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とある生徒の、普通とは少し違った日常。 1-6


 一口ではとても食べれそうにない大きな揚げ物が5つ、お椀に山盛りの白飯、具沢山のスープにサラダ、デザートには果物が盛り付けられたヨーグルト。

 え、これ最後の晩餐とかではなく、普通のお昼って本当?現実?夢とかじゃないの?

 実家で食べたこともなければ見たこともない料理ばかりが並んでいる。


「美味しそう」

「だろ」

「これ全部無料?何かの奇跡?もしかして僕死んでる?」

「ははは、混乱してる。混乱してる」

「日替わりでこれってこれから先大丈夫か?」

「これ、全部食べていいの!?分けて食べるとかじゃなくて!?」

「もちろん、むしろ残すとペナルティーがあるよ、食べれそうになかったら俺らが食べてやるから、次回からおばちゃんに一言言えば調節してくれる」

「うわぁぁ」

 

 冒険者たちが語り続けていた理由が分かった。

 この食事は奇跡だ。奇跡の塊……。


「うぉ~、今日の肉は歯ごたえあるなぁ、味が中までしみ込んでてうめぇぇ」

「お代わりしてくる」

「ついでに白飯追加頼むわ!」

「うん」


 どうやら僕が料理に感動している間に寝坊助君は食べ終えたらしい、しかもお代わりをするらしい。

 僕も感動ばっかりしてないで食べなきゃ!!

 でもどう考えても食べきれないな、何せ家族全員が食べるのもギリギリな家だったから、具のないスープに固いパンが当たり前だった。


「ごめん、少し食べてもらっていいかな」

「うんいいよ。筋肉、唐揚げ二つぐらいもらってあげて」

「分かった」

「投げキッスしてパフェもらった」

「すげぇ」


 寝坊助君が何かよくわからないけど、豪華なデザートを持って戻ってきた。

 リーダーの子は僕のお皿から「唐揚げ」と呼ばれた揚げ物一つと、白いお米をとりわけ、寝坊助君にと押し付けた。


「うーんまだちょっと多い気がするけど、とりあえず食べてみて。最初からいきなり食べてお腹壊す子多いからね、無理はしなくていいよ」

「残ったら僕が全部食べてる」

「ありがとう、いただきます」


 僕はまず唐揚げに挑戦した。

 柔らかい、口に入れるとじゅわっと肉汁が広がり、噛むほどに味が出る。

 一緒に白飯を食べると最高だぜ!と筋肉君が言うので一緒に食べてみたら、言葉にならない悲鳴を上げる羽目になった。


 この食堂は危険だ。

 過去の自分が食べていたものを思い出すと惨めになる。

 もうあの食事には戻りたくない――学を修めていつか故郷に帰ろうと思っていたけど、やめた、絶対に帰らない、むしろこの国に永住する。

 

「やっぱり生徒会に申請して、初心者定食採用してもらおうよ、ラグがいつもいるわけじゃないし」

「食堂に常駐したい」


 ほわぁとした表情の寝坊助君、ラグ君という名前らしい。

 そしてデザートも僕のお皿から分けられた分もいつの間にか食べ終えている。


「ラグ、ピンクの髪が生徒会役員に絡んでたぞ、食堂で食べるなよ」

「別腹」


 ひゅんっ、と残像を残してラグ君が姿を消し、食堂の入り口付近で悲鳴が聞こえてすぐに静かになった。


「あの、ラグ君って何者なの?」

「学園を巡回している蛇は知ってるよね」

「うん」

「あの蛇の弟か甥っ子だったかなぁ?」

「とりあえず邪神の身内だよ、昔は平気で人前で人間食い荒らしてたけど、食堂でだけは辞めてくれって懇願したら通った」

「街中で人の上半身がいきなり消えたら彼の家族が元凶だよ、まぁルールを守っていればこちらに牙は向けないから」

「蛇が邪神?ラグ君も??」


 え、何それ怖い。


「あまり気にしなくて大丈夫だよ、悪いことしなければただの可愛い蛇だから。それよりこの後の予定だけど、君さえ良ければ寮の案内をしようかと思ってるんだけどどうかな」

「お願いします」

「じゃあ行こう、今日は部屋に戻るだけだろう?」

「はい」

「おうじゃあまた明日な!」

「この後どうする?」

「俺は孤児院に帰る」

「遊びに行っていい?久々にポーション作りたい」


 僕以外はすでに食べ終わっていたようだ。どこに遊びに行くかという話題で盛り上がっている。


「じゃあまた明日」

「うん、お先に」

「またなー!」

「お疲れ様」


 こうして僕は初めてできた友達と一緒に寮に戻り、設備を説明してもらいながら案内してもらってから自分の部屋に帰って行った。

 ハプニングだらけだったけど、楽しい一日だったな。

 明日は何があるのかな。


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