とある生徒の、普通とは少し違った日常。 1-14
「あ、あなたは一体何を仰っているのですか!?」
「うーん、どうも他国の方にはいまいち理解されていないようですね、犠牲者を最小限に収めるのも大人の役目、仕方ないのでとても簡単に説明しましょうか」
「僕邪神、家族も邪神、身内に神様女神様いる」
「ラグ君が言っている事に何一つ嘘はないのですが、まぁ神を目にしたことのない人間に信じろというのが無理があるのでしたっけ?」
「らしいな、俺もあちこち遊びに行って驚いたよ。神って崇める対象で、日常生活の中で見かける対象じゃないみたいだわ」
えっと、つまり、この国って日常生活の中に神様がいるってこと?
でも確かに、現にラグ君とイグ様という邪神が目の前にいるね。
「神は人間にとって都合の良い存在ではありません、人間が神にとって都合の良い存在なのです。この国が大きく発展し、食に困らないのは全て、邪神様を鎮め、この地にとどめるためです。邪神様にとってこの国の民は自分を祀り、食事を運んでくる生き物。この国に戦争を仕掛けるということは、食事の邪魔をするということ、食事の邪魔をされるのは誰だって嫌でしょう?」
「まぁ俺の父ちゃんなんだけどな」
「稀に食堂にも現れる」
……先生の言う邪神様って出歩くの?
「授業でクリーンを覚えましたね。あれは邪神様が人間に与えた魔法です、ゆえにEクラスまで落ちると資格なしとして魔法を取り上げられます」
「えっ」
「この学園は、貴族も平民も関係なく同じ立場で学べる場所、それは素晴らしいことですが、同時に危険な場所でもあります。身分を振りかざすなら自分も身分の前に屈しなければならないことを知りなさい。とりあえず」
にーっこり、と先生がとても良い笑顔を浮かべた。
両隣から「うわぁ」とドン引きしたような引きつれた声が聞こえます。
「私は公爵家が一つ、ディノッソ家の嫡男。公爵家と侯爵家、どちらが上か分かりますか?理解できたらさっさと跪いて授業妨害した謝罪を、あとそうですね、身分制度が大好きなら神様にも拝礼は必須でしょう、貴女、この国に来てから一度でも神々に挨拶しましたか?不敬ですよ」
もしかして先生、授業の邪魔されて怒ってる?
容赦なくボコボコにしてるけど……わぁ彼女真っ青だよ。
「先生、先生、ちょっと待った!」
「なんでしょう?」
「先生、ステイ! その人、もう戦意喪失してます! それ以上はオーバーキルになる!!」
「……そうですか? ではラグ君」
「こいつと取り巻きはEクラス、嫌なら退学、国外追放付き」
「俺らって優しぃ!」
え、どこが?
隣を見たら「まだ生きている」との回答、たくさんの疑問に答えてくれてありがとう!
でも回答が怖い!
「はい、これでこの話は終わりです。次、文句がある人はいますか?」
「…………ございません」
「結構。ああ、ちなみに私は魔法の実技を担当はしていますが、Sクラスの担任も受け持っているので、苦情がある方はそちらまでどうぞ、私が鍛えた生徒とともに返り討ちにしてさしあげます」
全然ステイしてない!
売られた喧嘩は確実に買っていくタイプの教師とかいいのだろうか。
他の先生は何をやっているのだろうか、止めてほしい。
……視線で姿を探したら、もう一人の先生を壁ドンして口説いていた。
もうだめだ。