夢の異世界転生 1-2
しばらく歩くと大きな扉の前に着いた。
どう見てもボス部屋ですよね?ここに入るんですかね? 中に入るとそこは玉座の間だった。
部屋の奥にある椅子には王冠を被った王様らしき人がいる。
あれが魔王だろうか? いや、まだ決めつけるのは早い。
もしかしたらあの人が四天王かもしれないし。
他にも魔族っぽい奴らがたくさんいる。
みんな強そうだ。
うわぁ、俺めっちゃ場違い感ある。
というかこの中に放り込まれたのって、俺の事殺すつもりなのかな?
カラカラカラカラ音がするので、音の発生源を探したら王冠を被った王様っぽいのが元だった。
いや、この人も立派な骸骨ですやん! 骸骨の王(仮)はコップを持ち上げると、周囲にいた魔族と乾杯をし、またカラカラと笑っている。とても上機嫌ですね。
「おい」
「はい?」
「お前だ、そこのスケルトンだ」
まさかのご指名入りましたー! 俺、スケルトンだけど生きてますよ?
「貴様、名はなんと言うのだ?」
「名前?ありませんよ?」
「ほら、名前なんてないのが普通だってー!」
何がおかしいのか、魔族と一緒にカラカラケラケラ笑う骸骨の王。
これあれだ。ただの酔っぱらい……。
「じゃあ、俺が名前やるよ!」
「いや、結構で……」
「お前の名前はスケルトンだ!」
「そのままかよ!」
俺の心の声が漏れたかと思ったら、王の横にいた魔族のセリフだった。
王の肩をバンバン叩きながら涙目になって笑っている。
もしやこいつら、全員笑い上戸だな。
「では宴を始めるぞ!!」
「「「「おぉー!!!」」」」
始めるもなにも、お前らずっと飲んでるだろ!!
「あ、俺もう死んでるから飲めないのか……」
「……」
「「アハハハハッ!!!」」
いや、笑ってる場合かよ!……というツッコミを飲み込んで、俺は骸骨達の宴会に付き合う事にした。
骸骨達はとても陽気だった。
一発芸をしたり、肩を組んで歌ったり、踊って遊んでいる。
そして何より驚いたのは、骸骨達が皆元は近くに住んでいた人間だったということだ。
疫病が発生し、王都に見捨てられたまま次々と人が死んでいく中、発生したスタンピード。
ここで全て終わりだと思った。そうカタカタと骨を鳴らしながら語る骸骨、なんで俺、言葉が分かるんだろう、同じ種族だから?
暮らしていた村に街になだれ込む大量の魔物。
それを率いていたのが王座にいる王。
王の指示のもと、魔物は疫病で死んだ者、もう助からない者を回収し、ダンジョンへと運び込んだということだ。
そして何の力もないただの人間から魔物に華麗に転生、仲間と楽しく日々を過ごしているらしい。
しかも隔離されているのを利用して街は王の主が乗っ取り、このダンジョンを中心とした一大迷宮都市として生まれ変わったそうだ。
俺たちスケルトンは弱っちぃものの、手先が器用な方なので挑戦者がいない時などはダンジョンの掃除から始まり、街の清掃、演劇場での発表会、ギルドで雑用受注、まぁとにかく忙しいらしい。なにそれ。
ちなみに一番人気は石を製造するカトブレパス、軽くて扱いやすい石が住民の皆さんに大人気。
忙しすぎてダンジョンで戦う暇がないんだって。
俺はもうどこからツッコミを入れていいか分からないや。
とりあえず、骸骨達は毎日楽しそうに過ごしているようだ。
そしてこの王様はラスボスじゃないという追加情報を教えられた。
王様はスケルトンを統べるリッチであり、このフロアのボスだそうです、そしてここはボス部屋だって、マジか。
ダンジョンボスは最下層で冒険者が挑戦しに来るのを指折り待っていたりはせず、趣味のぬいぐるみ製作に精を出しているって本当?
冗談じゃなく?
最下層に辿り着くとそのぬいぐるみをもらえる?それ誰得情報?
骸骨達はそんな話をしながらも、ちゃんとボスに忠誠を誓っているらしく、とても礼儀正しい。
そんな平和な宴を咎めるようにボス部屋の扉が開かれ冒険者パーティーが飛び込んできた。