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クレーム

■ 本作について

本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。


■ 活用の具体的な範囲

自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。

興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]

■公開済エピソートのプロットを公開中

「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。

https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/


■ AI活用の目的とスタンス

本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。

ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。

また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。

「勇者さま。メイドたちから、あなたへのクレームが多数届いております」


 勇者ハルトの秘書であるミナは、淡々と口にする。

 玉座の間、彼と魔王フィデリアとの雑談が一段落したのを狙ってのことだった。


「く、クレームぅ!?」


 彼は寝耳に水といった表情を浮かべ、

 そのまま壁際に整列する、彼の専属メイド隊へと視線を送る。

 百人のメイドたちは皆、虚空を見つめ、誰ひとりとして視線を合わせてこない。


「僕、なにかやらかしたかい?」


 ハルトはあくまで“心当たりがない”といった顔で尋ねる。

 ミナは冷たく、しかし即座に否定した。


「勇者さまの“やらかし”は、枚挙にいとまがございませんが」

「いとまないの!?」

「いとまがございません……もっとも多いクレーム、それは――」


 ミナの言葉を、玉座の間の誰もが待った。

 室内に沈黙が走る。

 ハルトは、(しか)られる前の犬のような表情を浮かべた。


「我々、受精体と交わっておられる際に、魔王さまのお名前を口にされることがございます」


 ミナの淡々とした言葉が響く。


「なっ!?」


 ハルトは目を見開いた。


「ほぅ?」


 言葉を発さず沈黙を保っていた魔王フィデリアも、わずかに眉を細める。


「それはどういうことだ? 詳しく申せ――」


 フィデリアが低く問いかけた、その瞬間。


「はっ!」


 ミナが敬礼し、「(おそ)れながら」と前置きして言葉を継ぐ。


「勇者さまは、魔王さまをお慕いのあまり、我々を魔王さまに“見立てて”抱いておられるようです」

「何を勝手なことを言って!」


 ハルトが慌てて否定する。


「必死に取り繕ってはおられますが、快感が高まった際や射精の直前に、“思わず口をついて出てしまう”……という傾向が見受けられます」


 ミナは一切の感情を交えず、冷静に言い切った。


「だから勝手なこと言うなって!」


 ハルトは声を荒らげ、思わず椅子を蹴りそうな勢いで叫んだ。


「勇者さまが魔王さまに夢中でいらっしゃることは、疑いようのない事実にございます。それを(とが)めることなど、誰にもできません。ですが――魔王さまに“見立てられる”のは、あまりにも畏れ多く……」


 ミナの声音には、明確な非難こそなかったが、責めを含む気配があった。


「僕の話をきけー!」


 ハルトが慌てて声を上げる。


「ふむ……ハルトよ。わらわが恋しいのは解るが、小奴らとて、ひとりひとりが人格をもった女たちよ。王の夫たる貴様が、それで良いと思うてか?」


 フィデリアの言葉には、落ち着いた調子の中に、ほんのすこしだけ寂しさのような響きがあった。

 威厳や周囲の敬意に隠れがちだが、フィデリアは普段から、夫であるハルトを必要以上に立てている節がある。

 他人を支配することを生業とする“王”である彼女ですら、愛の前では無力なのかもしれない。

 しかし、だからこそ愛しているがゆえに、他の女たちへの無礼を見逃すことはできなかったのだろう。


「受精体とか言ってるのに!?」


 ハルトの叫びは、ある意味で正論だった。

 フィデリアは、あろうことかメイドたちを“受精体”と呼び、堂々と子作りを命じている。

 その張本人が、今さら「見立てるのは無礼」などと説くのは、確かに筋が通っているとは言い難い。


「そもそも、名前は呼ばな……呼ぶかもしれないが……キミの名前で呼び間違えた記憶はない! 勘違いじゃないのか!?」


 ハルト自身には、まったく心当たりがなかった。

 とはいえ、絶頂の間際に何を口にしたかを完璧に記憶している男などいない。

 それがたとえ、勇者であったとしても。


「そうは言うが……その“クレーム”とやら、一件や二件で済む話ではあるまい?」


 フィデリアは、ちらりとミナを見やりながら言った。


「はい。同様のクレームは、十四件寄せられております」


 ミナは眼鏡のフレームを持ち上げながら、淡々と続ける。


「かく申す私、ミナ・クロイツナーも、これまでに三度、呼び間違えられております。私を含め、皆、その場で勇者さまに申し上げることができず……このようなかたちでのご報告となってしまったこと、魔王さまに深くお()び申し上げます」

「うむ。かまわん、いい機会だ」

「まてまて! だから言ってないって!」


 ハルトは声を荒らげたが、内心ではうっすらと理解していた。

 言った覚えはない。だが――言っていないという確証もなかった。

 そもそも、メイドたちをフィデリアに“見立てて”抱いているつもりは……ない。ないが――いや、たまにある。

 彼がフィデリアと“したい”と思うのは日常茶飯事で、それが口から漏れ出ていた可能性も否定できなかった。

 自信はなくなってきた。

 だが、それでも彼は認めるわけにはいかない。


「ハルト、貴様の魅力。そして“価値”は、その程度で曇ることでもなかろう。些末なことだ、認めてしまえ」


 その声音は堂々としていたが……どこか優しい。

 夫の非を(とが)めながらも、罪にするつもりはない。やはり魔王は、ハルトに甘い。


「あれ!? 夫である僕の言葉はもう届かないの!?」


 フィデリアは動じなかった。

 それどころか、夫の反応を見透かしていたように静かに笑みすら浮かべる。

 ちなみに答え合わせをするが、ハルトは言っている。本人が覚えていないだけなのだ。


「私も名前間違われましたー」

「私も、私もー」

「ミー、トゥー」


 ここぞとばかりに、メイド隊からの追撃が行われる。

 クレームとして報告されているのは十四件だが、実際にはもっと多い。


「おいやめろ!」


 ハルトはすぐに(いさ)めたが、例によって誰が言ったのか特定できない。


「そもそも、名前を(ささや)くプレイ? あらためればいいのにー」

「それなー」

「"ドコが気持ちいいの”とか聞いてくるのとかもね~」


 玉座の間には、百人のメイドが並んでいる。

 数列に折り重なるように整列していながら、誰が発言したのか悟らせずに陰口を飛ばす――彼女たちは、そんな技能(スキル)すら自然に身につけつつあった。


「おい誰だいまの! エリーか!? メルトナか!?」


 ハルト専属のメイド隊は三百人を越える。

 一度でも相手をしたメイドの名前はできる限り覚えようと、彼は常日ごろから努力していた。

 メイドの名前を呼び間違えるような失礼は、しないよう気をつけてきたつもりだった。

 だが、フィデリアの名前だけは違った。彼女の名前だけは、不思議と“漏れる”。

 呼び間違いではない、欲求なのだ。嫁と“したい”という、あまりにも純粋で、あまりにもバカ正直な欲。


 とはいえ、メイド隊――いや、すべての“受精体”にとって、ハルトとの子作りは“仕事”であり、"使命”である。

 どれだけハルトが楽しもうが、彼女たちは妻でも、恋人でもない。

 だからこそ、彼にもう少し“礼儀”をわきまえてもらいたいと願うのは、ごく自然な感情だった。

 メイドたちは皆、彼のことを嫌ってはいない。むしろ好意もあるだろう。

 だが、どこか“ナメている”のも事実だった(態度の話だ)。


「ハルト、我が夫よ……まぁ、落ち着け」


 フィデリアは穏やかな声で諭した。

 その声音には、“王”としての威厳と、“妻”としての優しさが同居していた。


「フィデリア、我が妻よ! これが落ち着いていられるかよ!」


 ハルトは両手を振り回しながら叫んだ。


「我が眷属(けんぞく)たちよ……ハルトがこのようになってしまったのは、わらわにも責があろう。許してくれ」


 フィデリアは静かにそう言い、わずかに頭を垂れた。


「魔王さま……“王”が頭を下げるなど、あってはなりません……」


 ミナが声を詰まらせながら言う。

 忠誠心と混乱が入り混じり、彼女の顔には明確な困惑が浮かんでいた。


「ああ、魔王さま。そんなことはありません!」


 一人のメイドが慌てて声を上げる。

 その声は、まるで取り返しのつかないことを止めようとするかのように、震えていた。


「そうです! 悪いのは色ボケ勇者です!」


 別のメイドが勢いよく言い切った。


「そうだ! そうだ! 魔王さまは悪くない!」


 次々と声が上がる。

 それはフォローでも、忖度でもなく、彼女たちの本心から出た言葉だった。

 崇拝する魔王が、自分たちに謝るなど、あまりにも耐えがたい、あまりにも“無慈悲”なのだ。あってはならないことだった。

 フィデリアは、彼女たちにとって“王”であり、信仰にも近い存在だ。

 そもそも、どう考えても、悪いのはハルトである。


「なんでだよ!」


 彼に反省の色はなかった。

 “最中”に他の男の名を呼ばれることが、どれほど酷な仕打ちか。

 それを“される側”の立場から想像できる者なら、こんな言い訳などしない。

 だが、彼にはできない。ハルトには、その想像力が根本的に欠落しているのだ。


 玉座の間では、勇者とメイド隊の小競り合いが続いていた。

 堂々と陰口が飛び交い、場の温度は騒がしくもどこか愉快。

 そんな騒動をよそに、魔王フィデリアは静かにミナを手招く。

 近づいた彼女の耳元に、何かをそっと(ささや)くと、ミナはちいさく(うなづ)き、その場を後にした。


「エロ勇者っ!」

「おい誰だ! いまのはっ! 名を名乗れっ!」

「破廉恥マスターっ!」

「おいっ! そっちの奴か!」


 悪口の出処を突き止めようと、ハルトは必死に声の主を探す。

 だがメイドたちの連携は、軍隊そのものだった。

 ハルトが視線を向けた方向とはまったく別の方角から“口撃”が飛んでくる。

 そして、誰かが発言すれば、直後に他のメイドがその体で視線を遮る。

 後列の者が叫び、それを前列が“意図的に”覆い隠すという、巧みな防御システム。

 フェイントを織り交ぜながら、声の主の特定を許さない。

 まるで訓練でもしたかのような、“悪口陣形”が完成されていた。

 ハルトの視線が揺れれば揺れるほど、彼女たちの攻撃は鋭さを増していく。

 そして玉座の間には、つい先ほどまでの整然とした空気など微塵(みじん)も残っていなかった。


「静まれいっ!」


 決して大声ではなかった。普段より、ほんのすこし声量が大きいだけ。

 だが、その言葉には“魔王の覇気”が込められていた。

 その瞬間、玉座の間に響いていた喧騒(けんそう)がぴたりと止む。

 百人のメイドと、ひとりの勇者による痴話喧嘩(ちわげんか)のような騒ぎは、たった一言で終わったのだ。

 空気が一変する。重く、静かで、鋭い。王が支配する空間にふさわしい、緊張が走る。

 メイドたちは思わず息をひそめた。

 呼吸ひとつ、心臓の鼓動ですら、許されないように思えるほどの静寂。


「ハルト」


 その静寂を破ったのは、他でもない魔王フィデリアだった。

 だが、声に怒気はない。

 むしろ慈愛に満ち、どこか寂しげですらある“魔王らしからぬ”優しさが(にじ)んでいた。


「わかっておる。わらわが恋しくて、堪らないのだな?」

「フィデリア……」


 ハルトが名を呼ぶ。不安と希望が混ざった声だった。


「気持ちはわかる……わらわとて、同じこと。だが、わらわより強くなるまでは“契らぬ”――その誓いを曲げるわけにはいかぬ」

「……フィデリア……」

「強くなれ、我が夫よ……とはいえ、貴様に我慢を強いすぎて、メイドたちにまで情けない姿を(さら)させるのは、わらわの本意ではない」

「フィデリア……?」

「いま、ミナに人を呼ばせておる――しばし、待つがよい」


 フィデリアはそう言って、にやりと笑った。

 その笑みはあまりに妖艶で、あまりに美しい。

 慈悲でもなく、怒りでもない。

 “支配者”が“愛する者”に向けて浮かべる、ほんのひと欠片の“赦し”のような微笑だった。


最後までお付き合いいただき、感謝です!


「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!


今後の励みになりますので、もしよろしければ……!

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