ゴブリン転生 1-3
軽く地面に戻ってきたネヴォラが示した場所には草があった。
草というか元気に伸びた野菜の葉が視界を遮ってここがどこだか正直わからない、ただでさえ俺らゴブリンで身長低いからな。
「これがどうしたんだ?」
「違うよ」
「おーー、呼んだか?」
「呼んだ!」
チーズの上からのっそりと顔を出したのは、麦わら帽子をかぶったミノタウロスだった。
「ミノちゃんこんにちゃ!」
「おうネヴォラ、今日も元気が有り余ってるな」
「今日は皆に畑のこと教えてる」
「おぉ、客人か。俺はミノタウルスのミノちゃんだ、よろしく頼むぜ」
「こちらこそよろしく」
「うむ」
「ところでネヴォラ、俺に用事とはなんだ?」
「皆が使えそうな畑ある?」
「ならあっちだなぁ」
ミノタウロスは背を向けて歩き始めたので、俺たちもついて行くことにした。
待って、凄く遠いです。もう10分ぐらい歩いてる!!
ネヴォラはちゃっかりミノタウロスの肩に乗って楽してるし!
「ここはカブ畑だ、甘いやつが採れるぞ」
「へぇ~」
「ネヴォラが食べることを基準にしているからな、だいたい甘い」
「えへへ」
照れ笑いするネヴォラ、可愛い。
「じゃあこっちは?」
じいさんが尋ねたのは、先ほどより狭い範囲に密集している野菜畑だ。
「それは大豆だな、ネヴォラの豆嫌いを徹底的に潰すために量産された」
「えっ!?」
「ネヴォラが嫌いなものが何かあるのか?」
「豆腐、納豆、きな粉、どれもこれもネヴォラは食わない」
「……そうなのか?」
「うん、好きじゃない」
意外すぎる……。
そもそもそれを使った料理食べたことないけどな。
あれ、ネヴォラって富豪の息子かなにか?いや、父親と慕ってるゴブリン俺らの同僚だな?
「この大豆で作ったパスタは素直に食べる。最初は凄い顔で食べていたらしいがな」
「それは……美味しいのか?」
「わからん。ちなみに俺は食わん、麺が細すぎて食べた気にならん」
「そうか……」
「ここが最後だ、ここにあるものはなんでも育てていい」
そこは、一面に広がる花畑。
様々な種類の花が咲き乱れ、蝶や蜂が舞っている。魔物だけど!
「綺麗な場所じゃのう」
「ああ、ここなら俺らも安心できる。だが……」
「どうした?」
「この花と蜂が集める蜜は人間に売れる。潰すのは少々惜しい」
「蜂蜜で作ったお酒、いいお値段!」
「なにぃ!?」
そんなもんまで作っていたとは……恐るべき世界!
いや、これ俺らが何か作るスペースないよね?
「まあ大丈夫じゃろ」
「そうだな、なんとかなるだろう」
「とりあえず手伝いしながら考えるか」
こうして、俺たちの菜園生活が始まった。