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フライング☆スカイ☆ハイ! ~フライングレースに青春をかける少女たち~  作者: 三原みぱぱ


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第38話

 つばさは桜子先生に訊ねた。


「ところで、桜子先生。さっき言っていた創部の条件って何ですか?」

「ああ、それはお前達が言っていた実績だよ。今度の浅間山高校との合宿で、結果を出さなきゃいけなくなった」

「合宿で結果って、練習試合のことですか」

「まあ、そうなるな」


 つばさは興奮気味に桜子先生に抗議する。


「何でですか。あれは部員をそろえるか、実績を作るかのどちらかの話じゃないですか。モニカさんが入部をしてくれて、部員は揃ったんですから、実績なくても創部できるはずですよね」

「それがな。他の先生は空野の話で、創部に反対しなかったが、教頭だけが頑なに反対してな。あまりにも頭が固かったんで、ついつい売り言葉に買い言葉でな……すまん」


 そう言って、桜子先生は手を合わせて頭を下げた。

 これが、桜子先生に会ったばかりの頃なら、きっとつばさたちも文句を言ったはずだった。しかし、桜子先生がフライングレース部の為に頑張ってくれたのは、つばさ達にも十分に伝わっている。そして、嫌みな教頭先生に噛みついて口を滑らせたのも、目に浮かぶようだった。そして、噛みついてくれたことが少し嬉しくもある。

 ともあれ、創部は出来たのだ。ここまでが桜子先生のおかげなら、それを認知させるのは、自分たち部員の役目だと、つばさは考えることにした。


「大丈夫です! あとはボクたちが頑張れば良いだけですから、任せてください」


 こうして、条件付きではあるが、創部は認められた。これで、正式に部としてフライト練習が出来ることになる。

 早速、翌日からつばさと千尋は練習試合対策の練習、優香子はウィングスーツでのフライトが出来るようにスカイダイビングのフライト数を稼ぐべく練習に励んだ。ただ、その間、モニカはスカイダイビングのインストラクターをしていたため、つばさたちの練習に参加することはなかった。


~*~*~


 そして、あっという間に合宿当日がやってきたのだった。

 荷物の最終チェックをしているつばさに、つばさの父はオロオロしながら話しかけてくる。


「なあ、本当に行くのか?」

「行くよ」

「お父さんもついて行かなくて良いのか?」

「大丈夫だって、桜子先生が車を出してくれるって言うから……じゃあ、行ってくるね」

「お父さんを置いていかないでくれ~」

「気をつけて、楽しんでらっしゃい」


 子離れが出来ない父親を押さえて、母親はつばさを送り出した。

 つばさが家を出ると、千尋もちょうど家を出るところだったらしく、道路でバッタリと会う。


「楽しみだね」

「そうだね」


 練習試合とは言え、生まれて初めてのフライングレース。緊張もあるけれど喜びの方が大きい。

 しかもそれは、つばさたち彩珠学園フライングレース部にとって、大事なはじめの一歩。さらには、この合宿中の試合で教頭が納得するような実績を出さなければ、廃部になってしまうかもしれない大事な合宿。

 そんな、大きな荷物とともに、大きな期待と不安を抱えたつばさ達は、たいした話しもせず朝日差す電車に揺られて、学校に向かう。

 そして、二人が学校に着くと、ハンググライダー部でも使っているマイクロバスが待っていた。

 そこには思いがけない人を見かけて、つばさは叫んだ。


「元木君! なんでここに?」


 そう、そこには千尋とのタンデムフライトに恐怖して、入部をやめてしまった野球少年の元木君が立っていた。

 練習前なのかユニフォームを着て、スポーツバックを持っている。


「空野、千尋、おはよう。今日、お前たちが試合に行くって聞いたんだけど、本当か?」

「本当だよ。これから群馬に行くんだ」

「そうか。部員は揃ったんだな」


 元木は、嬉しそうにモニカと優香子を見て言った。

 そうして、元木はつばさと千尋にむき直した。


「力になれなくて、ごめんな。でも、俺、ふたりのことを応援しているから。試合、がんばれよ」

「元木君、もしかして、それを言うために待っていてくれたの?」

「まあな、これでも元部長だからな」


 元木は照れくさそうな表情で、冗談交じりにそう言った。

 つばさたちはこれから群馬まで行かなければならない。そのため、今は早朝。

 つまり、元木の練習までにはまだまだ時間があるにもかかわらず、つばさたちを力づけるためだけにやってきたのだ。

 つばさはそんな元木の気持ちに思わず抱きついた。

 女の子に抱きつかれたことなど無い元木は、何が起きたか分からず慌てた。


「お、おい。そ、空野。どうしたんだ」

「ありがとう、元木君。ボクたち頑張ってくるね」


 つばさは抱きついたことで、元木のユニフォームに洗濯しても落としきらない練習の汚れが染みこんでいることに気がついた。

 中学生になってから新しいユニフォームをもらったはずなのに、こんなになっていると言うことは、元木はあれから野球を頑張っているのだ。それが分かって、つばさは嬉しく思った。

 そんな元木君に負けずに頑張るよ、とつばさは勇気をもらった。


「ほら、つーちゃん、元木君が困ってるでしょう」


 そう言って千尋はつばさを元木から引き話すと、元木にゆっくりと拳を向ける。

 その拳に元木は自分の拳をコンと当てた。


「飛鳥も頑張れよ」

「元木君も、今日試合でしょう。頑張ってよ」

「おう、これから試合前の自主練行ってくるよ」


 元木はそう言って、手を振りながらグランドへと向かった。

 こうして元木と別れた。

 そうして二人は、なんだか慣れた感じのモニカとつばさ以上に緊張と興奮を隠せない優香子と一緒にバスに乗り込む。

 すると、桜子先生がつばさに声をかけた。


「部長、全員いるか点呼は終わったか? 忘れ物はないな?」

「先生、ハンググライダー部じゃないんだから、全員って言ったって四人しかいないから、大丈夫だよ」

「ああ、そうだったな。じゃあ、出発するぞ」

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