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フライング☆スカイ☆ハイ! ~フライングレースに青春をかける少女たち~  作者: 三原みぱぱ


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第36話

 そんな素敵な時間から少し経って、放課後、つばさたちがモニカを迎えに教室へ向かう途中、優香子のタブレットが鳴った。


「あ、モニカさんが逃げましたわ」

「え!? どういう事?」

「お兄ちゃんに、今日モニカさんと一緒に後藤先生のところに行くことを話していたのですわ。そうしたら、教室からさっさと出て行ったって、さっき、連絡が来たのですわ」

「えー!」


 あまりのことに声を上げるつばさ、一方千尋は即座に二人に指令を出した。


「ゆっこはそのままモニカさんのクラスまで行って、高田部長にモニカさんがどこに行ったか聞いてちょうだい。つーちゃんは校門に行ってモニカさんが来たら確保。わたしは駐輪場に行ってみるわ」


 つばさは千尋に言われるままに、外に飛び出して校門に向かった。

 この学校は部活をしている人がほとんどなので、この時間の校門はまばらにしか人がいない。

 小型電動バイクで通学しているモニカは必ず、校門前で一時停止するはずだ。

 つばさがモニカを見逃さないように、校門に近づく人達を凝視していること約十分。電動バイクに乗ったモニカが現れた。

 つばさはモニカが走らせる電動バイクの前に立ちはだかって叫んだ。


「モニカさん! 止まってください!」


 モニカの乗った電動バイクはタイヤを鳴らして急停止する。


「な、なにをするのヨ」

「なにをするって言うのは、ボクのセリフです。一緒に職員室に行く約束だったでしょう」


 つばさはそう言って、モニカの腕を引っ張った。

 それにモニカは反論する。


「メールは来たけど、約束してないヨ」

「何を言っているんですか。モニカさんが、来てくれないと練習試合に行けないんです。だから、一緒に職員室に来てください。じゃないと、チーちゃんに言って、お弁当代取り立てさせますよ」


 そう言って、つばさは強引にモニカを引っ張る。

 お弁当の話を出されては、モニカも諦めた。


「わかったわヨ。だから、そんなに引っ張らないでヨ」


 つばさに確保されたモニカは、駐輪場に電動バイクを押して戻ると、そこには千尋が鬼の形相で待っていた。


「モニカさん、何をしているんですか。約束を守ってください。練習試合までとはいえ、モニカさんはもう、フライングレース部の一員なんですからね」

「部員じゃないヨ。練習試合を手伝うだけだヨ」

「その練習試合に出るために、仮入部が必要なんです。なんで逃げたんですか?」

「いや~だって、職員室って苦手だし……」


 モニカの言葉に、つばさはうんうんと頷く。


「そりゃ~ボクだって、職員室は苦手ですけど、逃げなくても良いじゃ無いですか。一人じゃなくて、ボクたちも一緒なんですから」

「それは、安心材料じゃ無いんだけど……」


 と、モニカが何か言い訳をしようとするのを、千尋が遮る。


「さあ、話は後にして、後藤先生のところに行きましょう」


 千尋とモニカが話している間に、つばさは携帯電話を取り出して優香子にメールしていた。


『モニカさんを確保。職員室に行きます』


 こうして、つばさと千尋に両脇を抑えられたモニカが職員室の前に着いた時には、すでに優香子が来ている。

 しぶしぶと言った表情のモニカを連れて、つばさと千尋、優香子の三人が職員室に入ると桜子先生が待ち受けていた。


「おー、今日はちゃんと来たな。それで、橘はこいつらの部に入るって聞いたんだが本当か?」

「まあ、一日だけですが……」

「モニカさん、それについては説明しましたよね。今日から、モニカさんが痩せるまで、部に入ってくれるんですよね。早く痩せて、彼に……ムグムグ」


 それまでやる気のなさそうにふてくされていたモニカが、急に千尋の口を塞いだ。

 それを見て桜子先生はため息をついていた。


「橘……お前も騙されたのか? はぁ、それで……良いのか? 大丈夫か?」

「……まあ、練習試合だけですから、大丈夫でしょう」

「そうか、お前が納得しているなら良いんだ……ところで、空野、前から気になっていたのだが、なんでそんなにフライングレースにこだわるんだ?」


 桜子先生は真剣な瞳で尋ねて来た。それも、わざわざ他の先生がいる職員室で聞いて来ると言うことは、つばさの理由とその意思の強さを他の先生たちに聞かせるつもりなのだろう。

 つばさが千尋を見るとそっと目を閉じて、肯定の意志を伝えてきた。つばさの言葉に他の先生が味方になってくれることを千尋は期待していた。


「ボクはモニカ・シューティングスターのレースを見て、フライングレースを目指すようになったんです」

「それは前にも聞いたが、本当にそれだけか? それだったら、別に来年まで待てば良いんじゃ無いか?」


 恐らく、他の先生たちからもそういう意見が出ているのだろう。部員は中等部一年生だけの部活動。一年かけて準備をしても十分に間に合うと言う意見が出たのだろう。

 ひとつ息を吸い込むと、つばさは自分が焦る理由を吐き出した。

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