の領土内だ。この場所での軍事行動は不可侵条約に抵触する……そう言いたいのか?」

「ああ、そうだね」


 ハルトは即答する。その目は真剣だった。


「なれば答えよう。そのような指示は出してはおらぬ、いかなる軍事行動もない」


 その答えを聞いたハルトは、胸を()で下ろした。


「そうか、すまない。杞憂(きゆう)だったようだ」

「ハルト。なぜそう考えた?」

「ん? ああ、そうだね、疑ってしまった以上は弁明すべきだな。最近……城内城外を問わず、男の姿をみていないんだよ。だから、何かしらの軍事行動に参加しているんじゃないかと」


 フィデリアは目を細め、ふと笑った。


「ふむ、なるほどな。ハルト、半分正解で半分間違いだ」

「というと?」

浮遊城(ザイゲンシュタット)に“男”はいない」


 魔王は要点だけをピシャリと述べる。


「は?」

「ハルト、貴様以外の“男”はいないのだ」


 フィデリアは、どこか誇らしげに微笑んだ。

 彼女はハルトの困惑を楽しんでいる、言葉が足りないのは解っているのだ、他人を無闇に惑わす魔王の悪癖。

 椅子に優雅に身を預けると、組み替えた脚がしなやかに交差し、ハイサイレザーブーツの艶めいた質感が光を受けて妖しく輝く。

 豊かな胸がわずかに揺れ、銀の髪を片手でかき上げる所作すら、ひとつの芸術のように完璧だった。


「どういうこと?」

「魔王さま、その先の説明は私にお任せいただいても?」

「許す」

「はっ! 勇者さま。いま現在、浮遊城(ザイゲンシュタット)における人員は約八千人、その全てが選別済の“受精体”となっております」


 ハルトは目を丸くする。

 自身の理解が間違いであってほしい――そのような心境だった。


「……えーと……一応、聞いておくけど“受精体”とは?」

「私やメイド隊を含め……繰り返しになりますが浮遊城(ザイゲンシュタット)に在住する女たちの総称です。勇者さまの“種”を受けるに適合し、妊娠の確率と遺伝的優位性が認められた、ヴァルエンツァ魔王軍に属する女性たちを指します」

「~~~~ッ!?」


 ハルトは絶句する。


「もちろん、わらわも含めてな。我が夫よ……この浮遊城(ザイゲンシュタット)に存在する八千の“受精体”、その頂点に立つのは他でもない、わらわだ。誰よりも美しく、強く、気高い存在――その“わらわ”すら、貴様のためにあるのだ」


 フィデリアは鼻で笑うように片頬(かたほお)を上げ、脚を優雅に組みかえた。


「もっとも、わらわに触れてよいのは、わらわを打ち倒した時だけだがな?」


 ハルトは頭を抱えながらも、そっと話題を引き戻した。


「はっぴゃくって正気かっ!?」


 ハルトの問いかけに、ミナは躊躇(ちゅうちょ)なく即答する。


「八千人でございます」


 涼しい顔で答えるミナ。

 桁が違っていた。


「ございますじゃないってっ!」


 思わず語気を荒げるハルト。だが、フィデリアはまるで意に介さない。


「案ずるなハルト。いずれも美貌と強さ、“種”を受ける器として優れたもの達だ。厳選に厳選を重ねておる、貴様を愛するわらわの審美眼……疑う余地などあろうか? ――いやない」


 誇らしげに絶対の自信を持って語る魔王。


「案じてないっ! そういうことは案じてないっ!」


 ハルトは両手を振って全力で否定する。


「勇者さまに不快な思いをさせぬよう、各自の“仕込み”については本部にて事前に確認と調整済みで御座います。ご安心ください」


 ミナは淡々と説明を続ける。


「だから違うってっ!」


 必死に否定を重ねるハルト。


「なるほど……“初心”が良い、と? うむ、男は“処女”を好むと多くの文献にあったな。なるほど、やはりそうか」


 フィデリアは(うね)るように(うなづ)き、満足げに笑みを浮かべた。


「ミナ、“仕込み”は礼儀作法のみに留めよ。“床”の導きは、我が夫――ハルトに任せるとしよう」

「御意」


 ミナが即座に応じると、ハルトの叫びが響いた。


「違うっ!」


 なぜこの二人はこれほど自信満々に“間違っている”のだろう。

 そんな思いをがハルトの脳裏をよぎる。


 ミナはハルトの気持ちなどお構いなしに、冷静にデータを並べ始める。


「皆、若いですよ? 下のレンジは広めに、上は厳しめの塩梅に……。受精率と初潮年齢の相関を考慮すれば当然の最適化です」

「うーん、それなら納得……できないよ!」


 勇者はノリながらツッコむこともできる。


「僕のことそんな目で見てるのかい!?」


 そう訴える彼に、ミナはまっすぐな視線を向ける。


「……? 殿方は皆、若い個体を好まれるものと認識しておりますが、違いましたか?」

「偏見だろそれ!」


 ハルトは叫ぶが、ミナは何も答えなかった――偏見ではないただの事実だ。

最後までお付き合いいただき、感謝です!


「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!


今後の励みになりますので、もしよろしければ……!

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