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176、三人でお出掛け

 休日が終わりまたノルバンディス学院に通う日々を過ごしていると、すぐにメロディ、オレリアとお出かけをする日になった。


「レーナ様、さっそく参りましょう」


 最後の講義が終わったところで、メロディが楽しそうに顔を綻ばせながら声を掛けてくれる。


「ええ、早く行きましょう」

「オレリアもよ」

「もちろんです」


 私たち三人が席を立って教室を出ようとすると……私に何かと絡んでくる侯爵令嬢アンジェリーヌが、ニヤリと自慢げな笑みを浮かべながら声を掛けてきた。


「あらあら、皆さんはお友達同士でお出掛けですか? 羨ましいですわね〜。私は殿方と! のお出かけに忙しく、お友達との時間を作れないのです〜おほほほほ」


 嫌味たっぷりにそう言ったアンジェリーヌは、リオネルの腕にしなだれかかるようにした。リオネルの表情は、少し怒っている時の微笑みだ。


 リオネル……頑張って。


 視線だけでそう伝えると、リオネルは私の応援が分かったのか、僅かに苦笑を浮かべた。


 なんでリオネルがアンジェリーヌと出かける事になったのかは、色々なやりとりがあったらしいけど……まあ端折って言えば、アンジェリーヌが父親に頼んでいろんな手を使って今日のデート? が行われることになったらしい。


 リオネルによると一度だけって約束してのデートらしいから、今日を耐えればもう行く必要はないって言ってたけど、凄く嫌そうだ。


 昨日の夜も私に愚痴ってたんだよね。お茶とお菓子を楽しみながら、二時間もリオネルの話を聞くことになった。まあ、あそこまで素を出してくれるリオネルは珍しくて、楽しかったから良かったんだけど。


「アンジェリーヌ様は、リオネル様とお出かけですか?」


 メロディはリオネルの機嫌が微妙なことを察したのか、アンジェリーヌに当たり障りない問いかけをした。


「ええ、リオネル様と共に王都一のスイーツ店へ行くのよ!」


 アンジェリーヌって、リオネルが嫌がってることに気づいてないのかな……最初はかなり苦手な子って印象だったけど、なんかもうここまでくると、空回ってて可哀想っていう感想まで湧いてくる。


「さっ、リオネル様、行きましょう!」

「……そうだね」


 腕をグイグイと引くアンジェリーヌに連れられて、二人は教室を出て行った。


 そんな二人を見送った私たちは何だか微妙な雰囲気に包まれたけど、気を取り直して私は二人に笑顔を向ける。


「じゃあ私たちも行きましょうか。まずは服飾店だったかしら」

「そうですわね。さっそく向かいましょう」

「最初はメロディ様が贔屓にしているお店ですよね。とても楽しみです」


 私たちは三人で一緒に学院を出て、同じリューカ車に乗った。リューカ車はオードラン公爵家のものだ。


「これから行く服飾店は、どのようなお店なの?」


 放課後に友達と遊びに出かけるという状況にワクワクしつつメロディに問いかけると、メロディはいつも以上に可愛らしい笑みを浮かべて少し身を乗り出した。


 ちなみに座り順は私が一人で座っていて、向かいにメロディとオレリアが横並びだ。


「お花をコンセプトにした、珍しい服飾店なんです。とても可愛らしく華やかなお洋服や装飾品がございます」


 へぇ〜、そんなお店があるんだ。それは凄く気になる。そういえば貴族街に来て、買い物を楽しむのって初めてかも。


「素敵なお店ね。皆で何かお揃いを買うのはどうかしら」

「まあ、それは素敵ですね!」

「お二人とお揃いだなんて……嬉しいです」

「では何をお揃いにするか決めましょう。やはり装飾品かしら」


 それからは三人で楽しく話をしながらリューカ車に揺られ、目的のお店に到着した。


 リューカ車を下りて見上げたお店は、外観だけでとても可愛くて素敵なお店だ。店先には花が咲き乱れ、可愛いオーナメントもたくさん飾られている。


「メロディ様、お待ちしておりました。いつも当店をご利用くださりありがとうございます。そしてご学友であるレーナ様とオレリア様、お初にお目にかかります。当店の店主をしております、ルルと申します」


 ルルさんと名乗ってくれたのは、三十代ぐらいに見える可愛らしい女性だ。


「ルル、出迎えありがとう。今日は三人でたくさんの品を見せてもらうわ」

「かしこまりました。ではどうぞ、中へお入りください」


 ガラス窓から少し見えていただけでも心躍る内装だった店内は、実際に入ると……思わず声を上げてしまうほどに可愛かった。


「素敵だわ」


 すっごくおしゃれで可愛い雑貨屋さんって感じの雰囲気だ。しかしごちゃごちゃとしている感じはしなくて、商品は見やすくなっている。


「わぁ、可愛いですね!」


 オレリアも瞳を輝かせて店内に見入っていた。


「このお店は、実際に足を運ぶことに意味があると思っています」

「そうね。このお店の品を屋敷で見たとしても、ここまでの感動は味わえないでしょう」


 やっぱり買い物って、実際にお店に行って買うのが一番だよね。貴族のお店を屋敷に呼ぶって買い物の仕方も便利で良いけど、買い物の楽しさを感じられるのは絶対にこっちだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >ルルさんと名乗ってくれたのは、三十代ぐらいに見える可愛らしい女性だ。  これを言うのは無粋かもしれないけど、ふと思ったので失礼。  こういう中世風ファンタジー世界って、化粧品と…
[一言] 一昔前のCM思い出した。「買い物の楽しみは迷うこと」…的を得てるなと思いました。 オシャレに気を遣うようなキャラではないのだけど、やっぱり店頭で直に店頭で見て触ってみると縫製の仕方とか生地の…
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