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172、魔法訓練とレーナのやらかし

「シュゼット、昨日ぶりね」


 騎士たちの動揺はとりあえず置いておいてシュゼットに挨拶をすると、肩を軽く叩かれた。


「ははっ、また会えて嬉しいよ。それにしてもレーナがここにいるのが、何だか不思議な感じだな」

「そうかしら。私も強いはずよ」


 口端をあげてそう告げると、シュゼットは好戦的な笑みを見せる。


「言ったな? じゃあ模擬戦でも……っっ」


 シュゼットの言葉が言い終わらないうちに、我に返ったらしいカディオ団長がシュゼットの頭を後ろから思いっきり叩いた。シュゼットは両手で頭を押さえ、その場に蹲る。


「お前っ、レーナ様に馴れ馴れしいぞ! それに殿下のことを放置するな!」

「痛っ……ちょっと団長、不意打ちは卑怯ですよ!」

「お前が悪いんだろ! 殿下、レーナ様、大変申し訳ございません。トゥシャール副団長には私から言い聞かせておきますので」


 なんだか今のやり取りだけで、二人のいつもの関係性が分かってしまった。シュゼットは基本的に自由人で、カディオ団長は真面目な人なんだね。


 団長……ファイトです。


「私は構いませんわ。シュゼットには敬語を使わなくても良いと伝えたもの。カディオ団長もぜひシュゼットと同じように。私がお世話になる立場なのですから」


 シュゼットと団長の両方をフォローするためにそう伝えると、カディオ団長は躊躇いながら口を開いた。


「よろしいのですか?」

「もちろんですわ」

「……では、レーナと呼ばせてもらおう。その代わり俺に対しても敬語はいらない」

「分かったわ。これからよろしくね」


 そうしてシュゼットのおかげでカディオ団長と少し距離が縮まったところで、ダスティンさんが一歩前に出た。


「レーナとトゥシャール副団長はどこで知り合ったのだ?」

「実は昨日、リクタール魔法研究院で」

「なぜそのような場所に副団長が?」


 ダスティンさんはシュゼットが週に数回だけ研究院に通ってることを知らないみたいで、不思議そうに首を傾げている。


「私は副団長としての任務の傍ら、精霊魔法の研究もしているのです」

「……ほう、それは面白いな。どんな研究を?」


 シュゼットの副業はダスティンさんの興味を引いたらしい。ダスティンさんは楽しそうに瞳をキラッと光らせた。


「精霊に好みがあるのかどうかについての研究です。今までは検証が困難でしたが、これからはレーナが手伝ってくれることになったので、成果が期待できると思います」

「確かにレーナの力は検証にも役立つのだな……面白い。私も機会があれば研究室に顔を出しても良いだろうか」

「もちろんです! 殿下に興味を持っていただけるなんて光栄です」


 研究が好きという一点で、シュゼットとダスティンさんは距離を縮めたようだ。その過程を間近で見ていたカディオ団長は、なんだか釈然としない表情を浮かべている。


 カディオ団長とシュゼット、どっちが貴族社会でウケが良いかと言われたら確実にカディオ団長だもんね……私とダスティンさんがちょっと特殊で、すみません。


 そんなことを考えていたら、ダスティンさんがカディオ団長に向けて口を開いた。


「団長、さっそく魔法の訓練を始めて欲しい」

「かしこまりました。では皆、魔法の訓練を開始する!」


 団長の号令に従って騎士たちが足早に動くと、訓練場の真ん中に三分の一程度の騎士が残り、残りの騎士は端に寄って見学の体勢を取った。

 真ん中に残ってる騎士は、精霊魔法を実戦で使える人たちらしい。


「そういえば、精霊魔法が得意だけど剣は扱えないという人は騎士団にいないの?」


 ふと疑問に思ってカディオ団長とシュゼットに向けて聞いてみると、まずはシュゼットが口を開いた。


「そういう人は魔法師団に入るんだ。魔法師団は精霊魔法に特化した国防のための組織で、騎士団とも密に連携してる。よく合同訓練もするし、ゲートが出現したら共に出動することも多いな」


 魔法師団なんてあるんだ。騎士団よりもファンタジー世界特有の組織って感じがして、かなり興味を惹かれる。


「私はなぜ第一騎士団の訓練に参加することになったのかしら」


 剣を扱えない私は魔法師団の方が向いてるんじゃないかと思って首を傾げると、カディオ団長が苦笑を浮かべつつ首の後ろに手を当てた。


「実はどの団がレーナと訓練を行えるのかを決めるため、トーナメントが開催されたんだ。そこで勝ち上がったのが、第一騎士団の代表として出場した俺で……」

「そうだったのね」


 こんなところでも水面下で争いが繰り広げられていたことに驚いてしまう。リクタール魔法研究院でもくじ引きで私への案内権を決めたって言ってたし、この国の人たちって……ユーモアがあるというか面白いというか、意外と身分だけで全てが決まるわけじゃないのかも。


「あのトーナメントは熱かったんだ。レーナも呼べば良かったな」

「見てみたかったわ」

「団長、またやりましょう!」


 シュゼットの提案に、カディオ団長は微妙な表情で頷いた。再戦するってなったら他の参加者は今度こそ勝とうって気合を入れてくるだろうし、団長的には大変だよね。


「では訓練を始めよう」


 話を切り替えるようにカディオ団長がそう告げ、訓練場の真ん中に残った騎士たちは壁際に設置された的に向かって一列に並んだ。


「レーナ、まずはあの的に向かって攻撃魔法を放つ訓練からだ。それが終わったら実戦の中で魔法を放つ訓練や、連携なども確認していく。――手始めにレーナの魔法を見せてもらうことはできるか?」

「ええ、もちろんよ」


 攻撃魔法を思いっきり放てることは今までなかったのでワクワクしつつ頷くと、騎士たちは私のために場所を開けてくれたのでそこに向かった。

 いくつもある的の中で、真ん中を狙えば良いそうだ。


「じゃあいきます」


 ――ルーちゃん、あの真ん中の的に火球を当ててくれる?


 内心ではかなり高揚しながら、思わず上がってしまう口角をそのままにルーちゃんへと伝えた。

 すると私の期待感がルーちゃんにも伝わったのか、いつも以上に張り切って私の周りを高速で飛び回ると――辛うじて目視できる速さで、的に向かって打撃を放つような動きを見せた。


 するのその瞬間――


 ドガンッッ!!


 爆音と爆風と共に、的だけでなく後ろにあった壁までが吹き飛んだ。

本日からはまた今まで通りに投稿していきますので、本編も楽しんでいただけたら嬉しいです!

本編はちょうど、レーナとルーちゃんがやらかしたかもしれない良いところですね笑


書籍をご購入してくださった皆様、本当にありがとうございます。

コメントなどで伝えてくださった方には個別でお礼をできるのですが、そうでない方にはお礼を伝えられないので、ここで改めて感謝を述べさせてください。

本当にありがとうございます!!

(もし書籍買ったよ、読んだよ、などという方がいましたら、気軽にコメントしてください!)


まだ手に入れてないという方がいましたら、この機会にぜひ!

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― 新着の感想 ―
[一言] シリアスムードだったからこそ… 「私、やり過ぎちゃいました?テヘペロ」感が出ててイイ(笑)
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