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第六話 パーティメンバー

「この人と面談をしてもいいかしら」


 掲示板に貼ってあった紙を受付のナタリーさんに渡した。丁寧に受け取り、紙面を確認した彼女の顔が険しくなる。


「リュウジさんですか……彼も元々一人で依頼をこなしていた人なんですよ。気難しい性格というのもあるんですが呪いの装備を身に付けているという事もあってですね……

募集を見て応募した人に何度も逃げられたせいで半ばヤケになってるんです」

「それは丁度いいかもしれないわね」

「え?丁度いいですか?」

「こっちの話しよ。気にしないでちょうだい」


 他の誰かに呪いの装備を横取りされる事が無くなるのは都合がいい。それより問題は彼をどうやって説得するかだ。


「ではリュウジさんと面談の場を設けますね。2階の突き当たりに応接室があるのでそこでお待ちください」

「ええ分かったわ。ありがとう」


 パーティメンバーになるための面接というのはこうも形式がお固いのか。思わず仕事モードに入ってしまいそうだ。

 ……笑顔の練習でもしておこうかしら。


 カウンターの横にある階段から2階に上がる。執務室や書類倉庫を通り過ぎると、奥に「応接室」と札の貼られた扉があった。

 部屋の中に入ると、テーブルと向かい合わせの椅子が四つ。そして窓の側には彩りのための花瓶と簡素な内装だった。

 とりあえず下座に座り、件の彼が来るのを待つ。


【楽しみですねぇ〜呪いの装備を進んで着るヤツなんて、よっぽどの物好きですよぉ】

「……」

【リズ、緊張しすぎじゃないですぅ?中にいる僕まで不安になってくるんですけどぉ】

「わ、分かってるわよ。すぅ……はぁ……」


 しばらくするとコンコンとノックの音がなった。


「……どうぞ」


 扉が開かれる。そこに立っていたのは全身に黒い鎧を纏った威圧感のある男の人だった。

 身長は180くらいの高身長。ただ、前衛職だというのに武器のような物を一つも携えていない。

 そして何よりも特徴的なのは彼を取り巻く濃い呪いの気配、まさに呪いの装備を体現していた。


「……リュウジです」

「リズよ、今日は面談の機会を設けてくれてありがとう。

お掛けになって」

「あぁ。よろしく」


 彼は軽く会釈して向かいの椅子に座った。


「ふぅ。それで……パーティの誘いだったな。呪いに耐性はあるのか?」

「えぇ貴方の呪いなら一日中横にいても支障はないわ」

「ならいい。受理願いを出してくる」


 そういってリュウジは立ち上がり、応接室から去ろうとする。

 彼との対談はたった一つの受け答えで終わったというのだ。


「待ちなさい」

「……他に何かあるのか?」

「大アリよ。私、貴方のこと何も知らないのだけど」


 それを聞いたリュウジは、つくづく嫌そうな様子で私を一瞥し椅子に座り直す。

 正直、私は怒っていた。命に関わる仕事である以上パーティ内での付き合いは深めるに越したことはないというのに、この男はその一切を拒絶して話しを切り上げた。

 その態度に腹が立つ。


「リズと言ったな。お前、何回パーティを組んだことがある?」

「貴方で初めてよ」

「そうか、俺は8回だ。それもくだらん制度とやらが制定された短期間でな」


 彼の呪いが強くなる。語気には静かな熱がこもっていた。


「俺の力に縋るやつ、ゴールドランクに上がるためのコネを作りたがるやつ。ただ単に面白半分で俺にパーティを申し込んで来たやつ……俺は色んな奴らとパーティを組んできた」

「……」

「勿論いい奴もいた、俺の呪いを解こうとする奴もな。だが性根が善人な奴は、早死にするのが冒険者の常だ」


「それなら初めから期待なんてしない方がいい。

己の都合で期待して勝手に裏切られて、

俺のせいで人が死ぬのは目覚めが悪い。

……だからお前も俺を知るな」


 ……この人は昔の私によく似ている。


 神託者という強大な力に期待されて、そして失望された私に。

 寄り添ってくれる善人は、自身の力に群がる悪意に晒されて命を落としてしまう。

 それなら一人の方がよっぽどマシだと闇の中を歩く。

 そんな彼の境遇は、そっくりそのまま私の生き写しだった。

 彼とパーティを組むのなら、彼の心に掛かったこの呪いを解かなければならない。


「貴方に必要なのは理解者よ。悪意も善意も無く、向けられた全てを一緒に受け止めて歩んでくれる仲間がいないといけないのよ」

「……痴れ事だな」

「私はなれるわ」


 リュウジは私の言葉を聞いて逡巡した後、口を開く。


「ならばリズ。お前は何が出来る?お前はどうやってその理解者とやらになるつもりだ?」


 私はしっかりとリュウジの瞳を見据える。

 彼の呪いは揺らめいていた。


「貴方が心の底から辛くて立ち上がれなくなった時には、私が膝枕してあげるわ」

「……は?」

「どう?結構良い提案じゃないかしら?」


 私の返答に虚を突かれたらしく、リュウジは手の置き場を忙しなく探していた。

 私に告げようとしていたであろう言葉は行き場を失ってしまったのだろう。


「……あー……マジ?」

「大マジよ」


 リュウジは小刻みに震えたまま喋らなくなってしまう。

 ……私、そんなに変な事言ったかしら。


「ーーーはっはっはっはっはっ!!!ひっ膝枕っ!

膝枕って!!!そんな事言う奴お前が初めてだ!!

ははははは!!ちょっちょっと待ってくれ !」

「……笑いすぎじゃない?」


 そして私の答えがよっぽどツボに入ったのか、リュウジは机をバンバンと叩きながら豪快に笑い出したのだった。



♦︎♢



「あ〜……もう大丈夫だ。さっきは悪かった、色々な」

「いいのよ。それでパーティの事なのだけれどーー」

「あぁそうだな、そういやそうだった。……これは俺の方から言うべきだな」

「リズ、俺のパーティメンバーになってくれないか?」

「……えぇ。こちらこそ、よろしくお願いするわ」


 差し伸べられた手を取って握手をする。

 彼となら上手くやっていけるだろう。何より初めての仲間という関係に、私の胸は高鳴っていた。











「……そういえばパーティの名前なんだが、リズが決めてくれないか」

「えっ、今?パーティの名前って……そ、そうねぇ……

う〜ん……私たち黒いし、『黒子ズ』とかどうかしら」

「……すまんやっぱり俺が決めとくわ」


 小刻みに震えたままリュウジは応接室から出ていった。

 笑ってた。あの震えは笑いを堪えてる震えだ……!

 許せない。彼には後で肘打ちをお見舞いしておこう……

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