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第5話 『銀色の創作講座』第2回 「メインヒロインと物語の方向性」【 銀色の魔法はやさしい世界でできている ネタばれあり】

 貴方はなろう系作品を読んでいて、こう思ったことはないだろうか?

『またいつものか⋯⋯』

 と。


 基本なろう系は世界観はナーロッパで固定されているが、主人公やそのチート能力は千差万別である。

 しかしなぜか同じような読み口になる?


「なんでなんですか?」


 これはいくつも理由があると思うが最大の理由は作者が、

『主人公しか書かないから』

 だと思う。


「主人公しか書かない?」


 もちろんそれが悪いとは言えないし、基本主人公が出ていないシーンは読者からウケが悪くなる。


 読者の目的はスーパーチート主人公様の活躍を読んで自己投影して楽しむことだからだ。


「なろう系の楽しみ方の基本ですね」


 コレが出来る人はなろう系を楽しめるが、出来ない人はなろう系を詰まらないと言うだろう。

 ⋯⋯たぶん。


 そこで吾輩は『銀色』という物語を主人公アリシアだけで動かすのをやめたのだ。


「じゃあどうやって物語を動かすんですか?」


 それはヒロインの役目だ。

 吾輩が参考にしたのは『一休さん』だった。


「あのとんち小僧の?」


 そう、基本一休さんは自分からは何もしない主人公なんだ。

 でも新右衛門さんを始めとするサブキャラたちが頼ることで物語が動く。


 この『行動と動機』を分けようと考えた。


「分ける?」


 主人公のアリシアは行動できる力がある、しかし動機が無いから何もしない。

 ならアリシアになにかさせるのは、ヒロインの役目という事になる。


 さっき言ったなろう系作品で同じような読み口になる理由は、

『主人公が一人で独断即決して解決するを繰り返しがち』

 だからだ。


 だからドラマが生まれにくい。

 淡々と主人公の有能アピールだけが進む。

 本当は作品ごとの個性があるんだろうが最終的な感想が、


『主人公だけでいいな、この作品』

 になることが多いのだと思う。


 なろう系作品で主人公と互角以上の能力を持つキャラは基本居ないからな。

 だから主人公様というその世界の神様の天地創造を見ているだけ、みたいな印象が残りやすいのだ。


「たしかにどんなチート主人公でも結局何でもできるからそうなりますね」


 つまりこれを防ぐには作品のテーマは主人公ではなくて、第一ヒロイン『メインヒロイン』に託すと良い!


 ⋯⋯と吾輩は考えた。


 そしてより一層主人公のアリシアは何にもしないを徹底させて、物語を動かす役目をメインヒロインのお姫様『フィリス』に委ねたのだ。


 最初は主人公アリシアとメインヒロインフィリスの二人一組のバディ物という構想で物語を想定した。


 そこで最初に考えたフィリスの設定は、

『理想高いのに実力が無くて何も出来ないお飾りのお姫様』

 だった。


「わりとありがちですね」


 しかしよくよく考えると、こんな頼ってばかりの姫にアリシアは懐くのだろうか?

 という疑問が⋯⋯。


「うーん、たしかに」


 こうして主人公とメインヒロインの設定はセットで考え直した。


 その結果フィリスは十分に何か出来る実力ある人物になった。

 安易に人に頼らない自立心と行動力あるキャラになった。


 そのためやや不器用な人物になって、だからこそ「助けたい」とアリシアが思えるキャラとして作り直したのだ。


 そんな二人の出会いは一体どんななのだろうと、いろいろ想定した。

 初め考えていたのはフィリスの方から会いに来るパターンだった。

 だってアリシアは引きこもりで森から出ないから⋯⋯。


 フィリスは父を救うために薬を求めてアリシアのところに来る。

 それが初期案だった。


「どうしてそれで行かなかったんですか?」


 それは魔女の設定に「施しはしない、対価を要求する」としたせいなんだ。


 このせいでフィリスからアリシアに頼る出会い方だと二人に格差が出来てしまって、もう対等の関係にはなれないと思った。


 だから初めに頼るのはアリシアにしないといけないと考えたのだ。


 するとアリシアの方からフィリスに会いに行く必要が出来る。

 この引きこもりをどうやって外に出そう?

 ⋯⋯まあその辺は適当に理由をでっち上げてアリシアを外に出すことに成功した。


 当然初めての外の世界にアリシアは戸惑う。

 今まで見たことも無い世界で勝手がわからない。

 そんな窮地をフィリスが救うのだ。


 この物語はアリシアがフィリスを好きにならないと始められないのだ。


 アリシアのピンチ自体は詰まんない事でいいと思った。

 なんでもできる万能の魔女が、世間知らずで簡単な事でつまずく出だしの方が面白そうだったからだ。


 この二人の出会いを通して主人公のアリシアに外の世界への興味と魔女としての満足感を与えることにした。


 しかしここまで想定しても二人は友達ではあっても親友にはなれない予感があった。

もっと強力な結びつきが必要だと考えた。


「それで答えは?」


 これは吾輩の実体験だ。

 学生時代の修学旅行でそれまで話したことも無い人と友達になったのだ。


「どうやってですか?」


 たまたまその人が同じ本を持っていたんだ。

 この『共通の価値観を持つ同士の出会い』というのは極めて速く仲良しになれると知ったのだ。


 こうして設定されたのが『ナーロン物語』という作品内の本だった。

 この本を二人は出会う前から読んでいたという設定になったのだ。


 ちなみに『ナーロン=なろう』だったりする。


 だからこそこの二人は気が合ったのだ。

 同じ物語を愛し、同じ理想を持つもの同士だったからだ。


 こういった下地を作ってからあらためてキャラ設定を考えた。


 まず主人公のアリシアは『銀髪赤目キャラ』にすると決めていた。


「なぜです?」


 吾輩銀髪キャラが大好きだから、ただそれだけ。

 しいていうなら無口クール系のテンプレだからだ。


 そして相方のフィリスは王道の『金髪青目キャラ』にした。


 この金髪と銀髪の対比。


 赤い目と青い目は宝石のルビーとサファイアをイメージした。

 なぜならこの二つの宝石は『同じ物』だからだ。

 二人で主人公という吾輩なりのテーマをこのキャラ設定に込めたのだ。


 纏めると。


 主人公のアリシアは万能の魔女で何でもできるが何にもしようとしないキャラ。

 それを動かすのはメインヒロインのフィリスの役目。

 これを基本として物語を動かそうとしたのだった。


 ちなみに名前の由来はアリシアは単に一番好きな名前だったから、それだけ。

 フィリスはアリシアとセットで『アリス』になるようにこの名前になった。

『アリシア+フィリス』で『アリス』である。


 吾輩この『アリス』という名前に強いこだわりがあって『命』という意味だと思っている。

 なんかこう人工生命とかによく付けられる名前だと思っているからだ。


 主人公とメインヒロイン、この二人が作品の命だと思ったからこう名付けたのだ。




 主人公の役目は世界を救う事だ。

 でもそんな主人公は孤高の存在になって孤独になる。

 だからメインヒロインは必要なのだ。


 主人公を孤独にさせない最高の理解者、それがメインヒロインの役目である!


 きっとアリシアは怖がられるだろう。

 でもフィリスはそれを防ぐのだ。


 アリシアが世界を守ってフィリスがアリシアを守る。

 そんな二人を『主人公』にしたかった。




 これが吾輩のメインヒロインの作り方である。

 ただ主人公のヨイショするだけのヒロインは決して『メインヒロインではない!』


 今回はここまで、次回はライバルについて語りたいと思う。

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― 新着の感想 ―
[一言] アリシアちゃんネタの方でなく、一休さんネタの方に反応して、しかも自語りで恐縮ですが… 私の2次元初恋が一休さんで、並々ならぬ思い入れがありまして。 さよちゃんは別に好きでも嫌いでもなかっ…
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