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194、準備と戦闘開始

 ゲート付近に到着してからは、実際にゲートから魔物が排出され始めるまでに迎え撃つ準備を進めなければならないということで、とにかく忙しかった。


 ゲートは出現した際に空へと光が立ち昇ってから、約二日後に魔物が排出され始めるのが普通だ。今回は場所的に排出開始まで十分な時間があったので、不足ない準備が行えているらしい。


 これが近くに街や村がない辺境だったり、ノークが速度を出せない深い森の中だったりすると、かなり悲惨なことになるのだそうだ。


「そろそろ魔物の排出が始まってもおかしくない時間だ! 気を引き締めるように!」

「はっ!」


 カディオ団長の号令に、騎士たちが一斉に声を張る。


 ちなみに魔物を迎え撃つ隊列は、前列に大きな盾を持った騎士たちが集まり、その後ろに近接武器を持つ騎士、そして次に遠距離武器を持つ騎士、最後に魔法師団の魔法師たちだ。


 魔法師たちは攻撃魔法は使えるけど武器を扱う戦闘は苦手なので、後ろの安全なところから攻撃をする。騎士たちの中で精霊魔法が使える人は、それぞれ臨機応変に使用する形らしい。


 ちなみに私は魔法師と同じ場所に配置され、ダスティンさんとクレールさん、護衛のレジーヌ、ヴァネッサもすぐ近くに配置されていた。


「今回はゲートがかなり大きい! 大型の魔物や一度に大量の魔物が出現する可能性がある。また今までの最長である二日間ほど、ゲートが閉じないかもしれない。それを念頭に置いて行動するように! 五時間ごとに人員の交代を行うが、交代には最大限の注意を払ってくれ!」

「はっ!」


 カディオ団長の声掛けはそこで終わりのようで、辺りにはまた僅かなざわめきがある緊張に満ちた空気が漂った。


 それからしばらく、ゲートには何の動きもなかった。人の緊張感というのは長続きしないため、皆が体の力を抜いて近くの人たちと談笑を始める。


 そうして緊張の糸が緩んでいたその時、それは突然起こった。


 突然ゲートの中心に亀裂が入ったのだ。そして空間が切り裂かれるように、ギィィィという奇妙な音と共に、ゲートの中心に穴が開いていく。

 その穴はどんどん大きくなり、ブワッと生暖かい風が頬を撫ぜた。


 ゲートってこんな感じで開くんだ……空間が切り裂かれるなんて、ファンタジーすぎる。そして予想以上に怖い。

 私は震えそうになる手に力を入れて、役立たずにはならないよう気合いを入れ直した。


「来るぞっ!」


 カディオ団長の声が耳に届いた瞬間、ゲートからかなりの速度で何かが飛び出してきた。それは人の背丈よりは小さなものだったが、結構な素早さで、さらに数が多い。


「ブラックボアだ! 突進を正面から受けるなよ!」


 前線の騎士たちが飛び出してきたブラックボアに対処をしていると、今度はゲートの高い位置から何かが空を飛んで現れた。


「あれは……ビッグバットでしょうか」


 買い付けに行った時に見た皮膜に似てると思ってそう呟くと、ダスティンさんが肯定してくれた。


「そうだ。空を飛ぶ魔物は遠距離武器か、精霊魔法でないと倒すのは難しい。レーナはそちらを重点的に狙え」

「……は、はいっ」


 ダスティンさんのその言葉で、魔物を目の前にしてから全く動けていなかったことに思い至り、気合を入れ直してルーちゃんに視線を向けた。


「ルーちゃん、魔力をあんまり消費しない方法で、私の仲間には迷惑をかけないように、あの空を飛ぶ魔物を倒して欲しいの」


 そう伝えると、ルーちゃんは私の言葉を待っていたかのように嬉しそうに飛び回り、一気に上空に上がっていった。


 そして多分風魔法を使って、次々と魔物の羽を切り裂き地面に落としていく。


「ルーちゃん! またゲートから出てきたよ!」

「本当に規格外な精霊魔法だな……」


 ダスティンさんは呆れた声音でそう呟いてから、自らも戦いに参加しようと、精霊魔法の詠唱を口にした。


 そうして戦闘が開始してから数十分。私は何十匹、もしかしたら三桁に及ぶ魔物をルーちゃんと共に倒した。しかしゲートから溢れてくる魔物の数は、一向に減る気配を見せない。


「この調子で最長二日も魔物が溢れ続けるのですか!」


 戦闘音で声が掻き消されないよう、いつもより大きな声で問いかけると、ダスティンさんは眉間に皺を寄せて首を横に振った。


「さすがにそれはないはずだ。魔物の出現には波がある。しかしそれにしても……今回のゲートは魔物の数が多く、出現速度が異常に速い」

「やっぱりこれって普通じゃないんですね」


 時折聞こえてくるカディオ団長やシュゼット、そして他の騎士たちの声からして、なんとなくイレギュラーが発生しているような気がしていた。


 結構な勢いで魔力を消費してるし、このままだと魔力不足で精霊魔法が使えなくなりそうだ。


 そんなことを考えていると、最前線で戦っている騎士たちが大声で警戒を告げた。


「気をつけろ! ワイバーンが来たぞ!」


 ワイバーンって……あまり出現しなくて、その素材はかなり貴重なんだよね。確かクレールさんの話では、何匹も現れると被害を出さずに討伐するのは難しいって……


「五匹もいる!!」

「いや、違う! まだ来るぞ!」

「全部で九匹だ! 団長……どうしますか!?」


 九匹も同時に現れたワイバーンに、騎士たちは混乱していた。カディオ団長とシュゼットの様子を見ても、眉間に皺が寄っていて余裕はなさそうだ。


 ルーちゃんに魔法で倒してもらうのもありだけど……多分ワイバーンを倒すような魔法は、結構魔力を消費するよね。

 まだ序盤の今は、魔力の温存も大切なはずだ。


「レジーヌ、ヴァネッサ、いける?」


 私の護衛として後衛にいるため、まだ魔物とは戦っていない二人に問いかけると、二人は頼もしい表情で頷いてくれた。

 それを確認してから、私はダスティンさんに視線を向ける。


「ダスティン様、私はレジーヌ、ヴァネッサと共にワイバーン討伐に向かいます。実は二人とは補助魔法の練習をずっとしていて、空を飛ぶ魔物を想定した訓練もしているんです」


 そう伝えるとダスティンさんはかなり悩みながらも、私たちがワイバーンに向かっていくことを許可してくれた。


「分かった。絶対に無理はしないように」

「それはもちろんです。――レジーヌ、ヴァネッサ、行くよ」

「「はいっ!」」

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