吾輩は傭兵である 1-6
次の日、今度は薬草採取のお仕事をすることにしました。理由は簡単、受付嬢に相談したらこれがいいとオススメされたから。
ギルド内は相変わらず騒がしいけれど、ゴブリンキングが出たとかそういう類の話は今のところな――
「よっしゃぁぁ!! 緊急クエ来たぞぉお!!」
フラグゥゥ!!
「今度はなんすか!」
「とんかつだよ、とんかつ!」
「マジっすか!? おっちゃん、今日の夕食カレーで頼むわ!」
「俺も俺も!」
とんかつなんて魔物は知らないのだが、この地方特有の魔物だろうか?
あと何であんなにハイテンションなのだろう?
「よっしゃあ!」
「やったるぜ!」
周りの冒険者も何故か気合が入っています。……一体どんなクエストなんでしょう。
騒ぐ冒険者の間をすり抜け、掲示板の前に立ったのは凶暴受付嬢ではなく、ふんわりとした雰囲気を持つ癒し系男の娘、男女どころか老若男女問わずモテモテという噂です。
「はい今回の緊急クエ発表しますねぇ」
「ごくり」
「近くの村でオークの集落が発見されました~、片道数時間かかるため、今回は統括から転移アイテム使用許可が出ました。参加希望者はキチンと整列して受付までお願いしまぁす。……迷惑かけたらぶっ殺すぞ」
酒場のあちこちで歓喜の雄叫びがあがり、最後の一言が聞こえなかった。
え、最後物凄く低い声でドスが効いてた気がするんですけど……。
「慌てず騒がずだ、リーダー、リーダーはどこ!?」
「説明中に受付に移動した」
「さすリー」
「頼りになるっす~」
受付に向かうとそこにはたくさんの人が群がっていた。そして、そこには見覚えのある姿もある。言い直そう、ほぼ前回のゴブリン討伐メンバーだ。
あの時のメンバーは全員いるみたいだけど、見慣れない人もいる。
冒険者は基本自由だからね、どんなに居心地の良いギルドでも多少の出入りはある。
列に並んでいると待ち時間は意外と短く済み、クエスト参加手続きもすぐに済んだ。
クエスト内容確認してないけど、吾輩も参加して本当に大丈夫なのだろうか。
不安が残る。
「参加者はギルドの裏にある訓練所に集合ですよー、武器防具の手入れは万全ですかー? 自分の不手際で仲間に迷惑かけたら僕の黄金のナックルで一発殴っちゃいますからね!」
「「「「おおー!」」」」
怖い、男の娘怖い。
みんな何で平気なの?
慣れ?
慣れなの!?
とりあえず訓練所に行くか。
訓練所には十数組のパーティーがいた。もちろんソロの者もいるが、基本はパーティーで参加するようだ。
吾輩はボッチ……いえ、ソロです。
「はい皆さん集まりましたね。ではこれより転移魔法陣を起動します。準備できた人から出発してくださぁい!」
「「おお!」」
元気だなぁ。気合も十分。
吾輩も頑張ろう。