聖女を倒そう! 1-1
私は聖女、聖なる力でこの世界を救うの。
そして誰よりも幸せになるのよ。
「その為に邪魔な貴方達は始末しないと」
「お断りします!」
「私達は負けません!」
そう言って二人は私に向かって来たわ。
本当に鬱陶しい! 私は聖剣を振るい二人を切り裂いた。
「無駄です。その程度の力では私には勝てない」
「そんな……」
「ここまで強いなんて……」
「さようなら、勇者と賢者のなり損ないさん」
私は二人にトドメを刺した。
これで邪魔者は居なくなった。
まずは故郷を浄化し、私を馬鹿にした連中を神の許に送ってから、世界を救済する旅に出よう。
――――
「これはどういう事だ?」
俺は目の前で起きている光景を見て呟く。
凄まじい勢いで街が燃えているのだ。
炎に包まれた街の中を逃げ惑う人々の姿が見える。
何があったんだ? とりあえず俺は近くにいた兵士に声をかける。
「おい、一体どうなってやがる!?」
「分かりません!突然住人が暴れ始めたのです!」
「チッ……面倒な事になってきたぜ」
恐らくこの街の住人は操られているんだろう。
洗脳系の魔法か?厄介な事をしてくれるぜ。
しかも暴れているのは人間だけじゃなかった。
魔物も混じっているみたいだし、もう滅茶苦茶だよ。
「とにかく原因を突き止めねえと不味いな」
「でもどうやって調べます?」
「そうだねー、こんな状況だと探すだけでも一苦労だよ」
俺達三人は途方に暮れていた。
するとその時、教会の方で歓声が上がった。
「なんだ?」
「とにかく行ってみよう」
急いで教会に向かうとそこには大勢の人が集まっていた。
一体何があるのかと思い近付くと、教会の前に立つ少女が光を放ちながら祈っていた。
「あれってまさか……」
「間違いないですね」
「うん、あの子は……」
「ああ、聖女様だ」
人々は口々に彼女の名前を口にしている。
やっぱりアイツだったか……。
一緒にいるはずのアイツらがいない、一体どこに。
「悪いけどちょっと通してくれないか?」
俺は人の波を押し分けて前に出る。
流石に全員止める事は出来ず、何とか最前列まで辿り着く事が出来た。
「どうしてアイツらは居ないんだ?」
確かに聖女の近くに居るはずだろ?
疑問を感じながらも、俺は聖女の祈りを見守る事にした。
しばらくすると空が輝き始め、巨大な光の玉が現れた。
そして次の瞬間、人々の上に降り注ぎ始めたのだ。
「かみさま…」
誰かがポツリと呟いたかと思うと、光が人々の胸に吸い込まれるように雨となって降り注いだ。
「――シールド!!」
魔法使いが呪文を唱えると同時に光が弾き飛ばされる。
「なによ、これ!!」
魔法使いが悲鳴を上げる。
しかしそんな事で止むわけもなく、次々と降り注ぐ光。
教会に助けを求めて訪れた人々は全て胸から血を流して倒れている。
どう考えても助かるとは思えない状況だが、それでも諦めずに必死に抵抗する魔法使い。
「絶対に止めてみせるわ!!アンタ達も手伝いなさい!」
「分かった!」
僧侶が杖を構え、戦士は盾を構える。
俺も戦闘準備をしていつでも動けるように身構えた。
それから数分後、ようやく光が収まり始める。
終わったのか?そう思った時、上空から声が聞こえてきた。
「足元がお留守ですよ」
場違いな明るい声。
視線を向けようとした一瞬後、俺たちは足元にぽかりと開いた穴に落ちていった。
「はい、おしまい。ふふ、これで『故郷を滅ぼされた哀れな聖女』の出来上がり! あは、あははははは!!」
楽しそうな笑い声が響く。
地面に空いた大きな穴を見ながら、聖女が高らかに笑った。
「さようなら皆さん。あなた達の分まで幸せになりますね」
こうして聖女によって一つの街が滅ぼされた。
ヒドインを書こうとして失敗した例。
あれぇ?