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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
1章 環境改善編

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52、服とアイデア料

「これでまた試作をしてみよう。レーナ助かった」

「いえ、私は特に何の役にも立っていないので……」


 逆に分からないことが多くて質問ばかりしていて、邪魔じゃなかったかと心配なぐらいだ。


「そんなことはない。レーナの何気ない一言がとても役に立った。やはりお前は独特の感性があるな。それは稀有な才能だと思うぞ」

「……ありがとう、ございます」


 邪魔だった気がすると落ち込んでいたところを急に褒められて、思わず照れて顔が赤くなってしまった。私はそれを誤魔化すように両手で頬を隠し、時計を見上げる。


「そ、そろそろお昼時ですが、いつも昼食は何を食べてるんですか?」

「うん? ……本当だな。もうそんな時間か。いつもは私が作ることもあれば、食べに行くこともある」

「え、料理できるんですか!?」


 私の中で構築されたダスティンさんのイメージと違って、思わず声をあげてしまった。でもよく考えたら、配達で肉とか野菜とか頼んでるもんね……


「簡単なものならな。ただ今日はあまり食材が残っていないし、近くのカフェにでも行くか。レーナも行くだろう?」

「ぜひ!」


 カフェなんて初めてだ。私はその魅力的な言葉に、思わず食い気味で反応してしまった。今日はお給料を少し持ってきてるし、お昼ご飯を奮発しても良いよね。

 自分の中でそう決めたら楽しくなって、スキップでもするかのような足取りで工房の出口に向かう。


「早く行きましょう!」

「ああ、戸締りをして行くから、先に外に出ていろ」

「分かりました!」


 外に出て待つこと数分、ダスティンさんが服を着替えて玄関から出てきた。工房の中で着ている汚れることを前提とした簡素な服ではなくて、パリッとしたパンツにシャツだ。


「……私も着替えたほうが良いでしょうか?」

「――確かにな。一つ服を買って工房に置いておくか? その服だと店によっては入店を断られる」


 どうしようかな……新しくて綺麗な服を着たいけど、街中で買う服なんて高いだろう。でもダスティンさんに迷惑をかけるのは嫌だ。


「安い服を売っているお店を、紹介していただけますか?」

「いや、服なら私が買おう。アイデア料の一部をその代金とすれば良い」


 ダスティンさんはそう言うと、大通りに向けてスタスタと歩いて行ってしまった。いや、ちょっと待って! アイデア料って服を買えるほどもらえるの!?


「ダ、ダスティンさん、服って高いんじゃ……」

「いや、貴族や富裕層が着るような服は高いが、この辺で売っている小綺麗な服はそこまで高くない。私のこの服も上下で銀貨二枚ほどだ」


 銀貨二枚って……


「十分高いです!」

「そうか?」


 ダスティンさんって絶対にお金持ちだよ。というかそもそも、一人であんなに立派な工房を、大通りのすぐ近くに構えられることからしてお金あるよね。


「私にとってはそこまで高くないので問題はない。それにレーナに渡すアイデア料は金貨一枚を予定している。さらに洗浄の魔道具が売れるようになれば、それによって入ってくる利益も一部を渡そうと思っている。だからレーナにとっても、銀貨二枚はそこまで高くないんじゃないか?」


 いやいや待って、あんなちょっと思いついたことを話しただけで金貨一枚ももらって良いの!?


「……魔道具師って、そんなに儲かるのですか?」


 私は思わずそんなことを聞いてしまった。だって気軽に金貨一枚とか言えちゃうんだ。その何十倍も、もしかしたら何百倍も稼いでる可能性は大いにある。


「そうだな、腕が良ければ稼げる職業だ。そもそもしっかりと学ばなければ就けない仕事だからな」

「そうなのですね……ダスティンさんは、どうして魔道具師になったのですか? 学ぶ機会があったってことですよね?」

「ああ、学びの機会には幸運にも恵まれた。その上でなぜ魔道具師を選んだかは……やはり魔道具が好きだからなのだろう」


 そう言ったダスティンさんは、優しい笑みを浮かべていた。かなりレアなダスティンさんの微笑みだ。


「ダスティンさんが魔道具を好きなのは、十分に実感してます」

「……そんなに態度に出していたか?」

「はい。めちゃくちゃ分かりやすいです」


 普段があんまり笑わないからこそ、魔道具に瞳を煌めかせてる時が印象に残るんだよね。そういえば、ダスティンさんって結局何歳なんだろう。


「あの、一つ聞きたいことがあって。ダスティンさんっておいくつですか?」

「私か? 私は二十歳だ」


 おおっ、やっぱりそんなに若いんだ。


 ――最初に二十代後半って思ったのは内緒にしておこう。


 私が密かにそう決意していると、ダスティンさんが一つのお店の前で立ち止まった。


「さてレーナ、ここがおすすめの服屋だがどうする? アイデア料から私が購入するので良いか?」

「……ダスティンさんが良いのでしたら、お願いしたいです」

「分かった。では入ろう」

 

 ダスティンさんは満足そうに少しだけ口角を上げて頷くと、お店のドアに手をかけた。ドアを開けるとカランコロンっととても心地の良い鐘の音が響き、優しげな雰囲気の女性が出迎えてくれる。


「いらっしゃいませ。ダスティン様、いつもご贔屓にしてくださってありがとうございます」

「ここの服は質が良いからな。今日はこの子の服を買いに来たのだが」


 ダスティンさんは、店員の女性に顔を覚えてもらっているらしい。そんなにこのお店に来てるのか……いくら外門近くとはいえ大通り沿いの高級店だ。やっぱりダスティンさん、お金持ちだね。


「かしこまりました。ではこちらへお越しください」


 店員の女性に案内されたのは、奥の子供服売り場だった。女性は「失礼します」と軽く私の採寸をすると、サイズが合う服をいくつか見繕ってくれる。


「こちらがおすすめでございます」


 そう言ってハンガー掛けに並べられたのは、十種類以上のおしゃれで可愛い服だった。見てるだけでテンション上がる……!

いつも読んでくださっている皆様ありがとうございます。毎日たくさんの方が読んでくださっていて、とても嬉しいです!


本日は一つ訂正箇所がありますので、ここでお知らせさせていただきます。

今までこの世界の時間の表現を六の時、一時、半時などと表現していましたが、それを六の刻、一刻、半刻に変更しました。

こちらの方が視覚的にも分かりやすいと思いますので、こちらで認識していただけたら幸いです。(ご提案くださった方、ありがとうございます……!)


この世界の時間は、一の刻から十二の刻で一日となります。ちなみに本文でも出てきていますが、一刻は地球の二時間と近い時間感覚です。



これからもレーナの物語を、そしてこの世界を楽しんでいただけるように頑張って執筆していきますので、よろしくお願いいたします。

☆評価や感想、レビューなどもぜひよろしくお願いいたします!


蒼井美紗

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