ゴブリン転生 1-2
「というわけで畑を増やしたいんだが」
「どういうわけじゃい」
翌日、俺はじいさんたちの事情を茶屋のゴブリンに説明し、相談を持ちかけた。
「ふむ……確かにあそこじゃ手狭だな」
「土地ならあるんだろ?」
「あるにはあるんだが……」
ゴブリンは腕を組み考え込んでしまった。
「何か問題でもあるのか?」
「作る野菜を増やすのは問題ない、引き受けるのも問題ない」
「じゃあ何が問題なんだ?」
「あそこの土地はなぁ、もう俺だけの菜園じゃないんだ。近所のドラゴンもいるし、その他の魔物も多くいる。肝が据わってないと出入りできねぇぞ」
そうか、ゴブリンだけの縄張りではなく、他の種族もいるのか。
「心配はいらぬ。諍いは起こさぬよ」
「ま、そういうことなら大丈夫か。でも勝手に入られるのは困るぞ、用心棒はドラゴンやミノタウロスがやってる」
「それは……どんな魔境なんだ」
「ま、頑張ってくれ」
こうして俺たちは土地を手に入れることに成功した。
「ここが新たな畑だ!」
「おー!」
「広いなぁ」
ゴブリンが言っていた通り、その土地の周辺には多くの魔物が住んでいた。
軽くすれ違っただけでもスライムや角兎、カエルがのんびり働いていた。
「ドラゴンの爺、新婚とかマジかー」
「若い嫁さん貰ったらしいな」
「おれらも頑張るかぁ」
「おう!」
何故かやる気に満ち溢れているゴブリンたち。
一体何を頑張るのだろう?
「まずは何を育てるか決めよう」
「芋が良い! たくさんできる」
「それはもう育ててるし、新種があるんよ」
ネヴォラが現れた!そのまま菜園の説明をしてくれた。
「こっちの畝はわたしの好きなトマト、そっちはナス、こっちのはピーマン、味改良されて甘いんよ」
「ほう、全部食べられるのか?」
「美味しい!」
ネヴォラが嬉しそうな顔をしている。
それを見てじいさんもニコニコだ。
「こりゃぁ楽しみじゃのう」
「あとはこっちの実はチーズになるんよ、こっちは……」
ネヴォラが指差す先には、見たことのない実が生い茂っている。
え、チーズって実になるものだっけ??
「これはなに?」
「これは葡萄だよ」
「ぶどう?」
葡萄って地面に生るものだっけ??
「あっちがパプリカ畑で、豆類は反対側」
「ふぅむ、色々あって迷うな」
「とりあえずは新しいものを育ててみるのも良いかもね」
「そうだな、ネヴォラ、おすすめはあるか?」
「うーんとね……」
ネヴォラは少し考えてから、その場で高くジャンプを繰り返した。
しかも途中で空気を足台にしての二段ジャンプ、さすがダークエルフ、身体能力が高い。
「あれはなんなんじゃ?」
「さあ?」
「ネヴォラが元気なのは分かる」
「うむ」
「来たよ!」