聖女を倒そう! 1-4
ゴウッ!!! 凄まじい風圧に吹き飛ばされそうになる。
しかしそれをどうにか堪え、目を細めて様子を見る。
やがて光が収まるとそこには、剣を祭壇に向かって掲げるおっさんの姿があった。その姿を見た瞬間、本能的に理解した。
彼には絶対に勝てない、と。
「どうです? 相手が神聖属性でも攻撃が通るように、限界まで神聖属性高めておきました!」
「壊れる前にメンテナンスするんよ、技術者が見つからなかったらギルドに依頼するの!」
「ちなみに強化も出来ます、素材は持ち込みも可能で……。あっ、こちら勇者ごっこに付き合ってもらった特典です。どうぞ」
「聖なる盾か」
「陛下、この腕輪、魔力を込めるとシールドが発生します」
「私が考案した特別仕様です!」
「込める属性を合わせれば吸収、反属性なら反射!」
「カッコイイですよね!!」
キャッキャウフフしながら入手した装備の確認をする集団、元々強そうだったのが、装備をすることで強さが跳ね上がったのが分かった。
魔法使いは見つからないように息を殺すのが精一杯、俺は意識を保つのもやっと、俺の後ろで警戒する戦士は脂汗が止まらないようだ。
「こっちは演出ミスのお詫びです」
「緊急救援セットと上級ポーション、あとダンジョンで一回だけ使える帰還石!」
「あとこちらもどうぞ、ギルドの食堂で使える割引券です」
「助かる。……帰るぞ」
おっさんがそう言うと後ろに控えていた仲間たちが一斉に敬礼をした。
「御意」
おっさんが踵を返して出口に向かうと、それに続くように他の連中も出て行く。
「楽しかった!」
「またやりたいですねー」
「せっかく飾り付けもしたのですから、ちょっと誰か誘ってみましょう」
ダークエルフと白い鎧、小さな豹も楽し気に笑いながら部屋を後にした。
完全に誰もいなくなったことを確認すると、張り詰められていた緊張が一気に解けていく。
……怖かった。
マジで終わったと思ったわ。
はぁぁぁぁ……。大きくため息をつく。安心したら力が抜けたわ。
おっさんたちが出て行ってから暫くすると、僧侶が立ち上がってゆっくりと歩きだした。
「……これは、神の炎です。あぁ、生きている間にこの目で見られるなんて」
祭壇前に立った僧侶が見つめる先には豹が灯した蝋燭の光。
「神の慈悲に感謝を、どうか我らの旅路を照らし給え」
僧侶の祈りに応じるように蝋燭の炎がひと際強く燃え上がったかと思うと蝋燭から離れ、祭壇の上に集まり業火となった。
「僧侶っ!!」
「みゃぁん」
震える体に鞭打って立ち上がろうとした刹那、炎が小さな豹の形をとり、僧侶の額に口づけを落として空気に溶けていった。
「感謝します。このご恩は必ず」
炎が消え、振り返った僧侶は全身が淡く光を放っていた。
額には一枚の花びらの模様。
聖女とは本来彼女のような存在を言うのだろう、神の加護をその身に受けた僧侶が歩き出す。
俺たちはその背中を追いかけるようにして部屋の外へ出た。