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177、お揃いの髪飾り

 店内の商品に端から目を向けていると、オレリアが声を掛けてくれた。


「レーナ様、こちらの髪飾りとても可愛いです」


 髪飾りを見るためにオレリアがいる場所に向かうと、そこにあったのは小さなお花がたくさん集められたような髪飾りだ。

 お花一つ一つに丁寧に宝石がつけられていて、キラキラと輝きとても可愛い。


「何色もあるのね」

「その髪飾りは私も初めて見ましたわ。ルル、新作かしら」

「はい。最近完成いたしまして、メロディ様がご学友をお連れになるとのことでしたので、本日が初お目見えでございます」

「まあ、そうなのね」


 メロディとオレリアの瞳は、もうこの可愛い髪飾りに釘付けだ。私も気に入ったし、これをお揃いにしようかな。


 そう考えつつ、ついついこの髪飾りっていくらなんだろうと元庶民な考えが頭に浮かんでしまう。

 貴族向けのお店って値段表記がないことが多いんだよね……聞けば教えてくれるんだけど、貴族社会には値段を聞かずに購入することが高位貴族の嗜みである、みたいな意味不明な慣習があるのだ。


 だから私はあまり値段を聞かないようにと教えられている。でも値段が分からないまま買うのは元日本人としてもスラム出身としても全く慣れないから、できれば値段を知りたいんだけど……


 そう思っていると、オレリアがごく自然にルルさんに声を掛けた。


「ルルさん、こちらはおいくらでしょうか」


 オレリア……ありがとう! 


 やっぱり子爵家だと普通に聞いて良いんだね。オードラン公爵家の一員になれたことは本当にありがたいと思ってるけど、もう少し高位貴族も自由にできたら良いのに。


「こちらは金貨二枚でございます」


 オレリアに感謝しながら何気なく値段を聞くと、信じられない価格が耳に届いた。


 金貨二枚って……約二十万円!? 高っ……と思わず言おうとしたら、オレリアは安心したように頬を緩める。


「思ったよりも手に入れやすいのですね」

「はい。使っている宝石は多いのですが、大きさは小さなものですので値段を抑えられております」


 え、これって安いんだ……手のひらに乗るサイズの髪飾り一つに約二十万。それが安いって価値観は、私の中に根付きそうにない。


 貴族になってから忙しすぎてドレスや装飾品の価格を聞いたことはなかったけど、今度パメラに聞いておいた方が良いかもしれない。


 ……聞いたら服を着てるだけで緊張することになりそうだけど、貴族社会の金銭感覚は身につけるべきだ。


「レーナ様、こちらをお揃いにしませんか?」


 メロディにそう声を掛けられ、私は笑顔で頷いた。いや、ちょっとだけ引き攣ってたかもしれないけど、そこは許してほしい。


「ええ、そうしましょう。二人は何色が良いの?」


 色はピンク、水色、黄色、紫、赤、白、透明などがある。


「どうせなら、髪色に合わせませんか?」

「確かにそうね。ではメロディは黄色かしら」


 オレリアの提案にそう返すと、オレリアはすぐに頷いて同意してくれた。


「私もメロディ様には黄色だと、すぐに思いました! ふわふわな茶髪にとても似合うと思います」

「そうかしら……ありがとうございます。では私は黄色にいたします」


 嬉しそうに微笑んだメロディは、ルルに黄色の髪飾りを手渡す。


「お預かりいたします」

「ありがとう。では次はレーナ様とオレリアの色ですね。お二人は同じ金髪ですが……私の中でレーナ様はこちらの透明な宝石が良いと思います」


 メロディが選んでくれたのは、ダイヤモンドみたいな見た目の宝石だ。私の中でやっぱり宝石といえばダイヤモンドっていう日本人的な価値観が残っているので、否やはない。


「ありがとう。私もそれが気に入っていたの」

「良かったです。では後はオレリアだけれど……これはどうかしら」

 

 メロディが手に取ったのは、ピンク色の髪飾りだ。


「可愛いオレリアにぴったりだと思うわ」


 私も同意すると、オレリアは恥ずかしそうに両手を横に振る。


「そ、そんなに可愛らしい色、私には……」

「絶対に似合うわ」


 メロディがさらにピンクを押したことで、オレリアは髪飾りを受け取った。そして自分の髪にそっと合わせて首を傾げる。


「ど、どうでしょうか……」


 そのオレリアは凄く可愛くて、私は思わずお嬢様を忘れて何度も頷いてしまった。


「オレリア、とっても可愛い!」

「レーナ様の仰る通りよ」


 私たちのその言葉を聞いたオレリアは、まだ少し頬を赤らめながらも、ピンクの髪飾りを買うことに決めたようだ。


「ではルル、こちらの三つを購入でお願いね」

「かしこまりました」


 それから私たちは他の装飾品も端から見ていき、さらにはドレスの試着もして、ドレスというほどではない少し豪華なワンピースも見て回った。


 私は髪飾りの他にワンピースと髪に編み込む用のリボンを買って、メロディとオレリアはそれぞれドレスとネックレスを購入していた。


 別のリューカ車に乗って付いてきている私たちの侍女が支払いを済ませ、お揃いの髪飾りを着けてもらう。


「レーナ様、とてもお似合いです」

「パメラ、ありがとう」


 パメラのお墨付きをもらってからメロディとオレリアの下へ向かうと、二人も髪飾りを綺麗に着けていた。なんだかお揃いを身につけているだけで、さっきまでよりも仲良くなれた気がする。


「二人とも、とても可愛いわ」

「レーナ様も素敵ですわ」

「お二人ともお似合いです……!」


 皆で褒め合って楽しく笑い合い、心が温かくなる幸せな時間を過ごしてから、服飾店を後にした。

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