吾輩は傭兵である 1-4
「いやー、今回は楽勝でしたね」
「そうだな」
「いつも通りだな」
「だよなー」
吾輩は今ギルド内の酒場にいる。クエスト達成の祝杯だ。
クエストランクから考えると祝杯をあげてもおかしくはない、ただクエストが数分で終わってしまったため、微妙に納得できないものがある。
あと吾輩だけ何もしていないのでとても肩身が狭い。
「それでは乾杯!」
「「「「かんぱーい!」」」」
とりあえず飲まなきゃやってられないので、ジュースを注文してちびちび飲んでいる。
周りはテンションが高いまま酒盛りを続けており、時折思い出話に花を咲かせていた。
「それでその時のゴブリンの顔がまた傑作でさ!」
「あー、あの人受付嬢なのにめっちゃ強いもんな」
「いるはずのない現場にいて指揮を執った時は驚いた」
「その件についてはギルドマスターが直々に注意してましたよ」
「マジかよ、ギルド長つええ!」
「昔は冒険者だったしな」
「今は受付嬢だけど」
「私は今も現役ですよ?」
受付嬢の一言で場が静まり返る。
「え、なんで受付やってるんだ?」
「書類に記入した時に文字が綺麗だと褒められまして、ギルドマスターにスカウトされて受付嬢になりました」
冒険者は文字が書けても字が汚くて読めないこともあるからね、書けない者も多いから代筆するなら綺麗な文字なら仕事も捗るとギルマスは判断したようだ。
「俺もスカウトされたいから明日から頑張ろう」
「お前はその前に文字を覚えろよ!」
「わははは!」
「応援している」
和気あいあいとしている人たちを見ていると心が温まる。
吾輩も頑張ろう。
受付嬢がゴブリンキングを倒して数日経った。
ドラゴンがギルドに訪れ、バトルになりかけた受付嬢にギルマスが雷を落としたり、獅子の獣人が視察にきてギルマスが土下座したりと波乱万丈な日々を送りつつ、今日もギルドは人が溢れている。
そんなある日、事件は起きた。
吾輩は依頼ボードの前で悩んでいた。……どれにしようかな……。
吾輩が悩んでいるのは「護衛」「配達」「採取」「魔物の素材回収(剥ぎ取りあり)」である。
「んー……」
吾輩、正直言うと報酬が手に入れば何でもいいのだが、やはり刀が欲しい、護衛受注が失敗して以来、たいして稼げずまだ買えていない。
なのでお金を稼ぎたい。しかしあまり危ないこともしたくない。
掲示板前で悩むこと数分、ようやく一枚の依頼書を取り外した。
……これに決めた!
【配達:荷物の配達をお願いします。報酬額は銀貨1枚と銅貨2枚、仕事の内容は……】