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162、お出掛けの誘い

 次の日も同じようにリオネルと共に学院へ向かうと、教室に入ったところですぐにメロディとオレリアに声を掛けられた。


「レーナ様、おはようございます」

「おはようございます」

「二人ともおはよう。……何かあったの?」


 二人の表情が何かを言いたげだったので思わずそう問いかけると、メロディが笑みを深めて頷いた。


「はい。実はお誘いしたいことがあるのです」

「あの……今度一緒にお出かけをしませんか!」


 瞳をぎゅっと瞑って一世一代の告白のようにオレリアが告げてくれたのは、お出かけの誘いだった。

 まさか学院に入学してこんなにすぐ、お出かけをできるような友達ができると思っていなかったので、少し驚いてしまう。


 でも何よりも嬉しくて、自然と頬が緩んだ。お嬢様の仮面が外れないように気をつけないとだね。


「もちろんよ。どこに行きましょうか」


 私のその言葉を聞いて、二人は瞳を輝かせて顔を見合わせた。


「メロディ様!」

「オレリア、良かったわね」


 なんか、二人の仲が昨日より深まってる……? もっと緊張している様子だったオレリアが、メロディに対してはリラックスしてることに少しだけ悔しくなる。

 私にはまだ緊張しているようなのに……。


 そんなことを考えていたら気持ちが顔に出てしまったのか、オレリアが恐る恐る問いかけてくれた。


「……あの、やはりお嫌でしょうか……?」

「いえ、とても嬉しいわ。ただ二人が仲良くなっているから、少しだけ羨ましくなってしまっただけなの」


 思わずそんな本音を伝えると、メロディとオレリアは顔を見合わせてから笑い合い、私に視線を向けた。


「実は昨日レーナ様と別れてから、オレリアと二人でどうすればレーナ様と仲良くなれるのかについて、話をしたのです。そこでお出かけに誘おうという話になり……」


 ということは、私と仲良くなりたいって共通点があったから、二人は仲良くなったってこと?

 なんだかそれは、嬉しいような恥ずかしいような。


「……ありがとう。嬉しいわ」


 少しだけ照れながらそう伝えると、メロディがいつもの如くとても可愛い笑顔を浮かべてくれた。


「それで、昨日考えたのですが……まず日程はいつが良いでしょうか。私とオレリアが空いているのは――」


 二人が同時に暇な日を教えてくれて、その中で私が空いている日が一日だけあったので、迷わずそこを選んだ。二人とのお出かけ日は、来週の中頃だ。放課後に同じリューカ車に乗って出掛けることになった。


「目的地はどこが良いかしら」

「それも考えたのですが、それぞれの好きな場所というのはどうでしょうか? 私は可愛らしいお洋服などの服飾品が好きなので、人気の服飾店へ」

「わ、私は甘いものが好きなので、人気のカフェが良いです。レーナ様は、何がお好きですか……?」


 オレリアのその問いかけに、私はすぐに好きなものが思い浮かばなくて考え込んだ。


 スラム街で焼きポーツしか食べられない生活をしてたから、街で食べるものはどれも美味しくて、一番好きなものを考えたことがなかったかも。


 甘いものも好きだし、おしゃれなお洋服も好きだし、でも一番となると……


「ラスタかしら」


 頭の中に思い浮かんだのは、日本で食べていた白米にとてもよく似たラスタだ。やっぱりラスタを粉にしたラスートよりも、私はそのままのラスタの方が食べたくなる。


 炊いて白米のようにして食べるのはもちろん美味しいし、最近はリゾットにもハマっている。この国はリゾットがとてもよく食べられる食事のようで、色々な味付けがあって楽しいのだ。


「ラスタ、ですか?」

「ええ、特にリゾットが好きなの。リゾットの専門店のようなお店はあるのかしら」


 私のその問いかけにメロディは瞳の奥に炎を燃やすと、「調べておきますわ」と微笑んだ。


 やっぱりメロディは、流行りものだったり人気のものを調べるのが好きなのかな。


「ではお出かけはまず服飾店に向かい、カフェで甘いものを楽しみながらお話をして、最後にリゾットを早めの夕食として食べるので良いかしら」


 私が今までの話をまとめて問いかけると、二人は笑顔で頷いてくれた。


「とても素晴らしい予定ですわ」

「当日が楽しみになりました……!」


 そこでお出かけの話は終わり、メロディが楽しげに瞳の奥を輝かせながら、椅子に座って少しだけ身を乗り出す。


「他にもレーナ様のお好きなものを聞いても良いでしょうか?」

「私の好きなものを? もちろん良いけれど」

「では、ぜひ知りたいですわ」

「そうね……」


 改めて言われると、好きなものって難しいかも。特にお嬢様モードの時に言える好きなものって、やっぱり上品なものが良いよね。

 でも上品な好きなものなんて……


「あっ、クルネが好きよ」


 アリアンヌのおかげで最近は好物と言えるまでになっていた、あの杏仁豆腐みたいな不思議なデザートの名前を口にすると、メロディはパチパチと瞳を瞬かせた。


「クルネとは、たまに大人の方々が食しているものでしょうか」

「ええ、子供はあまり食べないのよね。でも私は好きで、妹のアリアンヌの好物でもあるの。だからオードラン公爵家ではよく食べるわ」

「そうなのですね……今度挑戦してみますわ」

「わ、私も食べてみます!」


 二人の前向きな答えが嬉しくて自然と笑顔になり、それからはクルネにどのジャムが合うのかについてや、ジャムの専門店が最近人気なことなどを話して、穏やかで楽しい時間が過ぎていった。


 メロディとオレリアと友達になれて良かった。心からそう思った。

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