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第四話 フィオ家からの追放

 お父様の訃報は瞬く間に広がった。

 フィオ家の存続や領主の後継ぎなど、屋敷はその話題でひっきりなしだ。


「後継ぎはフィーナお嬢様だろう。彼女の信心深さがあれば我々領民を正しい方向へと導いてくださる」

「今回の騒動の主犯はリザイアお嬢様だと聞いたぞ!

地下の封印を解き我々を混乱に貶めたんだ!!」

「だけどリザイアお嬢様は外にいた魔物を倒して助けてくれたわ。彼女が主犯だなんて、何かの間違いよ」

「それはリザイアお嬢様が仕組んだ自作自演だろう!!

聞けば今回の騒動はハーラン家も巻き込まれたと!」


 耳に挟んだだけでも多くの情報が交錯していた。

 総意としては、後継ぎはフィーナであること。

 そして


「リザイアお嬢様は処刑にするべきだ!彼女の呪いはいずれ我々を飲み込む災禍となる!!今回の騒動はその前触れにすぎない!!」


 私は罪人として処刑されるべきだということだ。


【リザは領主の娘だったんですねぇ。というか僕の封印の前で騒いでたアイツ、殺さない方が良かったんじゃないですかぁ?】

「そうかもね。でも後悔はしてないわ」


 そもそもお父様が死んだ時点で、交渉の余地など無かった。

 彼が使っていた使役魔法も、どの範囲まで効果が適用されるか分からない以上野放しにも出来なかったし。

 ふぅと小さくため息をつく。


「……フィーナが処罰を下すのなら処刑にはならないでしょうし、おそらくフィオ家からの勘当でしょうね」

【はぁー、僕の貴族暮らしも3日で終わりですかぁ】


 部屋にコンコンとノックの音がした。


「どうぞ」

「失礼しますリザイアお嬢様。フィーナお嬢様からの言伝を預かりました」

「……」

「読み上げます。『リザイア・フィオは本日を持ってフィオ家に関わる全ての権力を失い、勘当とす』……とのことです」

「ありがとう、下がっていいわ」

「はい」


 使用人は踵を返して礼儀正しく去ってゆく。

 分かっていた、これは領民の総意だ。フィーナは私に疑いが掛けられている事自体に不満を抱いていた事だろう。

 だが上に立つ立場になった以上割り切らなければならない事もある。


「じゃあ行きましょうか。暗くなる前にこの街から離れないといけないし……フィーへの挨拶はしなくてもいいでしょう」

【うぇーあっさりですねぇー。お礼参りとかしなくていいんですかぁ?】

「ふふっ面白い事言うのね。誰にするのよ?今回の騒動、私しか悪くないじゃない。あとは骸だけよ」


 私は予め支度していた荷物を持ってフィオ家を後にした。


♦︎♢♦︎♢


【それでこれからどうするんですかぁ?行く宛もないんですよねぇ?】


 フィオ家から離れた後、私たちは馬車に揺られながら隣国を目指していた。

 乗客の視線が少し気になるが、この街から離れたらそれも無くなるだろう。


「そうねぇ……。ねぇバンシー、呪いの集まる場所とか知らないかしら?」

【呪いの気配なら分かるです。でも集まる場所とまでなると難しいですねぇ。人が形作る呪いは思想も用途も流動的ですし、一箇所に留まる場所なんて無いんじゃないですかぁ?】


 確かに、呪いというのは偏在しているものではない。

 神秘であれば話しは別だろうが、人の手が介入するのであればそこには何かしらの思惑が絡む。


「じゃあギルドでも行こうかしら」

【……ギルド?ギルドってあのむさ苦しい男どもが集ってガヤガヤしてるあのギルドですかぁ?】

「そ、冒険者たちに依頼が集まる場所なら呪いに関する情報も自然と集まってくるんじゃない?それに金銭の工面も解決出来るし、割と現実的な案だと思うのだけれど」

【というかリズは何でそんなに呪いに拘るですかぁ?】

「美味しいからよ」

【リズは初めて会った時からそればっかりですねぇ!!

欲望に忠実すぎじゃないですかぁ!?】

「褒め言葉として受け取っとくわ。ほら、もう着くわよ」


 馬車から外を見渡してみると、隣国であるエリナ王国がその繁栄と共に姿を覗かせていた。

 フィオ家が統治していた場所はリオ王国。

 エリナ王国はリオ王国とは比べものにならない程巨大な国土を持った主要国だ。

 馬車から降りて、衛兵のチェックを受けた後にエリナ王国の門をくぐる。


【ほぇー大きな街ですねぇ。それにリズがいた所と比べると水が豊富な気がするです】

「エリナは水脈が豊富な土地が基盤になってるのよ。

エリナの繁栄と水脈には深い結び付きがあるの。

さっそくギルドに行きましょう」

【リズ、この辺りのこと詳しいんです?】

「領主の会議はエリナで開かれてたから、何度か足を運んだ事があるのよ。地図なら頭に叩き込んであるわ」


 人混みに押されながらも、迷わずにギルドへと向かう。

 ギルドには剣と杖が交差したマークの看板が吊り下げられており、建物からは遠くからでもその声が聞こえるほど活気と喧騒で満ちていた。

 この賑わいの中に私が入ってもいいのだろうか……浮かないかしら……?


【……入らないですか?ずっと入り口の前で突っ立ってると邪魔ですよぉ?】

「ちょ、ちょっと待って」


 ギルドの入り口である木造のドアに手を置く。

 その姿勢のまま私は直立不動で固まっていた。


「どうしようバンシー。よく考えたら私、ギルドの作法の事何一つも知らないわ」

【ギルドに作法もクソも無いと思いますけど。

リズ、変なところで抜けてますよねぇ】

「う、うるさいわね!はぁ……リサーチ不足だったわ。

出家する前にギルドについて調べとくべきだった」


 しょうがない、なるべく毅然とした態度でいれば

あらごとは起きないだろう。

 私はピン、と背伸びをしてギルドへと足を踏み入れた。

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