夢の異世界転生 1-4
目が覚めたら夢オチだった。
なんていう事もなく、スケルトンのまま、俺って寝るんだ。
睡眠は必要なくても寝れるかどうかは別か、そうか。
骸骨たちの宴に巻き込まれてから一週間、俺は相変わらずダンジョンの掃除をしていた。
それなりに認められれば別の仕事をやらせてもらえるみたいだけど、俺は生まれたばかりのスケルトン、やらせてもらえる仕事はこれだけだ。
「ふぅ、こんなもんかな」
綺麗になった階段を見て満足していると、ガチャリと音を立てて軽鎧を装備した冒険者が上から降りてきた。
「あ、ここ掃除中か、悪い」
軽く謝ってもと来た道を戻っていく。
このダンジョンで学んだこと、利用する冒険者はみんな礼儀正しい、たまに粗暴なタイプも来るけど、掃除の邪魔などは絶対にしない。
ダンジョンには不思議なルールがあり、それを破ってしまうと冒険者のランクが落ちたりして大変なことになるらしい。……なにそれ怖い。
そしてもう一つ学んだことがある。それは、ダンジョン内で宝箱を見つけても勝手に開けてはいけないということだ。
何故なら、あれは冒険者寄せアイテムであり、俺たち魔物のためにある訳ではない。ちょっと前に好奇心から開けようとしてめっちゃ怒られた。
……あれは怖かった。
「これどうかな、スケルトンクッキー」
「カタカター!」
「わはは、そうだ、我らの顔をしているんだぞ!」
王様は今日はクッキー製作に励んでいる。訪れた冒険者に配る用だとか、サービス精神旺盛だなぁ。
その隣ではスカルバード達が天井磨きをしている。
このフロアは骸骨と鳥の楽園になっていた。骸骨が王様なのは変わらずとも平和である。
ちなみに、冒険者が挨拶をして通り過ぎていくが、これを襲撃すると厳しい罰が待っているらしい、ダンジョンの魔物なのに戦わなくていいのかという疑問は先輩スケルトンが答えてくれた。
戦闘に参加出来るのは生まれながらのスケルトンのみ、前世が人間の場合はダンジョンの整理整頓、清掃作業が主な仕事。
つまり俺はチート無双とは無縁ということだ。
いいんだけど、戦い怖いし、剣重くて持てなかったし。
素材をドロップするスケルトンもいるがレア度が高い上に弱く、初心者向けのスケルトンなので需要がなく、誰も狙わない。
冒険者が欲しいのは彼らが持っている隠しおやつだ!
えぇぇ、そっちかよ。冒険者らしく素材や魔石狙おう?
ちなみにスケルトンが倒した場合、出るおやつは日替わり。
なぜなら王様が作るおやつがいつも同じとは限らないからだ。
毎日お酒を飲み、おつまみを食べて楽しそうにしているスケルトンの王。とても自由人。
それでもちゃんとボスを務めているのは凄いと思う。