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フライング☆スカイ☆ハイ! ~フライングレースに青春をかける少女たち~  作者: 三原みぱぱ


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第40話

 体育館内のウィングスーツの練習場には、直径四メートルほどの円柱状の装置があり、その床から上昇気流を発生させるようになっていた。その装置はウィングスーツを身につけて、円柱の中に入ると浮かぶことができる上、円柱内部は三百六十度モニターになっており、本当に空を飛んでいるかのような気分になれるのだそうだ。しかし、実際には最小で一メートルほどしか浮かない状況を作れるため、非常に安全にウィングスーツの練習ができる。その上、最大では十メートルほどまで上昇できるので、テクニックの練習もできる優れものだということらしい。

 これさえあれば、初心者でも練習しやすいし、高度なテクニックの練習にも最適だ。天候が悪い日だって関係ない。


 それが四台もあるのだ。


 興奮したつばさは思わず、桜子先生の服を引っ張った。


「桜子先生! これ、うちの部に欲しい!」

「お前、これがいくらするか知って言っていのか?」


 桜子先生はあきれ顔でため息をつく。

 車一台分くらいかな? つばさは少し考えたあと、答えた。


「五百万くらい?」

「あほか、一桁違うわ。それも高い方にな」

「五千万くらいですか……」

「ああ、それくらいらしいぞ。それでも昔は一台、二十億くらいしたらしいぞ。ウィングスーツが進化したから、風量が少なくてすみ、だいぶ安くなっているんだぞ」


 先生の話を聞いて、優香子は何やら考え込んでいた。

 何を考えているのだろうか? しかし、さすがのつばさでも、学園がこんな金額を出せるはずがないと言うことが分かり、諦めるしかなかった。


「しかし、こんな高額な物が四台もあるなんて、浅間山高校ってお金持ちなんですね」

「これはOBの寄付金で購入したのです。今年の四月にできた物なのですよ。おかげで新入部員の練習がはかどります。天候に左右されないのも大きいですし……午後からはこのシミュレーターを使って練習しますので楽しみにしておいてください」


 風閒部長は、嬉しそうに説明を始める。

 それを聞きながら、つばさは、これならば優香子も一緒に練習ができると羨ましく思った。

 その後、そのほか、筋トレ器具など陸上練習施設を一通り説明終え。その頃にはお昼の時間になっていた。


「ねえ、なんか思ったより、設備がすごくない?」


 なんの根拠なく、浅間山高校を彩珠学園より少し設備が良いくらいだと思っていたつばさは、驚きで興奮している。はっきり言って今からでも、この学校に転校したいと思うほどに。

 そんなつばさの気持ちを読んだ千尋が釘を刺してきた。


「つーちゃん、ここに中等部はないからね」

「分かってる。それに、試験なんてもう受けたくないよ」


 千尋の一言で最新設備を持つ浅間山高校を諦めたつばさは、ため息をつきながらお昼ご飯を食べていた。

 そして、少しして、あらためてその設備の凄さにつばさはため息を付く。


「しかし、本当にスゴイ設備だよね。流石、全国三位の高校だね」

「そうね、しかもシミュレーターは今年の四月に出来たところって言っていたから、今年はもっと上に行くんじゃないの?」


 明太パスタを食べている千尋が答える。どうやら、大きな丸眼鏡型のディバイスで、設備の撮影をしていたらしく、その動画を確認しながら、パスタをくるくるとフォークに巻き付けている。千尋は全く同じような設備は出来ないにしても、なにか使える物はないか考えているようだった。

 そんな千尋の前の席でモニカは醤油ラーメンとカツ丼を交互に食べながら、ホッとしていた。

「でも、なんだか、いい人みたいじゃない。車の中で、喧嘩を売ったって聞いたから、ビクビクしていたのに……おびえて損したわヨ」


 そんなモニカの横で優香子はミニオムライスを食べながら、なにか思い出した。


「そう言えば、食事をしながらミーティングをするって言っていませんでしたっけ?」

「言ってたね。だから食べ終わった人も、そのまま座って待ってるんだね」


 つばさはそう言って食堂内を見回した。

 浅間山高校の部員は慣れた自分達の食堂で、さっさと食事を終えた後、テーブルに着いたまま、談笑して何かを待っていた。

 そうすると、先ほどの竹本先生と風間部長が前に出てくる。


「はーい、注目。みんなそろっているね。知っている人もいると思いますが、今回の合宿は、わざわざ埼玉から彩珠学園のフライングレース部の皆さんが来てくれました。みんな、拍手!」


 風間部長の言葉に、注目と拍手が起こる。


「全国的にもフライングレース部は少ないですから、これを機に交流を深めましょう」


 和やかな雰囲気で紹介してくれる風間部長とは裏腹に、ナタリーが睨んでいるのにつばさは気がついた。

 そんな視線を感じながら、五、六十人いる部員の前で、つばさ達は一人一人挨拶した。

 その後、二日間のスケジュールが発表された。それによれば、今日の午後からシミュレーターで個別の練習を行いながら、データーを取り、それから実際にスピード種目を行う。夕方はそれを元に勉強会を行うそうだ。

 そして、明日はテクニカルとファイトの二種目を行うという流れだった。


「それでは、各自練習」


 風間部長の言葉で、個別練習が始まる。

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