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フライング☆スカイ☆ハイ! ~フライングレースに青春をかける少女たち~  作者: 三原みぱぱ


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第61話

 ドラゴン伊吹にモニカが追い付いていた。

 つばさの頑張りが、トッププロのスピードを落とさせ、モニカの追撃を許したのだった。

 猛スピードでドラゴン伊吹に迫るその姿に、つばさは思わず声を上げた。


「モニカさん!? 速い!」


 つばさの言葉の通り、モニカ・クラッシュすかしから再加速しようとするドラゴン伊吹に追いついた。

 しかし、ドラゴン伊吹も簡単に抜かせてはくれない。加速しながらも、モニカにタックルを仕掛ける。

 つばさは思わす、目をそらし悲鳴を上げる。


「危ない!」

「つばさちゃん、本物のモニカ・クラッシュを見せてあげるわヨ!」


 インカムから聞こえるモニカの声に、つばさは顔を上げた。

 そこには、ドラゴン伊吹の背中で倒立するモニカの姿があった。

 本物!? どういうこと? でも、その技はドラゴン伊吹には効かない。


「だ……」


 だめ! とモニカを止めようとしたつばさの瞳に驚くべき姿が映っていた。

 うばさの時と同じように、モニカが足を振り下ろした瞬間、体を丸めて避けようとするドラゴン伊吹。モニカは蹴るべき体がなく、空を切り、落ちるだけだった。

 しかし、落ちたのはドラゴン伊吹だった。

 モニカ・シューティングスターの必殺技、モニカ・クラッシュを喰らい、くるくると回りながら、落下するとパラシュートが開いた。


 勝った。


 ドラゴン伊吹のパラシュートが開いた時点で、勝利は確定した。

 それよりも、つばさにはそんなこと忘れるくらいの衝撃で、ゴールをくぐるモニカを見ていた。


 天翔ける燕。天才レーサーと言われ、たった1レースで表舞台から消えた少女。つばさが追い付き、追い抜くと決めた綺羅星。

 モニカ・シューティングスターが空に戻って来たのだった。

 つばさは、地上に降り立つと、パラシュートで降りてきたモニカにタックルをかました。

 つばさの勢いを受け止めきれないモニカは、つばさとともに、青々と生い茂る草の上を転がった。


「ちょっ、何するのヨ!」


 モニカは、ヘルメットを外しながら文句を言って、つばさの言葉を待った。

 一向に何も言わないつばさにしびれを切らしたモニカは、つばさのヘルメットを外すと、思わず笑った。


「顔、ぐちゃぐちゃじゃない」

「ぐす、えっぐ、おかえり、ぐす、なさい」


 泣きじゃくるつばさを優しく抱きしめて、モニカは言った。


「ただいま」


~*~*~


 浅間山高校との練習試合を終えた、連休明けの放課後、つばさたちは校長室に呼ばれていた。

 そこには、校長、教頭とともに桜子先生が待ち受けていた。

 つばさたちとともにモニカを合わせた四人を確認すると、桜子先生が口を開いた。


「校長、フライングレース部員四人が揃いました」

「放課後に集まってもらったのは、あなたたちが創部願いを出しているフライングレース部のことです」


 背の高い校長が校長席に座ったまま、本題を切り出した。

 桜子先生から聞いていた創部の条件は、最低でもフライングレースに出場できる四人の部員。そして、浅間山高校との練習試合での実績だった。

 今日はモニカが逃げずにやってきているため、部員数はクリアしている。

 残りは実績も、ハンデ付きだがトッププロに勝った。問題はないはずだ。しかし、学校側がどんな難癖をつけてくるか分からない。そのため。千尋は先手を打つように、口を開いた。


「はい、通常、創部に必要な人数二名の倍の四名を条件に出されて、それをクリアしたにもかかわらず、全国三位の浅間山高校との練習試合で実績を出さないと創部されないという、明らかに不公平な条件を出された、私たちフライングレース部の件ですよね」


 その口調は感情的に興奮するでもなく、皮肉を効かせるでもなく、ただ、冷静な口調で状況を説明するその様子は、逆にキツい皮肉に聞こえて、校長も教頭も一瞬、たじろいだ。

 しかし、気持ちを取り直した教頭が、千尋を睨む。


「ええ、そうです。まず、部員数について確認しますが……橘モニカさん。部員ではなく助っ人として練習試合に参加したと聞いていますが、本当ですか?」


 なぜ、そのことを教頭が知っているの分からないが、痛い所を突いて来た。

 他の部活でも、人数が足りずにヘルプを頼むことは良くあることだ。人数が足りない野球部が、サッカー部や陸上部から部員をレンタルして大会に出るなど。そして、そこで結果を出したとしても、それが部の実績になるかと言われれば、難しい問題だ。

 そんな教頭の言葉に、モニカはあっさりと答えた。


「ええ、そうです。先日の練習試合は助っ人で参加しました」

「やはりそうですか。では、部員数は四名に達していないので、廃部と言うことでよろしいですね。後藤先生」


 禿げて太った教頭はしてやったり、と言う顔で桜子先生に告げる。

 しかし、桜子先生は涼しい顔で反論する。自信満々な他の部員と同じように。


「どうしてですか? 教頭。部員数は今朝の時点で四名ですよ」

「ですから、橘さんがさきほど言われたように、練習試合だけの助っ人部員を正式部員の数に数えるのは問題ですよ。幽霊部員もしかり」

「私は先ほど、『フライングレース部員四人が揃いました』と言いました。橘からは練習試合直後に、正式に入部すると、連絡を受けて受理しました」

「な、本当か、橘」

「はい、本当ですヨ。あの練習試合を通して、この三人とフライングレースをしたいと思ったので、正式に入部させていただきました」

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