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フライング☆スカイ☆ハイ! ~フライングレースに青春をかける少女たち~  作者: 三原みぱぱ


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第27話

 一方、つばさの父親は、スカイダイビングスクールの事務局に行き、手続きを済ませる。

 父親は飛行機のパイロットのため、つばさ達の練習の時に、自らセスナを操縦する。その時に、スカイダイビングの上級クラスの生徒を一緒に乗せることで、つばさたちの練習費用を抑えているのだった。

 そして、二人になったところで千尋はつばさに訊ねた。


「それで、ゆっこは橘先生に任せるとして、わたしたちはどうする?」

「せっかくだから、ゆっこの初フライトを動画にしない? それを見れば、初めての人でも入りやすくない? それにゆっこもボクたちと一緒に飛べば、安心じゃないかな」


 あれからつばさなりに、なぜ新入部員が入らないか考えていた。たしかに、自分のウィングスーツでの演技自体はインパクトがあり、多くの人の興味を引いたのは明らかだった。でも逆に、初心者に敷居が高いイメージを植え付けたのではないだろうか? そうであれば、スカイダイビング初心者である優香子の動画を見れば、自分でも出来ると思って貰えるだろう。そう考えたつばさが出した結論だった。


「そうね。焦ってウィングスーツの練習をしてもしょうがないし、今日と明日はゆっこと同じようにスカイダイビングを楽しみましょうか」


 初めからその気だったのか、千尋はカメラの準備をしていた。

 今日は強い風もなく、雲もほとんどなく飛ぶのには良い日である。そんな中、セスナが帰ってくる音が、遠くから風に乗って聞こえて来た。日差しが強い滑走路にセスナが着陸して、ゆっくりと給油場へ向かっていく。

 つばさたちがのんびりと準備をしていると、一時間ほどして優香子が建物から出てきた。


「どうだった?」

「事前にお二人に教えていただいていたので、問題ありませんでしたわ」


 優香子は、そう言って百合の花のような笑顔をつばさたちに向けると、その後ろに橘先生が歩いてきていた。

 つばさはその姿を見つけると、元気な声であいさつをする。


「先生! おはようございます」


 まるでボディビルダーのような身体の大きな橘先生は、熊のような笑顔をつばさたちに見せると、身体に似合わない柔らかな物腰と声であいさつを返してくる。


「空野さん、飛鳥さん、おはようございます」

「今日はゆっこをお願いします」

「ああ、そのことなんだがな。お父さんはいるかい?」


 橘先生はちょっと困った顔をして頭を掻いた。


「お父さんなら、さっき着陸していましたから、もうすぐ帰ってくると思いますよ」

「そうか、じゃあ少し待っておこうかな?」

「どうかしたんですか?」

「いや~、高田さんのインストラクターの亊だけど、手違いで私の明日の予定が重なっていたんだよ」


 そう言って橘先生は申し訳なさそうに言った。

 橘先生の明日のインストラクターの予定が、ゆっこともう一人重なってしまったということだった。今日、優香子の三回のフライトは、橘先生と別のインストラクターの二人に支えられて飛ぶことになる。その三回を合格すれば、明日は橘先生とマンツーマンで空を飛ぶことになるのだが、その明日の橘先生の予定が埋まってしまっていると言う。

 つばさたちは父親がセスナを操縦することで、特別料金で受けさせてもらっている。だから普通の生徒が優先になるのは理解できるのだが、優香子が全く知らない先生と二人で飛ぶのは大丈夫だろうかと、つばさは心配になる。


 その話を聞いていた優香子は当然、不安そうな顔をしていた。

 当事者である優香子が目の前にいるのだが、この場の保護者がつばさの父親なので、詳しくは父親と相談が必要である。

 つばさたちが待っていると、父親がやってきて、橘先生は状況を説明した。


「まあ、しょうがないですね。私たちはイレギュラーですから、正規の生徒さんを優先してください」

「ありがとうございます。それで相談なのですが、今日は私と娘でインストラクターを務めさせていただきます。明日、ソロインストラクターで飛べるようになっていれば、そのまま娘がインストラクターでどうでしょうか?」


 つばさはこの時、橘先生に娘さんがいることもインストラクターをしていることも、初めて知った。

 この橘スカイダイビングスクールは、数名のインストラクターが在籍している。つばさたちは、橘先生以外のインストラクターに練習を見てもらっていたこともある。その中に橘先生の娘さんはいなかった。

 びっくりしているつばさを気にすることなく、父親は優香子に確認の意味で訊ねる。


「先生はこうおっしゃっているけど、高田さんは、どうかな?」


 橘先生の立場も分かり、代案も提示してもらったが、最終的に当事者である優香子が嫌だと言えば、明日のフライトは中止して、日を改めるしかないだろう。

 そんな中、優香子は橘先生の娘を見たことがなく、不安だった。しかし自分はつばさたちに比べて、かなり遅れている。いや、スタートラインにさえ立てていない。この状況を少しでも早く解消したいとも考えている。

 不安は残るが、勇気を出して優香子は答えた。


「お、お願いします。早く、つーちゃんたちと一緒に、ウィングスーツで飛べるようになりたいのです」


 まっすぐに答えた優香子を見て、橘先生がにっこりと笑った。


「高田さんは昔の空野さんみたいですね。それでは、そうさせていただきます。あ、ちょうど良かった。今日、サブインストラクターを務める娘を紹介しますね。おーい、モニカ、こっちに来なさい」

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