表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水蓮の死  作者: モト
1/2

はじまり

定年退職後、芦屋は早朝の散歩を日課にしていた。

近所には大きな貯水池があり、真ん中に掛かっている橋を渡って、半周を歩いて帰ってくる。

足腰が弱らないための、毎朝30分程度の運動だ。

池を囲むように低い手摺りがあり、その横には雑木林が広がっている。公園というわけではないが、市によってそれなりに整備されている散歩道になっていた。

初夏には水蓮が咲き、貯水池一面に淡い桃色の花が咲く。それを見にくる市民も多い。


池が見えたところで、芦屋は何となく違和感を覚えた。

池の翠が、やけに濃い気がする。

夏には藻の繁殖が活発になるが、今はまだ桜も咲かない春先。そんな時期では無い。

近づき、橋に差し掛かったところで、芦屋は更なる異変に気がつく。

ーーー蓮の花が咲いている?

まさか。昨日までは蕾すら見られなかったはずだ。

しかし確かに、大きな蓮の葉の隙間に、いくつもの白い色が開かれている。


異変を確かめようと、芦屋は池の淵から花の形に目を凝らす。

天を仰ぐように広げられた、葉や水とは違う色。

それが何かわかった瞬間、芦屋はその場に腰を抜かした。いや、本人にはその自覚も無かった。


池から無数に伸びている花。

それは、確かに、人間の手のひらだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ