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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
2章 貴族編

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191、三人での話し合い

 ダスティンさんと話をしていると、すぐにリューカ車は王宮に到着した。魔道具化から逃れたマントをダスティンさんに返して、私たちはリューカ車から降りる。


 パメラたちも連れて王宮の使用人の案内で応接室へと向かうと、中にいたのは……陛下ではなく王太子殿下であるベルトラン様だった。


 私たちが席に腰掛けると、さっそくベルトラン様が口を開く。


「視察後で疲れているところ申し訳ない。そして本当ならば陛下が顔を出す予定だったのに、直前でどうしても外せない緊急の用事ができてしまい、こちらに来れなくなってしまったんだ。こちらもすまない」


 そう言って頭を下げられたベルトラン様に、私は慌てて口を開いた。


「いえ、気になさらないでください。陛下がお忙しいことは十分に承知しております」

「ありがとう。陛下より私が代わりに打ち合わせをするようにと仰せつかっているため、今日は予定通り今後に関することを詰めたいと思っている。それで良いかな?」

「もちろんです。よろしくお願いします」

「私も異論はない」


 ダスティンさんも頷いたことで、ベルトラン様、ダスティンさん、そして私による三人での話し合いは始まった。


 ベルトラン様が侍従や侍女、護衛を廊下に待機させたので、室内にいるのは私たち三人だけだ。ベルトラン様は最初よりもゆるっとした雰囲気で、私に視線を向けた。


「視察はどうだったかな? レーナの故郷だと思うけれど」

「はい。とても懐かしい場所で、友人たちにも久しぶりに会えて幸せでした。カディオ団長やシュゼット副団長が私の視察目的を広く宣言してくださったので、近いうちにスラム街全体へと情報は回ると思います」


 スラム街は人々が助け合って生きているから、その分噂が回るのも本当に早い。多分数日経てば、スラム全体に私の視察とその目的が巡ると思う。


「市場にも行きましたので、街中にも少しずつ浸透すると思います」

「ほう、それは素晴らしい成果だ。それならしばらくは、レーナにやってもらうことはないかな。陛下や私が動く期間になるだろう」

「よろしくお願いします。実際にスラム街を解体して、皆の生活が変わるのはいつ頃になるでしょうか」


 皆と会ったことで少し気が急いてそう問いかけると、ベルトラン様は少し悩んでから一本指を持ち上げた。


「早くてひと月ほどかな」


 ということは、約九十日だ。結構時間がかかるなと思っちゃうけど、多分スラム街の解体なんて方針を実行するのは相当大変だから、これでもかなり早いスケジュールなんだろう。


「分かりました。よろしくお願いします」

「任せておいて。ただ現在街中に住む民にどれほど受け入れられるのかによっても進度は変わるため、遅ければ年単位の時間が掛かることは了承してほしい。やはり一番大変なのは、受け入れ体制を整えることなんだ」


 まあ、そうだよね……スラムに住む人たちは街中に住む人たちと常識が違う。教養レベルにもかなりの差があるはずだ。


 そこを埋める努力も必要だし、まずは街中とは言ってもスラムに住んでいた人たちをどこかに集めるのなら、その場所も確保しないといけないし……


「大変なことを提案してしまい、申し訳ございません」


 想像するだけであらゆる問題が発生しそうな現状に、思わずそんな言葉が出てしまった。するとベルトラン様は、頼もしい表情で首を横に振る。


「気にする必要はないよ。そこを調整するのが私たちの仕事だ。文官たちも創造神様の加護を得たレーナ発信の仕事ということで、多くの者は張り切ってくれるだろう」

「……それなら良かったです。よろしくお願いします。私に何かできることがあれば、なんでも仰って下さい」


 私で役立てることがあるのかと思いつつ伝えると、ベルトラン様は笑顔で「それならば」と私の役割を伝えてくれた。


「そのうちにレーナがスラムを解体するという、分かりやすいパフォーマンスもしてもらいたいと思っているんだ。その時には頼んでも良いかな? まだどんな方針かは何も決まっていないけれど」

「もちろん構いませんが……パフォーマンスとは私にできることでしょうか」


 演説とかなら全く向いてないと思う。頑張るけど、噛み噛みになる予感しかしない。


「もちろんレーナができることで考える」


 ベルトラン様はそう言ってくれたけど、まだ不安が拭いきれずに曖昧に頷いていると……横にいたダスティンさんが提案してくれた。


「パフォーマンスならば、金色の精霊に精霊魔法を使ってもらうのが良いのではないか? それならばレーナにとっても負担はなく、そのパフォーマンスを見る者たちも一目でレーナが創造神様の加護を得たことが分かり、印象に残るだろう。もちろん精霊が良ければだが」


 ダスティンさんのその提案に、私は飛びついた。


「それ良いですね!」

「ふむ、確かにそれができるのならば、私たちとしてもありがたいね」


 ベルトラン様もそう言って頷いてくれたので、私がいずれするパフォーマンスはルーちゃんに魔法を使ってもらうこと、で決定となった。


 それからはルーちゃんにどんな魔法を使ってもらうのかについて少し話し合い、スラム解体後にも現在スラムがある場所に木こりや農家、畜産家が住めるよう整備するという話から、その整備の一部を私とルーちゃんですることになった。


 土魔法で土を綺麗に均して固めて、石材や木材を空間収納から取り出していく。さらに召集した大工さんたちに補助魔法をかけて一気に家を作ってもらい、その間に私たちは畑を作って植物魔法で野菜の芽を産み出していく。


 そんな内容をルーちゃんにできるのかどうか尋ねたら、多分可能だって感じの動きをしていたので、後は当日……まだ先かもしれないけど、その日になったら頑張れば良いだろう。


「では今日の話し合いはここまでにしよう。これからも何かがあれば、レーナに報告をする。また進捗についても定期的に報告するから、把握しておいてほしい」

「かしこまりました」


 そうして話し合いは終わりとなり、私は帰路に就いた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ちょっと理想的すぎん? 教会とおなじような悪意を持つ人も多いと思うよ
[一言] あー、確かに住むところの確保が最優先ですわな。勝手に水道含めた衛生面優先(病原菌の根絶)なのかなと考えてました。寒さや雨露凌げるところがないと岩山に横穴掘るか竪穴式住居になるでしょうしね(い…
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