ゴブリン転生 1-4
「白飯うめぇ」
「肉うまい!」
「野菜も美味しいよ」
「おかわりもあるぞ」
俺たちは今、食堂にいる。
この食堂、菜園で働いている魔物の要望で作られた食堂で料金は取られるけど格安、何せ野菜も米も自分たちで作っているからな。
肉は菜園に寄る冒険者が食堂を利用する代金代わりに納品したもの、何の肉が手に入るかはその日によって違うから、いつも同じものが食べれるとは限らない。
それでも、俺たちにとってはご馳走だ。
「こんな美味いもの初めて食った」
「ほんとになぁ」
「俺ら、焼いて食うだけだったもんな」
「自分たちで作るより、生野菜が美味かったのもある」
俺たちは和気あいあいと食事を楽しんだ。
「で、これからどうする?」
「畑か?」
「そう」
「正直、俺らが手伝っていた菜園とは規模が違う」
「豆畑の向こう側が全部田んぼとは思わなかったな」
豊かに実った一面の稲。
どうやって収穫するのかと思っていたら、カマキリの魔物と競うように風をまとったネヴォラが稲刈りをしていた。
カマキリの魔物は終わらない稲刈りのために、ダンジョンで群れごとスカウトしてきたらしい。
カマキリが稲刈り、回収をし、スライムたちがせっせと脱穀作業をしていた。
「あれ出来ると思うか?」
「無理じゃな」
「だよなー」
俺らは作られたゴブリン、畑仕事のために多少の筋力はあるけれど、魔力が設定されていなかった。
つまり魔法が使えないのだ。
そして、その事実を今日改めて思い知らされた。
「ネヴォラたち見てると分かるよなー」
「あれはレベル高い」
「ネヴォラは元から強かったんじゃろうな」
「そういえばネヴォラはいつからここに住んでるんだ?」
「100年くらいとこの間言ってたぜ!!」
「ひゃくねん!?」
隣の席で食事をしていた狐の獣人が教えてくれた。
ネヴォラは見た目5歳程度にしか見えない。
ダークエルフだから寿命が長いとしても、あまりにも若すぎる気がした。
「いやここ、今年できたばかりじゃろ」
「そこは驚いてやらないと、この冗談結構気に入っているみたいだからさ」
どうやら冗談だったらしい。
わははと笑いながら狐は食器片手に立ち去って行った。
「まあ、ネヴォラのことは置いといて」
「おう」
「畑か……」
「なあ」
「なんだ?」
「俺ら、畑耕せるか?」
「…………」
「無理じゃな」
「だよなぁ」
好きに畑を広げて良いとは言われていたが、未開拓の場所の土は固すぎた。
まずその辺の道具じゃ歯が立たない。
次に鍬、ミノタウロス専用でゴブリンの俺らじゃ扱えないオチがついた。
「まともに作業するには俺ら専用の農具を作るしかない、が」
「そもそも、わしらに農具を作る技術がない」
「それなんだよな……」
結局、俺たちは畑を広げることなく日々を過ごしている。