とある生徒の、普通とは少し違った日常。 1-3
「偉そうな人間、殺す!」
「見せしめ、見せしめ!」
「ああもう犠牲者出たんですかー、最短ですねぇ」
困ったように苦笑いしながら人混みをかき分けて現れたのは、先ほどの眼鏡の少年だった。
向かった先は掲示板がある廊下の先に広がる中庭、掲示板を確認することに必死で気付かなかったけど、憩いの場のようで綺麗に整えられている。
もっとも今は地面に頭をめり込ませた人間の上で小さな蛇が二匹、物騒なことを叫んでいて異様な雰囲気だ。
「殺してませんか?」
「……たぶん」
「血は出てないからセーフ」
自信がないのか目を逸らしながら答える二匹。
それよりもその埋まった人間を起こすか何かかけてあげた方がいいのではないだろうか、パンツ見えてる。
「うぅ……」
「ほら生きてる!」
「入学前からパンツお披露目、嫁の貰い手ゼロ確定」
人の心はないのだろうか。
ないよね、蛇だもの。
意識を取り戻したのか、黒髪少女が何とか自力で地面から顔を上げた。
ちなみに少年は二匹の蛇を両手で大事そうに抱え、助けようとする気配は一切ない。
「あ、起きました?」
「なに見てるのよ!変態!痴漢!強姦魔!」
「こいつEクラス」
「入学取り消しより人生取り消しコース」
何が起こっているのか分からない、混乱して周囲を見渡したら、青い顔で見ている者、日常の一部と言わんばかりに対して気にしない者、掲示板に自分の名前が見つけられなくて友達に探してくれと頼む者など、反応は様々だった。
「この私がEクラス!?ふざけんじゃないわよ!」
「ざまぁ!」
「ぷーくすくす」
煽りまくっているけど大丈夫なのだろうか。
怒りのあまり顔を真っ赤に染めた黒髪少女が、蛇に飛びかかろうとして地面に叩きつけられた。
「ったく、入学式もまだなのに問題起こしてるんじゃねぇよ」
「先生遅いですよー」
「お仕事してくださーい」
どうやら学園の教師らしい、知っているらしい生徒が笑いながら教師に声をかけている。
えっ、教師が生徒に手を挙げるとか大丈夫??
「俺たち治安守った」
「とても偉い、ほめたたえよ」
「いや問題大きくしている気がするんですが」
「本当の問題はこれからだ!」
「この女が家を通して抗議してから本当の闘いだ!」
教師は大きくため息を吐くと掲示板の前でやってきて、黒髪少女の名前に線を引いて「E」と書き加えた。
そして蛇のもとに戻ると少女の抗議に一切耳を貸さずそのまま連行していった。
「学園において生徒は平等、身分に差はない!」
「人間みんな俺たち以下!悪い子は俺らの餌!」
「はいはい、さすがに人食いは刺激が強すぎますからねー、食堂で何か食べてから巡回に戻りましょう」
「分かった」
「気が利くな、下僕にしてやろうか?」
「遠慮します」
「残念」
そんなこんなで嵐のように去っていった三人。
僕はただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。