吾輩は傭兵である 1-9
レイドクエストが一転、温泉宿体験になった。
受付君が交渉し、料金はこの温泉を作った人物に請求することが決定。
漏れた話を聞く限り、どうもギルマスよりさらに上、冒険者ギルド統括がここの経営者みたいだ。そんなんあり?
「おぉ……」
脱衣所は清潔感があり、タオルは使い放題、石鹸もある。
棚には籠が置いてあり、中には服が畳まれている。
王侯貴族でもないのにこんな高級な体験してこれから先、大丈夫なのだろうか。
「凄いな……」
「お風呂上がりの牛乳って美味しいよね」
「普通の牛乳から魔王牛乳、珈琲にフルーツ、イチゴもあったぞ」
「まじかよ、神かよ、俺ここに住みたい」
「え、飯とかマジどうなんの?」
先輩たちも感動している。
吾輩も興奮しています。
早速服を脱ぎ、浴場に入るとそこには―――
「おぉ……」
広い浴槽に、立ち込める湯気、檜で出来た大きな桶と椅子、そして何よりも目を引くのが壁に掛けられた鏡。
「鏡だ、しかも大きい」
「これが鏡?初めて見た」
「すげぇな」
「あ、こっちはサウナ室だってさ」
「サウナってなんだ?」
「水シャワーって書いてある、サウナのあとに浴びるみたいだ」
「露天風呂まである」
「はぁ、天国かよ」
「うっひょお!! 気持ちいい!」
先輩たちが少年に戻ったようきキャッキャウフフと温泉施設を楽しんでいる。
これは委縮しているのがもったいない、吾輩も楽しむべし!
体を洗い終えると早速入浴。
最初は少し熱く感じたが慣れてくると丁度良い感じになる。
「はぁ~」
思わず声が出てしまうほど素晴らしいお湯加減です。
先輩たちはすでに温泉を満喫しており、各々好きなように寛いでいる。
「やっぱ温泉は最高だぜ」
「ほんとねぇ」
「おいお前ら大変だ!!」
股間を隠すこともしない全裸な先輩の一人が取り乱している。
「どうした?」
「なにがあった」
「ウォータースライダーってのがある」
「は?」
「オークが使用方法教えてくれたんだが、目茶目茶楽しい」
「ここ隠れ宿風温泉とか言ってるけど、隠れ娯楽施設っす! あの竹の衝立の向こう、温泉プールっすよ!」
温泉プールってなに、ウォータースライダーってなに!?
聞く相手はすでにいない、なぜなら皆そっちへ行ってしまったから。