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呪われ少女は祈り続ける 1-1

 私は生まれた時から誰にも望まれない女でした。

 煤のような灰色の髪、全身を覆う黒い不気味な模様。

 母は発狂し、父は私を乳母とともに塔に閉じ込めました。

 その乳母も私が十になる前に老衰で亡くなり、それからは本当に一人でした。

 一人ぼっちの塔の中で、私は祈り続けました。


「神様、どうかお願いします。私に力をお貸しください」


――美少年ならまだしも少女に興味はないかな。


 神は答えてくれました。

 でも内容が……生まれて初めてイラッとしたのを覚えています。


 しかし諦めるわけにはいきません。

 それから私は毎日、神に話しかけるようになりました。


「神様、私に力をお与え下さい」


――ごめん、今ゲームがいいところでさ。後にして。


 話しかければ答えてくれるのですが、返答が適当なのです。

 きっと神には人の心がないのでしょう、一人塔の上に閉じ込められている少女に対する態度が、これ!?


 いえ、わかっていますよ? 神にも都合があるのだと。

 でもですね、それでももう少し優しくしてくれてもいいじゃないですか!

 負けません。答えてくれるなら毎日話しかけます。


「神様、どうか私を助けてください」


――いやあ、ちょっと今忙しいんだよ、見守ってるカップルがいいところなんだ、後でな。


 声からして女性だとは思います。

 つまり正確には女神様。

 十一になる頃にはハッキリと確信しました。この女神様は男同士のカップルを覗き見るのが趣味、いいえ生き甲斐。

 そうわかった瞬間、私は泣きながら叫びました。


「なんでそんなに俗っぽいんですか!!」


――仕方ないだろう、好きなんだから。


 開き直りましたよこの女神様。

 私は仕方なく、女神様に自分の身の上を語り始めました。


「私、父親から捨てられてしまったんですよ?」


――あるあるよくある。


「可哀想だと思いませんか?」


――思わないね。ありふれてて同情すんの面倒。


 バッサリと切り捨てられたのを覚えています。

 そして次の日、私はまた女神様に問いかけました。


「ねえ神様、どうして私の願いを聞いてくれないのですか?」


――いや、そもそも話が出来る程度でなんで願い聞いてもらえると思ってんの?特別でも何でもないからな?


 言われてみれば確かにそうです。

 今まで誰も話しかけてくれたことなどなかったので、少し勘違いしていたようです。

 それから私は考えました。どうすれば神様の力を借りられるのかと。


「わかりました、では取引をしましょう」


――お前、何も持ってないだろ。取引材料ないじゃん。


 この女神、慈悲の欠片もない。

 しかしここで引き下がるわけにはいきません。

 私はなんとか取引を成立させようと言葉を続けます。


「私に力を貸して下さったら、貴方のことを愛します」


――いらねぇけど?


 即答されてしまいました。

 まさかこんなにもあっさり断られるとは……。

 私は必死に頭を回転させます。

 どうにかしてこの女神を味方につけなくてはなりません。

 考えているうちにその日は終了、翌日は推しが結婚式初夜らしく返答なしでした。

 二回目も三回目も同じやり取りを繰り返しましたが、一向に契約成立に至りません。

 四回目には女神の好みを聞き出しました。


「じゃあどんな展開がタイプですか?」


――冷酷、無慈悲、氷のなんちゃらって呼ばれる美形が愛を知って溺愛する展開が最近流行りかな。ああいうモテモテタイプがたった一人を愛するっていうのが好きなんだよ、愛されるでもいいけどさ。受けか攻めかで言うとどっちでも美味しいし、なんなら唯一というのを捨てて複数愛でも私は構わない。あとは追加要素として呪われてたりするのもありだと思う、それを愛でどうにかするのも王道だろぉ。それから――


 女神様の語りが滅茶苦茶長い。

 情報量が多すぎて何を言っているか半分も理解できないです。


「もういいです、ありがとうございます!」


――おいこら、話は最後まで聞け!


 こうして私は、毎日のように女神様と話し続けました。

 女神様との会話は楽しかったです。

 けれどそれも長く続きませんでした。

 ある日を境に、返事が返って来なくなったのです。何日経っても女神様の声は聞こえません。


「神様?ねえ……どうしてしまったんですか……!?」


 呼びかけても、答える人はいません。

 悲しくて寂しくて涙が出ました。これが、当たり前の生活だったはずなのに。


 誰かに答えてもらえることが嬉しくて幸せだったことを初めて知りました。

 そして、ようやく気が付きました。

 私にとって女神様がとても大きな存在になっていたことに。

 このまま一生誰にも相手にされずに生きて死ぬと思っていたのが一転、突然話し相手が現れたことで依存してしまいました。だから、私は……

 私は―――。


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