勇者と魔王
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。
興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]
■公開済エピソートのプロットを公開中
「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。
https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
ダイスワールドが一面――人間界、アストラレア大陸の西端に位置する国、リオネス王国。
かの国が存亡の危機に瀕していたとき、現れた一人の若き勇者の物語である。
「苦労をかけるな、勇者よ」
「畏れ多きお言葉、痛み入ります。この身、いかに汚れようとも、国の安寧と民の笑顔のためならば、喜んで犠牲となりましょう」
玉座の間に立つ若者は、深く頭を垂れていた。
整えすぎず、自然な束感を残した栗色のショートヘア。
同じく栗色の瞳が伏せられ、端正な顔立ちを隠している。
身にまとうのは格式ある儀礼服。
だがその腰には剣があった――王を前にして帯剣を許される、それは彼に与えられた“特権”である。
「うむ、大義である。勇者よ」
王が直接労う、これほど名誉なことは世の中に存在しない。
しかし、その言葉を受ける若者に緊張や衒いなどは微塵もなかった。
彼はこの場に“慣れている”。
「勇者よ、行く前に"アレ”に会っていってやってくれ。いつも貴殿の身を案じている。最近は食も通らぬ始末でな」
「シャーロットさまが? はっ、承知致しました!」
*
そこは王宮の上階、空中庭園。
薔薇のように誇示する花はひとつもない。
代わりに、季節に応じて咲き誇る小さな花々――リンドウ、ユリ、白いスミレなど――どれも控えめながら気品ある佇まいを見せている。
色彩は落ち着いており、華美に過ぎぬよう配慮された園には、主の“育ち”が滲んでいた。
庭の中央、石畳の回廊を歩く二人の姿がある。
一人は、薄緑のドレスに身を包んだ王女シャーロット。
もう一人は、腰に剣を携えたまま、彼女と並んで歩く若き勇者――ハルト・アークブレイド。
王女の前にあって、彼は一度も頭を下げない。
礼節を欠いているわけではない。
そこにあるのは、対等以上の信頼関係と、かつての“約束”が成す無言の了解だった。
「行かれるのですね? 勇者さま……魔王の元へ……」
「はい、帰ります。それが我が使命――姫さま?」
一国の王女が平民の肩に縋る、決してあってはならないことだ。
だが、お付きの兵も、侍女たちも“見慣れた光景”であるかの如く振る舞う。
「行かないで……と言っても無駄なのでしょう? あなたは勇者……その剣にて百万の民を守る存在」
「姫さま……民を導く。それは王家であるあなたの役目です。この身はその為の剣であり、盾にしか過ぎません」
「ああ勇者さま……ハルトさま。もう私をシャーロットとは呼んでくださらないのね?」
勇者の服を握る手に、王女の涙が落ちる。
その一滴には、金貨百枚に等しい価値があるだろう。
「……」
勇者は何も答えない――いや応えることが出来ないのだ。
その昔、将来を誓い合った王女の“願い”とは言え、いまの彼には“使命”があった。
勇者と王女、寄り添う二人を分かつように大きな影が落ちる。
バッサバッサバッサッ!
大きな羽ばたき音、巻き起こる風。
人の“声帯”では発することはできない、重く、分厚い、悠久の彼方より来る声が響く。
『勇者よ、浮遊城が接近している。もう行かねば』
飛竜だ。
蜥蜴が翼をもった翼竜とは格が違う。
人語を解いし、魔術を統べ、空を支配する飛竜。
「ああ、わかった」
絶対的な強者である飛竜に一瞥もくれずに勇者は言った。
「いくぞ、ミナ」
これまでドコに居たのか、空間に溶け込むように佇んでいた女が応えた。
「仰せのままに、勇者さま」
勇者とミナと呼ばれた女は、飛竜が抱える、ゴンドラへと乗り込む。
そのゴンドラには二人以外の気配もある。
ただ者ではないオーラをまとった強者の風格。
おそらくは、勇者の仲間たちであろう。
「ああっ! 勇者さま! 行かないでっ! 私は、シャーロットはいつまでもお待ちしております!」
勇者は振り向かない、思い出は過去に置いてきた。
*
玉座の間は、黒と紅を基調とした厳かな空間だった。
天井は高く、壁に刻まれた文様はどれも禍々しく、意味のわからぬ古代語が刻まれている。
それでいて、不思議な調和を保ち、空間そのものが主の荘厳さを表している。
光は確かにある。高所から差し込むはずの自然光や、各所に設置された魔光灯が。
しかし、それらすべてが冷たい色を帯びて見える。まるで、光そのものが屈服させられているかのように。
部屋の最奥、玉座は重厚な黒鉄と紅い絹で構成され、見上げるほどの大きさを誇る。
だが、その巨大さですら、玉座に座する者の“存在感”には到底及ばなかった。
そこにいるのは、“魔王”――“勇者”と対を成す存在。
その姿を一目見た者の多くが、生まれながらの主従関係にあるかのように錯覚する
玉座の左右には、黒と赤を基調とした鎧に身を包んだ兵士たちが整列している。
仮面や兜で顔を隠してはいるが、しなやかな体格と細い腰つきから、“全員が女性”であることは容易に察せられる。
そして、兵士たちの背後に並ぶのは、無表情のメイドたち。
兵士と同じ数だけ存在するその姿は、異様なほど整然とした佇まいで、場の緊張を一層高めていた。
兵士も、メイドも――彼女らの瞳は、赤く妖しく光を帯びて見えた。
それは錯覚か、それとも本物か。
この空間全体が“終末”の象徴であり、これから始まる“戦い”の予兆でもあった。
カツカツカツ――
足音だけが、広間に響いていた。
勇者は、一直線にその“玉座”へと歩みを進める。
剣を佩き、視線は逸らさず、微塵の躊躇もない。
玉座に座すその存在と、今まさに――対峙する。
そして、彼は言った。
「ただいま」
魔王はその凍えるほどに美しい表情を崩さずに言った。
「おかえり。我が夫よ。首尾はどうだ?」
魔王のその台詞の直後、勇者の脇にメイドの一人が寄り添う。
カチャカチャチャ。
勇者は手慣れた手つきで、レザーベルトを外す。
そのベルトには鞘がつながっており、納めた剣と共にメイドに渡した。
「首尾? 国王さまへの定期報告さ、何も問題ないよ」
勇者は「ありがとう」とメイドに礼を述べつつ言った。
「そうか、人間どもが妾への離反など企んでなければいいがな」
魔王の黒みがかった瞳、その中心に光る銀の瞳孔。
その破滅的な視線で嘲るように吐き捨てる。
「何を言っているんだ、我が妻よ。不可侵条約はあくまでも対等なものだ。我が国が支配下にあるような言い分に聞こえるぞ?」
「くくく、実際そうだろう? 妾の居城がこの地にある。たからこそ、この小国が他国からの侵攻を免れている。そうではないのか? 矮小なる人間よ、我が夫よ」
「見解の相違だな。家族会議ものだよ」
勇者は肩を竦めながら魔王の元へ歩く。
それを咎めるものは誰もいない。
魔王がスッと差し出した右手に、彼は優しくキスをした。
「ふむ、ハルト。お前の身から“乙女”の匂いがする。会ってきたのか? “元婚約者”に」
「いくつも含みのある言い方だな? 王宮へ出向いたんだ、姫君への挨拶はあってしかるべきだろう?」
「よもや浮気などしておらぬだろうな?」
「一国の王女を相手にかい? 死罪ものだぞ? たしかにキミと結婚するまでは色々な娘と関係を持ったさ……それは白状する。だが、いまは浮気なんてしていない、する気もない。キミに夢中だ」
ハルトは一切の躊躇なく言い切った。
「ふん、軽口を叩きおって」
魔王の両目がピクリと蠢いた。
そして、眉の上──左右対称に刻まれたもう一対の瞳が、僅かに開かれる。
それは神すら畏怖する、禍々しくも凛然たる美しさだった。
ひとえに魔族といっても様々だが、彼女は高位魔族に名を連ねる存在で、その異形は、選ばれし血統の証でもあった。
「そもそも、僕の動向は逐一ミナから報告されているだろう? 彼女は僕の“秘書”だが、"主君”はキミだ。そうだろう?」
魔王は何も応えない、代わりに少しだけ口角を上げた。
「……」
たとえ相手が誰であろうとも、一欠けらの媚も見せない。
彼女の表情はそれを物語っていたが、常人であれば発狂してもおかしくない“柔和”な表情だ。
ハルトはその表情を見慣れているのか、動じない。
むしろ、己の伴侶の可憐さを堪能するかのように、じっと見つめていた。
「しかし、うれしいものだな。キミが妬いてくれるとはね」
「妬く? 貴様は何を言ってるんだ? “英雄色を好む”……ハルト、お前ほどの男だ。女色など好きにしろ……だがな」
魔王は頬杖を突き、履き捨てるように言った。
「お前の種は妾の“一族”のものだ。一滴たりとも“外”にはやれん!」
「"種”って!」
ハルトは思わずツッコんだ。
「ミナ、前回の"交配”からどれだけ経過している?」
魔王の問いに応じて進み出たのは、一人のスレンダーな女性だった。
色白の肌に金髪のポニーテール。きっちりと整えられた七三分けの前髪が、知性と冷徹さを印象づけていた。
鼻筋にかけられた銀縁の眼鏡には、両端から繊細なチェーンが揺れており、機能美と艶やかさを同居させていた。
その身にまとうのは、黒を基調としたスーツ風のハイレグレオタードだった。
タイトなミニスカートとガーターストッキングを合わせ、戦場でも動けるように設計されている。
魔王の美しさには遠く及ばないが、魔族との“契約”によって得たその美貌は、人の身では成しえないものであった。
「はっ! 前回は56時間前、メイド隊の一人、ネメラとの交配が最後となっております」
ミナは淡々と事務的に発する。
「交配って言うのやめてっ!」
ハルトは声を荒げた。
「ふむ。なぜ56時間も“搾精”を中断したのだ? 我が夫が国王への定期報告に出向いたとはいえ、時間はあっただろう? ミナ、お前を含めて、何人のもの“受精体”が同行したであろう?」
「はい。仰る通りであります。されど、王宮にて、勇者さまの公務、国王からの持て成しなどがあり、“コト”を済ますタイミングがとれず……」
ミナの言葉を遮るように、魔王が吠える。
「ミナっ! 言い訳などよいっ! 我が夫の寿命はたかだか百年。時間を無駄にせずに搾り取れい!」
ミナは白い肌を青ざめると頭を垂れる。
「御意に! 今後は人目を気にせず、どのような状況、場所であろうとも勇者さまに“中出し”を要求……!」
「はい! ストップ! ストップ! 今のやりとり全部おかしいからね!」
ハルトは話を進める魔王とミナの間に割ってはいった。
両手を広げて、喧嘩でも止めるように。
「おかしい? 何がだ? 言うてみよ、我が夫よ」
魔王が玉座に背を預けて言った。
魔王の頭には山羊に似た大きな角があり、その銀色の髪の房を掻き分けている。
角と肢体の曲線に沿う以外は、真っすぐに美しい“白銀”である。
そのまま重心を預けるように片脚を組みかえた瞬間、スレンダーな体躯には不釣り合いなほどの豊かな胸が、マントの内側でわずかに揺れる。
布越しにも伝わる異形の均整。しなやかな肢体には、神が気まぐれに与えたとしか思えぬ肉感が宿っていた。
だがあり得るのだろうか? 魔族である彼女を神が祝福するなどと。
「それだよ! 僕はキミの夫で、キミは僕の妻。アンダスタン?」
「うむ。ハルト、お前は妾が愛する唯一の伴侶だ」
そう口にする魔王の瞳に一切の曇りはない。
真剣であり本音なのだ。
「うれしいよ、僕もキミを愛してる……いや、そうじゃなくて。だったらなぜ?」
「……要領を得ませんね……結論からいただけませんか? 勇者さま」
「キミもおかしいぞ! ミナ!」
ハルトは思わず声を荒らげる。
「この際だから言うけど、僕の妻、フィデリアよ。僕は結婚してからキミと一度としてベッドを共にしていない。これは比喩ではなく、事実としてそうだ」
魔王――フィディリアは目を細めた。
またその話か、とでも言いたげに。
「この世界に妾の美貌、そして強さに匹敵するものはいない。ドコにもいないのだ我が夫よ。だからこそ、妾は妾よりも"強い者の種”しかいらぬ」
そう言って魔王は、細く滑らかな指先を頬に添えた。
その肌は銀灰色に透けるような光を帯び、氷の彫刻のように冷ややかで、艶やかだった。
彼女の仕草一つ一つが、見る者に息を呑ませるほどの美と――死を想像させた。
「その話は何回も聞いたよ! 聞くたびに耳を掃除するんだ! “あれ? 気の所為だろうか?”ってね。とりあえず、それも百歩譲っていいとするよ。けれど妻であるキミが他の女性を孕ませろって言うのはおかしいよね? おかしいだろ?」
魔王は涼やかな視線を送る。
気の弱いものであれば、この視線だけで氷つくだろう。
「解せぬ」
「何が! 何でっ?」
「ハルト、お前に求婚する際に言うたであろ? 妾は数多くの勇者を見た。そして、屠って来たが、お前ほどの男は他に居なかった――と。我が一族にはお前の“血”が“種”が必要だと。だが、まだ妾には及ばぬ、妾が“妊む”のは時期尚早」
フィディリアはフッと目を細め、片手を“胎”に添えながら言った。
その腹には意味を読み取ることが困難な紋章が刻まれている。
「まず“妊む”って表現やめようか! あと“種”っ!」
ハルトは“勇者”の名声とは別に、“プレイボーイ”としても成らした男だった。
男と女の“情事”で照れを覚える時代はとうに終えている。
しかし、フィデリアとミナの余りに直接的な表現には戸惑いを覚える。
「それで、キミとはまだ無理だけど、他の娘とは子作りしてほしいってこと?」
「そうだが?」
フィデリアは即答する。
「最初からご説明している通りです」
ミナも“何を今さら?”と言わんばかりだ。
「……そっか〜……そうなんだ……へぇ……」
グ……ググ……グググッ!
ハルトは力を貯めている。
「おかしくねっ!」
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