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ドラゴンの日常 1-3

『長老?』

『……』


 長老の視線の先には小さなドラゴン、険しい表情にどうしたのかと問おうとした瞬間、長老の顔が崩れた。


「おやつはいるかの?」

「食う!」

「食べる!」


 どうやらデレデレするのを我慢していたようだ。

 目じりを下げて秘蔵の果物を差し出し、自らの爪で切り分けたりと至れり尽くせり。俺らすらあんな優しくしてもらったことないぞ。


「ん~~うまい!!」

「んまいな!」

「そうかそうか、もっと食べなさい」


 幸せそうなドラゴンたち。

 しかし長老は何かに気付いたらしく、すぐに真剣な眼差しに戻る。

 ようやく起き上がった冒険者たちはうわぁという表情をした後、一斉に走り出して長老とは別の懇意にしているドラゴンのもとに逃げ込んだ。


 ……

 俺は彼らがなぜあそこまで長老を警戒していたのか分かった気がした。

 彼らは俺たちが怖かったのではなく、自分たちの身を案じていたのだ。

 まさかこんな事態になると誰が思っただろうか。


「はーうまかった」

「小さいのに食べ応えあったんよ」


 けふーと満足げに息を吐きだす二人。

 食べ終えた所で周囲の惨状に気付いてほしい。


『動けない』

『ぐるる』


 小さなドラゴンが果実を食べ始めるや否や、彼を中心に爆発的に緑が広がり、何が起きているのか分からずに困惑している間に俺たちは植物のツタに絡めとられて動けなくなっていた。

 普通のツタのはずが噛んでも伸ばしてもちぎれない、ただやたらと伸縮性があり、伸ばした時に腕を引こうと努力したら余計に絡まってしまった。

 何この謎の進化を遂げた植物は!


「なんだ? 遊んでいるん?」

『違います!!』


 ダークエルフ君は何ともないみたいだ。

 さっきから暴れまわっている俺たちを見て不思議そうな顔をしている。


「涼ちゃん、力暴走してるんよ」

「わはは、果物が美味くて力溢れちまったな!」

「どうするん?これ、炎効かないやつよ」

「奥義を披露する!」

「おおー!」


 楽しそうですねお二人さん。

 長老はツタでもはや目しか見えないけど、デレデレなのが丸わかりだ。

 威厳はどこへ置いてきたのだろうか。


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