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182、お土産

 予想外の騒動があったメロディ、オレリアとのお出かけが終わり、私は無事に屋敷へと戻ってきた。

 いつもより明らかに機嫌が良く浮き足立ってるリオネルも一緒だったので、リディとの時間はどうだったのかを聞くために少しだけ談話室で話をして、それから向かうは家族皆がいる離れだ。


 リオネルの楽しそうだった様子に引っ張られ、私もなんだかスキップでもしたいような気分で離れへと向かう。


「パメラ、レジーヌ、ヴァネッサ、ここで待機をお願いね」

「かしこまりました。レーナお嬢様、こちらがお土産としてご購入された品でございます」


 パメラに茶器一式が入った木箱と、その上に載った茶葉とクッキーを渡された。


「ありがとう」


 私が受け取ると、レジーヌが離れのドアをノックしてくれる。ヴァネッサは護衛対象である私から視線を逸らさない。


 三人の連携も、日に日にスムーズになってるよね。


「レーナお嬢様がお越しです」


 レジーヌがそう声を掛けると、中からドタバタと足音が聞こえてきて、結構な勢いでドアが開いた。


「レーナ!」


 ドアを開いたのはお父さんだ。満面の笑みを浮かべていて、その表情を見るだけで私も笑顔になってしまう。


「お父さん、久しぶり。入っても良い?」

「もちろんだ」

「ありがとう。じゃあ皆、今回は一刻ぐらいで私の部屋に戻る予定だから、そのつもりでよろしくね」


 三人がその言葉に頷いてくれたところで、私はお父さんと一緒に離れの中に入った。


 するとお母さんがちょうど夜ご飯を作っていて、お兄ちゃんも台所に立っていた。


「ルビナ、ラルス、レーナが来たぞ!」

「レーナ、いらっしゃい」

「元気そうだな!」


 お母さんとお兄ちゃんに声を掛けられ、私はより笑顔になる。


「うん、元気だよ。皆はどう?」

「私たちも問題なく過ごしてるわ」

「レーナ、その持ってるのはなんだ?」


 お兄ちゃんの質問に、私は茶器の箱をお父さんに手渡した。そしてまずは上に載っている茶葉とクッキーを皆に見せる。


「今日は友達とお出かけだったんだ。これは皆へのお土産だよ。こっちがクッキーでこっちが茶葉ね」


 その説明にお兄ちゃんは瞳を輝かせて台所から出てくると、クッキーが入れられている紙袋を手にした。そして中を覗き込むと、ニッと嬉しそうな笑みを見せる。


「美味そうだな!」

「ラルス、俺にも見せてくれ」

「私は茶葉が気になるわ」

「ふふっ、あとでじっくり見て。それからお父さんが持ってる木箱だけど……」


 説明しながら蓋を開けると、まずは一番に中身を見たお父さんが瞳を見開いた。そんなお父さんを見て、お兄ちゃんも木箱を覗き込む。


「綺麗だな」

「おお……お屋敷で使ってるやつみたいだ」

「茶器一式だよ。これは主にお母さんへのお土産かな。お茶を淹れる練習がしたいって言ってたから」


 その言葉に頬を緩めたお母さんは手にしていたヘラを置くと、私たちの下にやってきた。そして木箱の中を見て嬉しげな笑みを見せる。


「ありがとう、素敵な茶器ね。さっそくレーナが買ってきてくれた茶葉で、お茶を入れてみましょうか」

「おおっ、いいな」

「じゃあクッキーも食べよう!」


 お兄ちゃんはクッキーが食べたくて仕方ないみたいだ。お皿を準備してそこに可愛らしい布を載せると、クッキーを綺麗に盛り付けていく。


「お兄ちゃん、そんな盛り付けできたんだ」

「へへっ、最近教えてもらったんだ」


 凄いな……やっぱり周囲の環境で人って変わるね。スラムにいた頃のお兄ちゃんには、盛り付けなんて概念すらなかったのに。



 それからは皆の準備を私も手伝って、ちょうど夕食も作り終えたということで、夕食兼お茶会をすることになった。


 私はリゾットやスイーツをたくさん食べたのでクッキーとお茶だけで、皆の夜ご飯はラスタのワンプレートみたいだ。


 茹でたラスタ、要するにほぼ白米を平皿に軽く盛り付けて、その上にソルで焼いたハルーツの胸肉と、ミリテがベースとなったトマトソースみたいなものが掛けられている。


「そのご飯、絶対に美味しいね」


 こうして全てを一皿に載せちゃうプレートは貴族の食事では出てこないから、ちょっと惹かれてしまう。


 なんでか理由は分からないけど、ワンプレートって美味しく感じるんだよね……美味しいものが混ざって、良い感じに味変できるからなのかな。


 このプレートにさらにサラダと、卵料理なんか載ってたら完璧だ。


「少し食べる?」

「うーん……じゃあ一口だけ」

「私のをあげるわ」

「お母さん、ありがとう」


 お母さんのスプーンで一口もらった私は、口の中で混ざり合うラスタとハルーツの胸肉と、少し酸味があるトマトソースの美味しさに感動した。


「すっごく美味しい」

「そう、良かったわ。ここではたくさんのお給金がもらえるし、お屋敷で余った分が下げ渡されたりして、色々な食材が手に入るから美味しいものが作れるのよ」

「確かに、このソースにしても何種類も野菜が使われてるね」

「香辛料もよ」


 そうして話す私とお母さんの会話に、早々にプレートを綺麗にしたお父さんが笑顔で告げた。


「ルビナの料理はスラムの時から最高に美味しいけどな」


 そんなお父さんの言葉に、お母さんは嬉しそうだ。


「ありがとね」

「何だかんだ母さんの料理が美味いよな!」


 お兄ちゃんが満面の笑みで告げた言葉に、私も頷いて同意する。


「うん。食べると落ち着くよね」


 それからも和やかな雰囲気で、家族との時間は過ぎていった。クッキーとお茶も存分に楽しみ、近況をたくさん話して皆で笑い合い、心がポカポカと温かくなったところで、私は自分の部屋へと戻った。

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