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178、クレープ発見

 次に向かうのはオレリアが好きだという甘いものを目当てに、おしゃれなカフェだ。

 ルルの服飾店から近くだと聞いていた通り、お揃いの髪飾りについて話に花を咲かせていたら、すぐにリューカ車が止まった。


「もう着いたのね」


 窓からカフェを見てみると、大通りから少し入ったところにあるこぢんまりとしたカフェみたいだ。しかし小綺麗で可愛らしい雰囲気は、見ているだけでワクワクする。


「ここはオレリアが好きなカフェなのかしら」


 そう聞くと、オレリアは頬を緩めて頷いた。


「はい。派手さはないカフェなのですが、とても落ち着く雰囲気なのです。お二人には物足りないお店かもしれませんが……」

「そんなことはないわ。とても素敵に見えるもの」


 私がすぐにそう言うと、メロディも頷いてくれた。


「ええ、早く入りましょう。楽しみだわ」


 三人で中に入ると柔らかい笑みを浮かべた女性店員さんがすぐにやってきてくれて、奥の席に案内された。手渡されたメニューには、スイーツと飲み物のほか軽食もあるみたいだ。


 店内をぐるりと見回してみると、木材とレンガで作られたカウンターの後ろには壁一面に棚があって、たくさんの茶葉のようなものが並べられている。ドライフルーツやお花のようなものも瓶に入ってるみたいだ。


 またカウンター横にも棚があり、そちらには茶葉やおしゃれな茶器が売り物として並べられていた。

 

「レーナ様はどれになさいますか?」


 店内を見ていたらオレリアに声をかけられ、慌ててメニューに視線を落とした。


「そうね……オレリアはいつも何を食べるの?」

「私はくれーぷが好きです。あまりメジャーではないスイーツなのですが、ご存じですか?」

「いえ、初めて聞いたわ。どのようなものなの?」

「そうですね……簡単に言うと、ラスート包みを甘くしたものです。シュガを入れて生地を焼き、包むものもクリームや果物、蜂蜜などです」


 あっ、クレープのことか。

 私はこの国の言葉でクレープという発音を覚え、それから久しぶりのクレープを脳内に思い浮かべた。

 

 今まで見たことがなかったから、この国ではラスート包みを甘くする発想はないのかと思ってたけど、ちゃんとあったんだね。

 私はクレープが好きだったから嬉しい。


「では、そのクレープを頼むわ」

「かしこまりました。私もそういたします。メロディ様はどうしますか?」

「私も同じものにするわ」


 それから皆で中に包むものをそれぞれ決めて、店員の女性を呼んだ。ちなみにお茶はレール茶というオレリアのおすすめを頼んでみた。

 この国ってどこでもハク茶ばかりだけど、一応他のお茶もあるみたいだ。ただ一部のお茶好きの間でしか飲まれないので、こういうお茶に凝ってるお店じゃないと置いてないらしい。


「オレリア、あちらにあるものは購入できるの?」


 売り物の棚が気になってオレリアに聞いてみると、二人もそっちに視線を向けた。


「はい。私は購入したことはありませんが、結構買われていく方は多いです。特にクッキーが人気みたいです」

「そうなのね……では買って帰ろうかしら」


 家族皆にお土産として持って帰ったら絶対に喜ぶよね。お母さんが茶器の扱いに慣れるために自分専用が欲しいって言ってたし、茶器を買って帰るのもありかも。


「少し見てくるわ」

「かしこまりました」


 それから私は一人で棚を見に行って、店内の別のテーブルに控えてくれていたパメラを呼んだ。


「パメラ、この茶器一式とこの茶葉、それからクッキーを三袋持ち帰りたいの。買っておいてもらえる? 家族へのお土産よ」

「かしこまりました。では購入し、我々のリューカ車に載せておきます」

「ありがとう。頼んだわ」


 パメラに頼んで買い物を終えたら、また二人のところに戻る。するとちょうどクレープとお茶が運ばれてきていたところだった。


 レール茶は黄色い色味が特徴的で、鼻に届く香りは少し酸味があるものだ。しかしキツイ酸味というよりも、爽やかさを感じる。


 クレープはとても華やかな盛り付けで、日本でよくあったクレープのように三角になるような巻き方ではなく、ラスート包みと同じでトルティーヤのような巻き方になっていた。

 中にもクリームや果物がたくさん入っているようだけど、クレープの上や側にもクリームと果物、それからお花が盛り付けられている。


「とっても可愛いわ」


 そう言って微笑んだのはメロディだ。可憐なメロディと華やかな盛り付けのクレープはよく似合っていて、思わず見惚れてしまう。


「メロディって、本当に可愛いね……」


 思わず素で呟くと、メロディはさらにキラキラ度を増して私に視線を向けてくれた。


「ありがとうございます」

「ではさっそくいただきましょう」


 オレリアのその言葉によって、私たちは一斉にカトラリーを手にした。ナイフとフォークで一口サイズに切り分けて口に運んだクレープは、最高に美味しくて食べただけで幸せになれる味だ。


 私が知ってる日本のクレープよりも少し皮が分厚くて硬めだけど、そのぶん皮の美味しさを感じられて、またクリームとのバランスも絶妙だ。

 そして甘いクリームに、少しだけ酸味のあるイチゴのような果物ベルリが、これ以上ないほどに合っている。


 このお店ならもっと甘味の強いベルリを仕入れることもできるんだろうけど、クリームと合わせることを考えて少し酸味があるベルリをわざわざ仕入れてるんだろう。


「クレープはどうでしょうか」


 オレリアが少し緊張した様子で問いかけてくれたので、私はカトラリーを置いて満面の笑みで答えた。


「オレリア、最高に美味しいスイーツね」

「本当ですか! 良かったです」

「私もとても気に入ったわ。幸せになれますね」


 メロディもそう言って笑みを浮かべ、オレリアは安心したように頬を緩ませる。


 それからは三人でクレープの美味しさについて語り合いながら、ペロッと一皿を平らげてしまった。レール茶もしっかりと飲み終えて完食だ。


 ちなみにレール茶は、私には少し酸味が強く、ハク茶の方が好みだった。ただ甘いものを食べるときには口の中をさっぱりとさせられるので、レール茶の方が好みという人もいるのは分かる。


「二人とも、まだお腹に余裕はある?」


 美味しいスイーツを食べてまったりしてるところにそう問いかけると、二人とも僅かに身を乗り出して楽しげな表情で頷いてくれた。


「もちろんですわ」

「まだまだ、食べられます」

「では最後のお店に向かいましょう」


 最後は私がリクエストした、リゾットの専門店だ。私はお店に全く詳しくなかったので、メロディが最近流行っているというレストランを見つけてくれた。

 どんなリゾットがあるんだろう、楽しみだな。

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― 新着の感想 ―
[一言] おし、自他ともに認める甘党さんは明日クレープ買いに行かなば(横に陳列されてるであろうシュークリームや、エクレアとの戦いになるに違いない。w) カフェ…最近はスタバをはじめチェーン店が多くな…
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