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ゴブリン転生 1-9


 仕事を終えた俺らはリザードマンの所に行き、今日一日の報告をする。

 リザードマンの彼は、最近仲間が増えたと楽しそうに言っていた。

 話を聞いてみるとドラゴニュートが3人増えたとのこと。どうやらネヴォラと友人がダンジョンに行ってその時に仲間になったらしい、え、どういうこと?


 詳しく聞いてみると、何でもネヴォラが菜園の事を教え、興味を持ったドラゴニュートを誘った所、全員釣れてしまったそうだ。

 何やってんのネヴォラ!そしてドラゴニュートさんたちもネヴォラの友達に釣られて来るなよ!と思わずツッコミを入れたら、勧誘は勧誘でも脅しに近いらしい。


「来るよな?」

「来ないなら分るよな?」

「ばーんです。って言われた。幼児怖い」

「……そ、そうか」


 俺だったら泣いて逃げるわ。というかネヴォラの友人って一体何なんだ。


「ドラゴンの子供って噂があるけど?」

「まさか」

「さすがにそれは無いと思うぞ」

「そうだといいんだけど」


 しかし俺らの予想はあっさり裏切られることになるのだった。

 ある日、俺達が田んぼで作業をしていると突然稲穂を飛び越えて小さなドラゴンがやって来たのだ。黒い牛に乗って。


「「ぎゃぁあああああああああ!!」」


 ドラゴンの子供が遊びに来た。

 田んぼでロデオするために。なんでだよ!


 俺達は必死に止めようとしたが、勢いのついた牛を止めることなどできず、俺たちは見事に牛に吹っ飛ばされ空を舞った。


「「あ……」」


 短いゴブリン人生だった。そんな風に落下しながら思ったが、かすり傷一つなく田んぼに落ちた。

 なんで??


「助かった?」

「お、おう、お前も大丈夫か?」

「ああ」


 同僚と話しながら立ち上がる。泥で汚れはしたが、怪我はない。


「おいお前ら無事か!」


 ミノタウロスが慌てて走ってきた。

 俺たちを心配してきたようだが、お前のお仲間が吹っ飛ばしたせいで俺たちは田んぼに落ちましたとは言えない雰囲気。


「ああ……何とか」

「よかった」


 ミノタウロスがホッとしたように息をつく。その後ろには泥だらけのリザードマンもいた。彼も吹っ飛ばされたようだ。

 ご愁傷様です。


「ところであれは何だ?」


 同僚の指差す方を見ると、先ほどのドラゴンの子供と、その友達と思われる子たちが居た。

 子供だけで来たのか、危ないだろう。と思っていると、後ろの山から何か大きな影がやってきた。それは俺たちの仲間のドラゴン。だよね?


 ……いや待てデカすぎないか!? あの子たちの親じゃないのか!?


「あ、パパだ、パパーーー!!!!」

「総員厳戒態勢!!マジックバッグありったけもってこいやぁぁあ!!」


 ミノタウロスが顔色を変えて咆哮する。

 え、敵襲かと身構えたら何か違うっぽい、とにかくマジックバッグ、マジックバッグ、俺ら支給されてねぇよ!

 そんなことを考えているうちにドラゴンはこっちに向かってくる。でかすぎて山が動いているようにしか見えない。

 あれに踏まれたら死ぬ。確実に死ねる!


「ぎゃぁぁ、効果範囲広すぎる!!」


 誰かが叫び駆け出した。


「「ひぃいい、カボチャに殺される!」」

「新人は食堂にでも逃げとけ!奴らが帰ったら呼ぶ!」


 悲鳴を上げながらも走り続けていたらミノタウロスの声が聞こえ、俺らと一部の魔物が一斉に食堂に向かって走り出した。

 途中転ぶ奴が続出したがそれでも必死に走る。


「走れぇぇええええ!!!」 

 何とか逃げ切り食堂に転がり込む。中には誰もいない。


「ふぅ、とりあえず一安心……なのか」

「まだわかんね」


 しばらくその場で休んでいると、ようやく外が静かになった。


「よし行くか」

「行こう」

「うん」


 恐る恐る外へ出て、周囲を警戒するが何も出てこない。畑に戻ったら畑が作物で埋まっていた。

 え?

 なんじゃこれ?? 俺らは呆然とそれを眺めていた。ドラゴンはどこかに行ったみたいだけど……一体何が起こっているんだ?

 俺らが唖然として立ち尽くしている間に、どこから現れたのか大量のゴブリンやオークが集まり、どんどん収穫物を片付けていく。

 食堂に逃げていた魔物も戻ってきて慌てて一緒に片づけに入った。


「はぁ疲れたなぁ」

「今日のあれ、なんだったんだ?」

「さぁ?よくわからん」


 皆で笑いながら話していたら、またどこからともなく声が聞こえる。

 リザードマンが円陣を組んで話し合っている。話を聞いてみると穫物の事についてだった。

 なんでも今日一日で異常なくらいの豊作になったらしい。ネヴォラの友達が遊びに来た時以上豊作だ。

 そして俺たちはある一つの結論に至った。

 あのドラゴンが原因だと。

 あれが来た日から異常に野菜が穫れたらしい。

 俺たちは出た結論をミノタウロスと話していた菜園の持ち主であるゴブリンに話した。


 彼は一応調べてみると言ってくれた。

 そして数日後、結果が出た。やっぱり原因はあの黒い牛とドラゴンだった。

 何でもあのドラゴンは豊穣ドラゴンで、親子揃うと効果が倍、子供ドラゴンにおいては気分で効果が上下するらしく、今のところロデオで最大効果が発揮されるということらしい。

 ……それってつまり、豊作はドラゴンの気分次第ってことじゃないかな?俺らがここにいる間ずっと、この恐怖が付きまとうってことかよ。勘弁してくれよ。マジで。


 俺らはドラゴンへの恐怖からゴブリン菜園から出て別の場所を紹介してもらった。

 前の菜園に戻ろうかという意見もあったけど、あちらはむしろ実家だからドラゴンが近くなる。


 こうして俺らは働き甲斐のある職場から離れて新たな職場に向かった。

 主な仕事はキャンプ場の整備と好き勝手に植えられた果樹の管理、畑はない景観損ねちゃうから。っぐ、俺らの存在意義が!!


「……」

「……」


 新たな職場、新たな同僚。


「カタタ」


 スケルトンやゴーストが俺らを歓迎してくれている。

 わがまま言ってすみません、ドラゴン怖いけど死霊系はもっと怖いです。


END

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