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常識

■ 本作について

本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。


■ 活用の具体的な範囲

自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。

興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]

■公開済エピソートのプロットを公開中

「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。

https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/


■ AI活用の目的とスタンス

本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。

ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。

また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。

「よろしくね~、ハルトちゃん――」


 アデリアーナは、ちょっとしたお使いでも頼む気軽さで言った。


「――でも、“そういうこと”は数十年ぶりだから、優しくしてね〜」


 続く台詞は(ほほ)を赤らめながら発したが、口調は軽い。


「いやいやいやいや! まずいですよっ! アデリアーナさんっ!」


 アデリアーナは魔王フィデリアの母だ。

 フィデリアの夫であるハルトから見れば“義母”にあたる。


「……あの、私……がんばります……子供ですけど……」


 フィデリアの妹ミリアは、青ざめながらも紅潮するような複雑な顔色を(にじ)ませる。

 その恐怖と決意が混じる表情は、ハルトに大きな戸惑いを与える。


「子供……? いやいやいや! キミまでそんなっ!」


 ミリアは高位魔族(エピックデーモン)の基準では、“若い”。

 だが人間のハルトから見れば、すこしロリ系ではあるが、十分“大人”にしか映らない。

 だからこそ、「子供ですけど……」という言葉が、妙に引っかかり、彼を混乱させていた。


「ハルト、何をそんなに慌てておるのだ?」


 フィデリアは玉座に肩肘をつき、問いかけた。

 彼を試しているわけではない。ただ純粋に“わからない”から聞いている。


「慌てるに決まっているだろう!? 八百人の受精体――」

「八千人でございます」


 ハルトの誤りに、ミナが即座に訂正を入れる。


「その八千人は……まだわかる! いや、わからんけど! この際、わかるとしよう! でも、このふたりはキミの家族だぞ!? 母親と妹だよ!」


 ハルトは声を荒らげた。口にしながらその言葉の滑稽さを感じている。


「そうだが、それがどうしたのだ?」


 フィデリアは眉をわずかに歪めた。

 まるで駄々をこねる子供に困らされる母親のような表情。

 はっきりと「解せぬ」という感情が浮かんでいた。


「なんで、わからないんだよ! 非常識だろ!」

「ハルト、貴様は言っておったよな? わらわが“恋しい”と」

「ええっ!? いや、急になんの話だい!? キミのことは愛しているが……」


 ハルトは、「恋しい」と直接口にしたことはない。

 だが、彼女を欲するあまり、受精体との行為の最中にフィデリアの名を無意識に発してしまっていた。

 フィデリアは、そのことを言っているのだ。


「わらわと“したい”……それは間違いないな?」


 フィデリアの銀灰色の肌、白銀の唇。

 その白銀から発せられた言葉は、あまりに妖艶でハルトは思わず吸い込まれそうになる。

 ゴクリ、と喉を鳴らす音が、彼の耳にうるさく響いた。


「そ、それは……まぁ、そう……かも、しれないね」


 ハルトは思わず顔を背ける。

 言葉も妙に煮えきらないが、それはただの“照れ”だった。

 その滑稽な取り繕いは、フィデリアにはもちろん、ミナやメイドたちにも筒抜けだった。


 急にぶり返した思春期のような反応に(あき)れられつつも、欲情自体は、仕方ないと皆理解していた。

 魔王フィデリアは、あまりに魅力的なのだ。

 この場にいる母アーデリアを除くすべての女たちは、誘われたら断れないだろう。

 それは主従の理ではなく、魔王の圧倒的な魅力に逆らえないという意味で。


「であれば、よく見るがいい。我が母とミリアを――」

「えっ?」


 フィデリアに促され、ハルトは視線を向けた。アーデリアは柔らかく、ミリアはぎこちなく微笑む。

 三者三様の雰囲気だが、容姿の方向性は似ている。特に母であるアーデリアは、完成系でありルーツだ。

 落ち着いたドレスに身を包んでいるが、その(たたず)まいは、単なる若さの延長ではなかった。

 成熟と研ぎ澄まされた魅力、美貌の観点では、フィデリアを凌駕(りょうが)していると言っても過言ではない。

 完成された“魔界の美”、短命種のような老いも劣化もない――ただ、極まった女としての造形があった。


「限りなく、わらわに近いふたりであろ? わらわは、貴様がわらわを超えるまで、決して契らぬと決めておる……だが、母君も、ミリアも、その血、その力、その資質は、わらわと同じ。貴様が求めるものを与え、なおかつ最強の後継を残せる最良の選択だ」

「えぇ……」

「どうだ、我が夫よ。貴様は望むものを手に入れ、わらわは誓いを貫き、魔王軍は未来を得る――すべて、理に適っておろう? 堪能するがよい」

「常識どこいった!」


 その叫びに応じるように、ミナが一歩前へ出た。


「勇者さま。失礼ながら、先ほどから“常識”に強くこだわっておられるようですね?」


 ハルトとフィデリアの側に控えていたミナが歩み出る。


「ミナ……そりゃ、そうだろう? いくらなんでも、これは……」


「その“常識”とは……いったい、どの“一面(プレーン)”のものなのでしょうか?」


 ハルト専属メイド隊、秘書メイドの長であるミナ・クロイツナーは元人間である。

 自らの意思で魔王フィデリアの眷属(けんぞく)となった後天的魔族だ。

 だからこそ、彼女は知っている。

 ダイスワールドにおける“一面(プレーン)”、人間界の常識を。

 だが、いま彼女は魔族として生きている。


「何が言いたいんだい?」

「現在、浮遊城(ザイゲンシュタット)はリオネス王国領に停留しております。とはいえ、この敷地内および周辺はヴァルエンツァ魔王軍の自治領であることは、ご承知でしょう?」


 それは、魔王フィデリアとリオネス王国の王との間で正式に取り交わされ、文書化された取り決めだ。


「つまり、この浮遊城(ザイゲンシュタット)においては人間界の常識は通用いたしません」

「えぇ……」


 ミナは迷いなく言い切った。

 ハルトは受け入れがたいと感じながらも、反論の言葉は持っていなかった。


「そして今、我々が最も必要としているものは……勇者さまの強力な“遺伝子”です。それを魔界の血とかけ合わせ、魔王軍の力を最大化すること。それが、何よりも優先される任務なのです」


 メイド隊も口をそろえた。


「そうです! 我々はその為に勇者さまと子作りしてるんです!」

「勇者さまは楽しんでるだけで気楽だよね!」

「常識人なら。あんなプレイしたがらないと思う……」


 わっと押し寄せる声に、ハルトは肩をすくめ、顔を引きつらせる。

 その場の雰囲気に完全に飲み込まれ、思わずちいさく声を漏らした。


「うう……」


 ミナは、ここぞとばかりに、しかし淡々と、追い詰める。


「勇者さま。私たち“受精体”は、単なる魔王軍の兵士ではありません。あなたの力、あなたの血を、未来へと繋ぐ“器”です。“受精体(われわれ)”の使命は、強さを次代に残すこと。この軍の存続は、次代の戦力の確保によって支えられています。勇者としての強さ、そして魔王フィデリアさまの正式な伴侶としての立場。私たちだけでなく、もっとも高貴で、もっとも強き王族――ヴァルエンツァ家の血を継がせることも、当然の務めにございます。王族も、兵士も、全員がそれを承知で覚悟を決めています。それが、我らが誇りです」


 ミナは一拍の間を置き、最後に静かに告げた。


「勇者さま。あなたが抱える“人間の倫理”は、浮遊城(ザイゲンシュタット)においては通じません。ここでは、魔族の“常識”に従っていただきます」

「ぐぅ……」


 勇者はぐぅの音を出した。


「それに……です。何も、同胞たちを手にかけろとか、裏切れなどとお願いしているわけではありません。フィデリアさまに連なる、アーデリアさま、ミリアさまと子を成すことは、魔王軍において比類なき最上級の名誉です。私が殿方の心情を正確に推し量ることはできませんが――お二方の相手を、拒む理由はまず存在しないはずです」

「むむむ!」


 たしかにそうなのだ。

 フィデリアの親族であるという事実を除けば、アーデリアもミリアも、ただただ魅力的な女性でしかない。

 いや、むしろ、母と妹であるという事実は、禁忌の加点ですらある。

 太古の昔から、あらゆる創作物に登場してきた禁断の誘惑。

 官能小説にだって、聖書にだって、そのシチュエーションは描かれ、人々に重宝されてきた。

 それを、常識ぶって、真面目ぶって、戸惑う“フリ”をしている今の彼は、なんと情けないことか。

 ミナによる説得、論破――これは、ハルトが心の奥底で密かに“望んでいた”言葉だったのかもしれない。


「ぼ、僕が間違っていたのか……?」


 その小さなつぶやきに、フィデリアが穏やかに語りかける。


「ハルト。よいか、反省をしろと言うておるわけではない。我々は、貴様の“種”を求めているのだ。人間界の当たり前がどうであれ……ここで、それを気にする必要はない。協力してくれ、我が夫よ」


 魔王フィデリアの声は柔らかく、けれど芯が通っていた。

 狂っているのかもしれない。だが、それは人間たちの尺度で見た話に過ぎない。

 実際のところ、人間基準で照らし合わせても、最低限の線引きは保たれているのだ。


「勇者さま。八千人の受精体は厳格に管理されており、恋人や伴侶がいないことは保証されています。アーデリアさまも、先王が亡くなられたことで独り身。ミリアさまも同様です。障害となるものは、何もございません」


 ミナが淡々と告げる。

 実際アーデリアの成熟した美しさは、理屈を超えてハルトの心を揺らしていた。

 彼の理性は、今にも崩れ落ちそうだった。


「うふふふ~♪」


 場の緊張感に、あまりにそぐわないアーデリアの声が響く。

 彼女は腕を背中に回し、胸を張り、ハルトに向かって軽やかにウィンクを投げかけた。

 たぶん、誘っている、このタイミングで。滑稽なほどに、滑稽だ。

 だが、真に厄介なのは、そのおかしさすら塗りつぶしてしまうほどの美貌だった。

 神ですら魅了するフィデリアの肉体美。そのフィデリアを凌駕(りょうが)するであろう成熟しきった肉体が、彼女の緩やかなドレスの奥に隠されていることは、疑いようがなかった。

 ハルトは“堕ちかけて”いる、いや“堕ちたがって”いる。


「アンタたち! いい加減にしなさいっ!」


 玉座の間に、雷鳴にも似た鋭い声が響く。

 その瞬間、場の空気がビリリと震え、視線が一斉に天窓へと集まった。

 逆光に照らされた何者かの影が、軽やかに床へと降り立つ。


「ん? 嘘だろ? アリシアかい……?」


 ハルトは目を疑った。

 目の前に現れた少女は、あまりにも予想外だった。


「そーよ! アタシよ! バカ勇者っ!」

「まじかっ!?」


 ハルトは大げさなくらいに驚いた。

 理由は二つあった。

 そのひとつ目、彼女は魔王軍に占領されたヴェルシュタイン共和国の元勇者であること。

 普段は魔王軍を敵視し、単身でゲリラ戦を仕掛ける少女。いわば明確な敵の立場だ。

 もうひとつ、彼女がこんな近くにいることに気づかなかったこと。


「き、気づかなかったよ……」


 ハルトの“技能(スキル):気配察知”のランクはⅣ。

 半径数キロに及ぶ範囲の気配を、自動的に、しかも個人特定までできるほどの精度だ。

 だが、それを()い潜り、アリシアは現れた。

 もちろん、彼女が巧妙に気配を消していたこともある。

 だが、最大の理由はハルト自身の油断だった。

 浮遊城(ザイゲンシュタット)という特殊な環境。

 そして、周囲に若い魔族の女たちが多すぎるために、アリシアを見逃していた。


「ふんっ! こんなバカげた環境で、鼻の下を伸ばしてるからでしょ!?」


 ザザザッ――ガチャン!


 ハルトとアリシアのやりとりの傍らで、玉座の間には緊張が走った。

 ミナと百人のメイド隊は即座に展開し、魔王フィデリア、そしてアーデリアとミリアを守る陣形を取った。

 その眼差しに笑みはなく、ただ突如現れた異物を排除する。その意思だけが、鋭く宿っていた。


「よい、静まれ。控えろ」


 魔王フィデリアの一声が飛ぶ。

 それがなければ、アリシアは即座に制圧されていただろう。

 いかに勇者といえど、ヴァルエンツォ魔王軍の精鋭、専属メイド隊百人を相手取るのは分が悪すぎる。

 そもそもフィデリアはアリシアの存在を感知していた、その上で放っておいたのだ。

 今日だけではない、しばらく前から、浮遊城(ザイゲンシュタット)の各所での目撃も報告として上がっていた。

 ハルトに情報を共有していなかったのでは、魔王なりの思惑があった。


「それで、ヴェルシュタインの勇者よ。何用だ?」


 フィデリアは普段と変わらぬ落ち着いた調子で問いかけた。


「ふん……おかげさまで、元勇者よ……」


 アリシア・ド・ベルモンド。

 かつてヴェルシュタイン公国の勇者と呼ばれた少女だが、ヴァルエンツォ魔王軍の侵攻によって国を失い、名実ともに“亡国の勇者”となっていた。


 彼女は、ゆっくりと歩を進める。

 場の、いや浮遊城(ザイゲンシュタット)の中心である玉座の前へと近づいていく。

 その足取りは、軽やかでありながら、一切の隙がなかった。

 ミナがわずかに指を動かし、背後のメイドたちに合図を送る。

 百人の視線が、獲物を狙うように鋭くアリシアを捉えていた。


「アンタの命を取りに来た――」


 アリシアは、冗談めかして口にする。

 その瞬間、メイドたちの間に再び緊張が走ったが、フィデリアは無言の視線だけで制した。


「――って、言いたい所だけど、別に何も? たまたま通りすがっただけよ」


 アリシアは肩をすくめ、軽い調子でそう言った。


「……散歩。壁をよじ登りながらですか?」


 ミナが静かに返す。表情も声色も一切変えない、冷ややかな指摘だった。

 玉座の間は、城の天守閣付近。散歩と言うには過酷すぎる。そもそも、ここは彼女にとって“敵地”だ。


「そんなことはどーでもいいのよ! てか、アンタたちさぁ? 受精体? だとか、子作りだとか……信じられない! あげく、母親と妹まで……常識ないの!? バカじゃないの!?」


 雷鳴のアリシア――そのふたつ名が示すとおり、雷のような“常識”が、玉座に落ちた。


最後までお付き合いいただき、感謝です!


「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!


今後の励みになりますので、もしよろしければ……!

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