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フライング☆スカイ☆ハイ! ~フライングレースに青春をかける少女たち~  作者: 三原みぱぱ


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第47話

 呼ばれた伊吹虎之助は苦々しい顔で、父親を見ている。

 すると、ナタリーが意外そうな顔で口走った。


「なに、おまえ、ドラゴン伊吹の息子なのか?」


 周囲がざわついた、まさか伝説のレーサーとやんちゃな部活仲間が親子関係だなんて思いもしなかったからだ。

 というのも、伊吹は自分の父親がドラゴン伊吹だと言うことを部員にも隠していたのだ。

 それは偉大なプロレーサーの息子として、色眼鏡で見られることを嫌がり、自分の実力だけでフライングレースをしたかったからだ。ただでさえ、小さい頃からフライングレースに触れる機会があり、他の人達よりも大きなアドバンテージがある上に、父親の威光も加われば、実際の実力と評価が剥離してしまうのを恐れてのことだった。

 だから、父親であるドラゴン伊吹がシミュレーターを寄付する際にも、自分との関係性を他の部員に言わないように念を押したほどである。

 しかし、その苦労もこの瞬間に水の泡になった。


「うるさい、クソ親父。何で来たんだよ」

「クソ親父はひでぇな。他校と練習試合があるって聞いて、わざわざ見に来たのに。今日の練習はもう終わりか? 嬢ちゃん、明日もいるんだろう。一緒に飛ぶか?」


 つばさを見つめて、ドラゴン伊吹は日に焼けた顔の目尻にしわを寄せて笑った。

 その顔はつばさの言葉にも息子の言葉にも腹を立てた様子は無く、ただじゃれてくる子どもたちと少し遊んでやろうとしているように見えた。

 つばさは即座に返事をする。


「お願いします!」

「よし、約束だ」


 そう言って、大きな手を差し出したドラゴン伊吹はつばさと約束の握手を交わした。その時、浅間山高校の顧問である竹本が口を挟んだ。


「伊吹さん、もしこの後にお時間があれば、先ほどのフライトレコードを見ながら、反省会を行おうと思うのですが、参加していただけるでしょうか。私どもの部員も伊吹さんに聞きたいこともあるでしょうから」

「良いですよ。私でよろしければ」


 ドラゴン伊吹は竹本先生の申し出を快く受け入れて、合宿一日目の練習が終わった。そして言葉通り、夕食までの間、視聴覚室で今日のフライトの反省会を行うことになった。

 反省会は、一つ一つのフライトに、顧問の竹本が反省点や改善点を説明するとともに、ドラゴン伊吹からのアドバイスも加えるという形で進んで行く。

 そして、彩珠学園の順番になり、竹本が口を開いた。


「今年の四月に発足したチームにしては善戦されているとは思います。シミュレーション結果から分かるように、空野さんのスピードはかなり優秀ですが、チームとしてそれが生かせていません。ナビゲーターに関しても、まだまだ練習不足のため、レーサーがナビゲーターの役目を担って、フライトに集中できないためミスが目立ちます。個別のフライト能力、ナビゲーション能力の向上はもちろんのこと、チームフライトの練習に重点を置くべきでしょう。まずは、練習においてフライトの順番を固定せずに、色々なポジションを経験しながら、そのポジションの人間がどう動くべきか、他のポジションがどう動いて欲しいかなど考えながら、お互いに意見を言い合って、そのチームにあった動きを決めていきましょう」


 竹本先生は自分の学校の生徒同様に、つばさたちのフライトに対する問題点を挙げた。それは、学生フライトレースのレベル向上のため、何一つ隠すつもりのないアドバイスだった。

 そして、竹本先生の話が終わった後、つばさたちのフライトを難しい顔で見ていたドラゴン伊吹は、ゆっくりと口を開いた。


「橘さん。あなた、余力を残して飛んでいますね」


 どうせ、この練習試合が終われば、つばさたちのチームから外れるという思いからか、後ろの方で興味なさそうにしていたモニカに、真っ先に話しかけた。


「余力を残して飛ぶことは決して悪いことではありません。ご存じの通り、フライングレースは危険なスポーツです。突風や鳥など、思わぬ出来事でも安全に対処できるように、余力を残してフライトをすることは必要です。が、もう少し頑張っても良いのでは無いかと思います。これから、本気でフライングレースをするのであれば」

「それは、どういうことですか? 伊吹さん」


 ドラゴン伊吹の言葉に引っかかりを覚えた竹本は、思わず口を挟んだ。


「言葉の通りですが、まあ、本人には伝わっているようですし、この件はこれくらいで。さて、その他に関してですが、竹本先生の言われたとおり、お互いの動きをよく見て、フライトをしてください。特に空野さん、好きに飛ぼうと言う気持ちが、フライトにも表れています。お互いがお互いを助け合い、高めあうフライト方法を身につければ、このチームは飛躍的に伸びますよ」


 そう言うと、次のフライトレコードに行くように促した。

 次はナタリーたちのチームである。

 セカンドリングを通過して、伊吹がナタリーに助けられるシーンで、ドラゴン伊吹が笑い始めた。


「竜之介、お前、中学生に助けられたのか? わっははは」

「伊吹さん、高橋は高校2年で、ウチの部の中心的人物ですよ」

「あ、失礼、そうでした。それでは先生どうぞ」


 竹本先生が指摘をすると、父親の顔からレーサーの顔に戻ると、竹本先生の講評を聞き、冷静なアドバイスをする。

 そして、全ての反省会を終えた後、明日の予定の再確認が行われた。

 合宿二日目は午前中がテクニカルで、午後はファイト種目である。

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