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君を愛することはない系 1-2


 学園に入ってまず驚いたことは生徒の多さだ。

 さすが貴族や王族が通っているだけあって敷地はかなり広いのだが、それでも溢れかえるほどの生徒がいる。


「っは!あれは!」

「?」


 そして門付近に一人、桃色の髪をした美少女がいた。

 桃色だ!ピンクだ!間違いない、あいつが例の危険人物に違いない。


「そんな、初めて、見た」

「ちょっとまさか惚れ――」

「あの女、パンをくわえたまま走ってるぞ!初めて見た!ねぇねぇ見た!?パンをくわえて走る女って実在したんだな!初めて見た!」

「落ち着きなさい!」


 怒られました。

 彼女はキョロキョロと誰かを探しているようだったが、パンをくわえた状態で周囲をギョロギョロ見回す異様さに誰も近づかない、目を合わせない。

 俺らは少し離れた場所からその様子を眺めていた。

 だって怖いもん。


「あれが伝説のパンをくわえた少女……実在したんだ」

「…………」


 無言で叩かれた。痛いです。

 だがしかし、彼女の美貌の前ではその痛みなど些細なものである。

 それにしても本当に綺麗な子だよなぁ。この子が将来のお嫁さんかぁ、でへへへへ。


「……」 


 再び無言で叩かれました。


「ごめんなさい」

「まったく」

「可愛いいなぁ」

「……ふん」


 婚約者は顔を逸らしてしまった。

 あれ?何か不味いことでも言っただろうか。…………あ!心の声漏れてた!


「違うんだよ、君は可愛いじゃなくて、綺麗なんだよね!指は百合のようだし、唇はぷるぷるで――」

「……ばか」

「…………」

「…………」

「…………」


 沈黙が流れる。

 うぅ、全体的に間違えた。

 でもこんなに恥ずかしそうにしている婚約者を見るのはいいな、ご褒美だろうか。

 俺は思わずニヤけてしまいそうになる顔を隠すため俯いた。


 すると、桃色髪の少女はこちらに気付いたのか足早に近づいてきた。


「やっと見つけたわ!私、貴方のこと探してたのよ!」

「……あ?」


 俺は婚約者のデレを堪能するのに忙しいんだ!邪魔しないでもらえませんかねぇ!


「行こう」

「ええ」


 俺たちは桃色髪の美少女を無視して学園の中へ入ろうとするが、それを阻むように目の前に立ち塞がった。


「ちょ、無視するなんて酷いじゃない!」

「……」


 何だこいつは。

 俺は婚約者と顔を見合わせる。


「知り合い?」

「知らないわよ」

「私はアリスよ。アリス・ロベルト」

「「……」」


 名前を聞いてもピンとこなかった俺たちは首を傾げる。

 この子は毒杯を一気飲みしたいのだろうか、俺たちのことを知った上で進路を塞ぎ、この口調って……大丈夫?親御さん呼ぶ?

 そんな俺たちの様子にイラついたのか、桃色髪の女は語気を強めながら口を開く。


「私は、貴方たちと同じクラスなのよ!」


 ……なんですって?

 あんなにテスト頑張ったのに、ランクの低いクラスに入ってしまったのか!?もしかして俺、テスト中寝てた?

 そんな馬鹿な……。


「そ、それでね、その……」

「ん?」

「同じクラスのよしみで、私と友達になってくれないかしら?」

「断る」

「え?」


 俺は即答した。

 だって面倒くさいし。

 それに「貴方たち」って時点で間違っている。

 俺は一年だが、婚約者は二年だ!ちくしょう、飛び級してやる!


「なんで!?」

「答える必要を感じない、どけ」

「っ!!」


 桃色髪の美少女は衝撃を受けたような表情で固まる。

 俺の言葉が効いたのだろう。

 ふっ、俺の勝ちだ!ざまぁ!!


「では改めて、お手をどうぞ、お姫様」

「ふふ、ありがとう」


 俺は手を差し出す。

 婚約者は嬉しそうに手を取ると微笑んだ。

 うん、やっぱり可愛い。

 こうして俺の学園生活は幕を開けた。


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