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フライング☆スカイ☆ハイ! ~フライングレースに青春をかける少女たち~  作者: 三原みぱぱ


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第64話

 騒乱の創部承認が終わり、わざわざ来てくれたドラゴン伊吹にもお礼を言った後、四人はカフェに集合していた。

 テーブルの上には、コーヒーやジュースの他に巨大なパフェが置かれている。

 巨大パフェに挑んでいるモニカに対し、心のつっかえが取れたつばさがずっと不思議に思っていたことを尋ねる。


「なんで、モニカさんのモニカ・クラッシュはドラゴン伊吹に通じたの? と言うか、モニカ・クラッシュすかしが効かなかったの?」


 モニカは、パフェ用の長いスプーンをくるくると回して答えた。


「それが、本物とイミテーションの違いヨ」

「イミテーション……」

「そうヨ。ワタシが本物のモニカ・シューティングスターで、つばさちゃんは、空野つばさの違いヨ」

「キックの位置よ」


 つばさを煙に巻くような言葉を続けるモニカに向かって、いつもの眼鏡姿で、スノーフェアリーから魔女千尋に戻り、カフェオレを飲みながら言い放つ。


「キックの位置?」

「そうよ、つーちゃん。つーちゃんは背中にタッチした後、相手の腰辺りを蹴るでしょう。だから、身体を丸められると、キックが外れるのよ」

「え、でも、それが普通だよね」

「普通はね。でも、モニカさんは手を付いた辺り、つまり背中を蹴ったのよ」


 そう言って、千尋は隣に座るつばさの背中をとんとんと叩いた。

 モニカはアイスを口に運びながら驚いた。


「千尋ちゃんは相変わらず、よく見てるわね」

「と言うことは、合ってるの? でもそれだけの違いで変わるの?」

「まあ、バレちゃったから教えるヨ。元々、あの技はキックで相手を落とすことが主目的なのヨ。だから、極論言うと倒立した時、相手に触れる必要はないのヨ」

「じゃあ、なんで、触れてるの?」

「突然、相手が見えなくなったら、何か仕掛けてくると思って、回避行動を取るわよね。だから、手の感触を通じて相手がどう動くか感じてるのヨ。そして、タッチする背中は身体の中心になるから、一番動きが少ないから蹴りやすいのヨ。だから、蹴るところは背中なのヨ」

「なるほど! 流石、本家!」

 

 モニカの説明につばさは目を輝かせていた。そして、このままモニカ・クラッシュの練習に行きそうな雰囲気のつばさの首根っこを捕まえた千尋は、話題を変えた。

 

「あ、そう言えば、モニカさん。わたしはあの場で広告塔にあるようなことを言いましたが、それはモニカさん一人でお願いしますね」


 それを聞いたモニカは、半分まで食べ終えたパフェから顔を上げた。


「なんでヨ。あのレースでしか名前が知られていないワタシより、何年もスノーフェアリーとして活躍していた千尋ちゃんの方が、広告塔になるじゃない」

「だから嫌なんです。わたしは校長や教頭に写真撮影もサインもしたのですから、あとはモニカさんがお願いします。そもそもわたしはスキージャンパーでしたから、フライングレースではモニカさんの方が有名ですよね」

「うっ……」

「それに、モニカさんは自分でカミングアウトしたのに対して、わたしはバラされただけですからね」

「……ごめんなさい」

「まあ、モニカさんの一言が、決め手になったから良いんですけど……モニカさんにはこれから指導者としても、頑張ってもらわないといけないですからね」

「まあ、ワタシで教えられることは教えるけど、千尋ちゃんの方がそのへんは得意だよね」


 そう言うと、モニカは残りのパフェに手を付け始めた。

 そんなモニカを見て、優香子が気になっていたことを尋ねてみる。


「モニカさんは四年前にフライングレースを止めたんですわよね。フライングレース部も初めは乗り気じゃなかったではないですか。それなのに、なぜ急に入ってくれる気になったのですか?」


 パフェを平らげたモニカは、口の周りに付いたクリームを吹きとりながら優香子の疑問について考えていた。

 あの頃はママが病気になり、ママの夢でもあったプロレースに出ることが出来た上、優勝までできた。そんな娘の姿を見て満足したのか、ママは安らかな眠りについたのだった。ママを無くした悲しみで、フライングレースに出る気力が無くなり、そのままここまで来てしまった。優勝をしてしまったせいか、未練も無かった。

 しかし、つばさに憧れで目標だと言われて嬉しかった。久しぶりのフライングレース。学生レースで戸惑いもしたが、それでも久しぶりに飛んだ緊張感のある空は楽しかった。仲間と協力して飛ぶ空も楽しかった。

 そして、前を向いているつばさを見て、自分がずっと後ろだけを見ていたことにも、気がついてしまった。今を楽しんで、未来を見ろと五歳も離れた少女に教えられた。だから、この子たちと一緒に、もう一度ママが大好きだった空を飛んでみようと思えたのだった。


「さあね。そこのフェアリーちゃんが怖かったからかな? それよりも……」


 本当のことを話すのが恥ずかしいモニカは、話を逸らす。


「せっかくだからチーム名を決めない?」

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