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フライング☆スカイ☆ハイ! ~フライングレースに青春をかける少女たち~  作者: 三原みぱぱ


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第41話

 まずは四組に分かれて、シミュレーターをするための、グループ分けを行うことになった。


「彩珠学園の皆さんは、せっかくなので各組に一人づつ入ってください。シミュレーターは1から4番まで番号が付いているから、じゃんけんで決めてもらってもいいですよ」


 風間部長はどの組に行こうかと考えているつばさたちにそう、提案した。

 そんな中、「面白そう!」と言うつばさに対して、優香子は不安そうな顔をしていた。初心者の上に、周りに知り合いがいないと言う不安が、顔に現れていたのだ。

 すると、その表情を察したのか風間部長が優しく提案してくれる。


「そう言えば、初心者の人がいましたよね。その方は僕のグループに来てください。初心者グループですので」


 その言葉に、優香子は安心したように、そちらのグループに合流する。

 残りの三人は、じゃんけんで各々のグループに振り分けられることになった。

 そして、つばさが入ったグループに背の高いアニメ声の華代がいるのをつばさは発見した。


「あら、つばさちゃんはこっちのグループに来たのね」

「こ、こんにちは、華代さん」


 誤解とは言え浅間山高校に喧嘩を売ってしまったつばさは、あの場にいた華代に少し警戒心を持っていた。


「なぁに、緊張してるの?」

「いや、ほら、ボク、ナタリーさんを怒らせちゃったじゃないですか。だから、華代さんも怒っていますよね」


 つばさにしては珍しく、ちょっと探り探り話をすると、華代はコロコロと笑った。


「ああ、あの件? 大丈夫よ。怒ってるのは、伊吹君だけだから」


 華代の言葉にモニカと同じ組になっている伊吹を見ると、彼はつばさに対して中指を立てて舌を出していた。そしてすぐ側の先輩らしき男子生徒に怒られていた。


「でも、ナタリーさん、ずっとこっちを睨んでたんですよ」

「ああ、ナタリーちゃんは目つきが悪いだけよ。そんなに気になるなら、後で話してみたらいいわよ。どっちにしろ、夜には交流会もあるからね。それよりもつばさちゃんたちって、シミュレーターを使ったことあるの?」

「ボクとチーちゃんは何回か体験したことはあります。モニカさんは分からないけど、ゆっこは初めてだと思う」


 そう言って、つばさは心配そうに優香子をみると、新品の可愛らしいピンク色のウィングスーツに身を包んで、緊張した面持ちで順番待ちをしていた。

 ハンググライダーでは一人で飛べるし、スカイダイビングも何度も飛んだ。しかし、シミュレーターとは言え、ウィングスーツで飛ぶのは初めてである。そんな優香子に風間部長が優しく説明し始めた。


「高田さん、ウィングスーツで飛ぶのは初めてなのですよね。まずは、僕がインストラクターに付きますので安心してください。シミュレーター内は風の音でうるさいので、ヘルメット内のマイクだけで無く、ハンドサインも覚えてくださいね」


 風間部長の言う通り密閉された中に上向きの強力な風が吹き出し、その音はヘルメット越しでも聞こえてくる。


「じゃあ、行きますよ」


 風間部長が先に中に入り手招きすると、優香子は事前に説明されたように入り口から倒れ込むようにダイブする。すると、普通であればうつ伏せで地面に倒れるのだが、ウィングスーツに風を受けた優香子はふんわりと浮かぶ。

 すると、風間先輩が浮かぶ優香子のお腹の部分を優しく支えて、フライトの補助をすると、床から一メートルくらいで優香子の体勢が簡単に安定する。風間先輩はその姿を見てハンドサインでオッケイの合図を出し、優香子は基本姿勢動作の練習を始めた。

 そんな風間部長率いる初心者クラスは、基礎的な練習のみでウィングスーツに慣れる事を目的にしているのに対して、つばさたち三人はすこし上級の練習であるスピードデーターを取る事になっている。

 そこで伊吹と千尋がにらみ合っていた。


「お前ら、良く来れたな」

「そりゃ、合同練習会のお誘いをいただいたので、受けるのはごくごく普通のことだと思いますが、何か不都合でもありますか?」


 二十センチも背の高い、けんか腰の伊吹に対して、笑顔を貼り付けた千尋は一歩も引くことなく、軽く受け流していた。

 その態度が気に入らない伊吹は、ずいっと一歩近づいてドスがきいた声で千尋を脅す。


「ほう、喧嘩売った相手の誘いを簡単に受けるとは、いい度胸じゃねえか。小娘の分際で」

「あら、背の低さのことなら、そちらの高橋先輩と一緒にお話を聞きましょうか?」


 そう言って、千尋はモニカと一緒のグループの、自分よりも背の低い高橋ナタリーへ視線を送る。


「あ、いや、悪い。小娘発言はなかったことにしてくれ」


 よっぽどナタリーのことが怖いのか、速攻で発言を撤回した上に目が泳いでいる伊吹に対して、千尋は追い打ちをかける。


「つーちゃんの言葉が、あなたたちに喧嘩を売っているって言いましたけど、つーちゃんが見た飛行って伊吹さんたちですよね」

「ああ、そうだよ。俺達の飛行を見て、あいつは『たいしたことないですね』って言い放ったんだそうだな。これが喧嘩を売っている以外に何だって言うんだよ」


 その言葉に千尋の眼鏡型ディバイスが怪しく光った。


「だって、実際、たいしたことなかったんでしょう。つーちゃんは『全国三位』のあなたたちの飛行を楽しみにして、付いていったんですよ。でも、伊吹さんはその、『全国三位』の飛行を見せていないんでしょう。だから、『たいしたことが無い』と言う感想であっていませんか? こんな立派な設備まで持ってるのに」


 千尋の言葉に、伊吹は言い訳をする。


「そりゃ、仕方が無いだろう。あの日飛んだのは、俺たち新入部員だけだったんだから」

「そうです。そもそも、つーちゃんはあなたたちが『全国三位』のメンバーじゃないと知らなかったんですよ。だったら、しょうが無いじゃないですか。それに逆ギレしている先輩はどこの誰ですか? 伊吹先輩」

「ぐっ……じゃあ、今回でうちの本当の実力を知って、ビビりやがれ」


 そう言って、伊吹は上から千尋の額に向かってビシッと指を差した。


「ええ、じっくり見させて貰いますよ。全国三位の実力って言うものを。そのために遠くから来たんですから。あ! ちなみにそのあなたの言う、浅間山高校の本当の実力の中に、伊吹先輩も当然、入っているんですよね。わたし、すっごく、たのしみぃ~」


 そう言って、わざと眼鏡を少しずらして上目遣いで伊吹を煽った。

 そんな安い挑発に伊吹は乗る。


「当たり前だ! 中坊に負ける伊吹様じゃねえんだよ。よく見てろ!」


 そうして、千尋の挑発に乗り、実力以上の物を見せよう力みに力んで、自己最低タイムをたたき出した伊吹に対して、冷静にいつも通りの飛行をした千尋は楽々と伊吹よりも良いタイムでシミュレーターの外に出たのだった。


「くっそう、いつもはこんなはずじゃ」


 そう言って悔しがる伊吹の前に、すまし顔の千尋はやってきた。


「大丈夫ですか? 伊吹先輩。たまたまですよね。ドンマイです。一年生同士、これからは仲良くしましょうね」

「お前……」

「まあ、三才違いますけど、ね」


 最後まで煽る千尋を遠くから見ていたナタリーは、モニカに話しかけていた。

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