吾輩は傭兵である 1-3
クエストランク:A
依頼成功率100%
依頼成功報酬:100,000ゴールド
備考:依頼達成時、素材は全てギルドの所有となり、売却は自由とする(ただし買取価格は相場より若干下回るものとする)
「えー、では本日の緊急依頼を発表します。今回あなた方に依頼するのは、ゴブリン討伐。場所は街の東にある洞窟内です。ゴブリンの数は100匹前後と予想されています。また、上位種の存在も確認されているので十分注意してください」
「はい」
「何か質問のある方は?」
「あの、その足元のその人は……」
「下僕です」
「はぁはぁ」
まるで朝礼で朝の挨拶をするがごとく発表された緊急依頼。
本日のってなんだろう、日常的にあるみたいな言い方……このギルド怖いよ。
吾輩たちは現在、街の東の外れの山の中に来ている。どうやらここの麓に例のゴブリンがいるらしい。
吾輩たちは受付嬢から受け取った簡易マップを確認しつつ作戦会議をしていた。
ちなみに受付嬢が熱く推していた作戦は「数で押せ」、もしかして脳筋なのだろうか。
「まずは前衛後衛を決めてから役割分担をするべきだ」
「そうだよ! 魔法は使えないけど俺盾役できるから! 俺を先頭にして後ろから支援してもらう感じでいこうぜ!」
「待ってください、私が身体強化をかけますので支援役は必要ありません!タコ殴りにすればいいと思うんです!」
「じゃあ後衛は背後を守ることに徹してもらおう」
「お任せを、今日のためにメイスを新調してきました!」
作戦ってなんだっけ。
話し合いに積極的に参加している人間の最押しが「力こそ正義」って感じなんだけど。
吾輩、美しくて繊細な刀に憧れているのだが、このギルドに腰を据えるなら趣旨替えした方がいいかもしれない。
だってみんな物騒。
とりあえず前衛40、後衛10と決めたので、それぞれ装備の確認をしている間に、吾輩は気配遮断を使い周囲を警戒することにした。
いや待って、ゴブリン相手なはずなのに参加人数多くない!?
そりゃ受付嬢も数で押せっていうわけだ!!
「さて、そろそろ出発しようか」
「了解!」
「はい!」
「はいっ!!」
元気いっぱいですね。
そういえば、ギルドマスターが「ギルドには色んな性格の人間が集まってくるから慣れておくように」と言っていた。
今まさにそんな気持ち。
そうこうしているうちにゴブリンの群れを見つけた。向こうはまだこちらに気づいていないようだ。
「あれがゴブリンです!」
受付嬢の言葉で各々武器を構える。受付嬢、なぜお前も構えているんだ。それ以前になぜいる。
「よし、突撃――!」
「あ、ちょっと!」
しかも号令まで飛ばしているんだけど!
お前司令官かよ!
受付のお仕事は!?
突っ込んでいった連中を追いかけるようにして吾輩も走り出す。
正直に言います、出遅れた。
後衛を追いかける形になってます、はぇぇぇええ!!
気が付いた時にはすでに乱戦が始まっており、吾輩が着いた頃には半分くらいは終わっていた。……うん、これはひどい。
前衛の人間はもう何が何だか分からない状態でとにかく殴ったり蹴ったり斬ったり。時々魔法らしきものが炸裂したりしているが……大丈夫かな? 後衛の方を見ると魔法使いの女が笑いながらメイスでゴブリンの頭をカチ割ってました。後衛ってなんだっけ?
吾輩があっけに取られながら眺めていると、急に目の前が真っ暗になった。……しまった!
「ギャーッハッハァ! 隙だらけだぞ新人!!」
頭上から声が聞こえたと思ったら、吾輩の背中を踏みつけながら着地したのはスキンヘッドの大男だった。こいつはヤバい。
「上位種だろうが関係ねぇ!勝てばいいのよ勝てば!」
大男がゴブリンと一騎打ちを始めた。なにこれすごい。世紀末覇者の暴力を見た気分。
だがよく見てみると、どうやらこの上位種というゴブリンは、他のゴブリンより二回り以上大きいだけで、それ以外は見た目に差異はないみたいだ。
周りの仲間も止めればいいのに、「流石リーダー!」とか「そこだ殴れ!」とか声援をかけています。どうやら雑魚は一掃した模様、吾輩、一匹も倒してない、っていうか戦闘開始から五分も経ってないよね?
「っしゃああ! 見たかオラア!」
「流石です、私惚れてしまいそうです!」
「うむ、素晴らしい一撃だった!」
なんかたいして苦戦もせずに倒しちゃったよ。
「受付嬢がゴブリンキングを討伐したぞー!」
「っち、今回も負けたか!」
「キングまでいたのかぁ、被害がなくてよかったよね~」
え、ゴブリンキングがいたんだよね?
焦らなくていいの?
受付嬢が倒したってなに?
驚いて動揺してる吾輩がおかしいの?
混乱する吾輩を置いて、一匹も逃すことなく戦いは終了。
ゴブリンはメイジ、アーチャーなどを含めて200匹以上いたそうです。
あちらは全滅、こちらは死傷者なしどころか無傷の勝利。強すぎる。