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君を愛することはない系 1-6


 昼休み終了10分前を告げる鐘が鳴る。


「じゃあまた放課後にね、真面目に授業をうけるのよ」

「はい!」


 食堂の前で別れてそれぞれの教室に向かう。

 うーん、やっぱり良いなぁ。

 このまま同じ教室に向かって同じ空気を吸いながら午後の授業を受けたい。

 だが残念なことに、彼女は2年、そして俺は1年生。同じ時間を過ごすことはできない。少なくとも今年はな!!


 教室に戻り、自分の席に着く。


「……ねぇ、あの人って……」

「……えぇ、平民と噂の彼よね?」

「悪意のある噂にしては相手が悪すぎないかしら」

「そうよね」

「その噂信じている人って桃色の方とその取り巻きだけでしょう?」

「あの人たち、大丈夫なのかしら、主に頭が」


 何やらヒソヒソ話している声が聞こえる。

 おい、聞こえてるぞ――っと、悪口だと思ったら噂の否定だった。


「それにしても、どうしてあんなに自信満々なのかしら?」

「私も思ったわ」

「確かにそうよね、『公爵家の令嬢であるアリスがこのクラスに入れないのはおかしい!』と職員室で叫んでいたのでしょう」

「アリスさんって確か男爵家、でしたわよね?」

「ええ、先生もそう諫めていたわ」

「でも納得しなかったのね」

「『私は公爵家の者です』って言うのはどうかと思うわ」

「それで通用すると思ってるのがすごいわね」

「本当よ」

「……もしかして、本気で言ってるのかしら」

「あのような者が同じ学園に通っているのは恐ろしいですわね、家を通して抗議いたしましょう」


 女生徒の声が氷のように冷たいです。

 俺も俺以外の男子生徒も息を殺してガクブルしています。


「ねぇ、貴方」

「ひぃっ!?」


 突然後ろから肩を叩かれ、情けない悲鳴をあげてしまった。

 振り向くとそこには先程食堂で見かけた桃色髪の少女がいた。

 ぎゃぁぁぁ出たぁぁ!俺は恐怖に震えながらも必死に取り繕った。


「な、何か用か?」

「貴方、このクラスの子じゃないわよね?」

「は?」

「どうしてこの教室にいるの?そんなにアリスと同じクラスになりたかったの?」


 電波怖い。お願いします、誰か助けてください!!俺は目で訴える。

 すると俺の願いが通じたのか、一人の生徒が少女を止めてくれた。


「お待ちなさい」

「……何?」

「その方はこのクラスです、教室を間違えているのは貴女の方よ」


 委員長かな!おさげだし、眼鏡かけてるし、真面目そうだし、きっと委員長に間違いない!


「嘘よ!」

「何故です?」

「だってこのクラスは平民の集まりなんでしょう!」

「それは違います」


 おぉ!委員長が断言してくれた! これで俺の平穏は守られたも同然だ!ありがとうございます!


「このクラスで学ぶ者に身分は関係ありません、求められるのはただ一つ、優秀な成績、それだけです」


 背筋を伸ばし、凛とした表情で告げる姿はとても頼もしかった。

 委員長みたいな子が我がツンデレ婚約者を支えてくれたら……よし、放課後にでも相談しよう。


「でも……」

「これ以上ここで騒ぎ立てるというのなら、処分を検討する」


 横から会話に入ってきたのは担任の教師だった。おお、権力者!


「……分かったわよ」


 少女は不機嫌そうにその場を去った。

 ふぅ、助かった。


「彼女のことは職員会議にかけて話し合う、さぁ授業を始めるぞ」


 教師の言葉を皮切りに教室内の空気がキリッと引き締まる。

 そんな中、俺は安堵のため息をつくのだった。


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