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161、メロディとオレリア

 レーナがリューカ車に乗り学園を後にするのを見送りながら、メロディとオレリアは心を一つにして顔を見合わせていた。


 しばらく二人の間には沈黙が流れ、それを破ったのはメロディだ。


「……オレリア、第二王子殿下とお近づきになる計画は中止にするわ」

「そうですね……私では無謀な夢だと思っていましたが、先ほどの様子を見てしまうと、レーナ様以外の方ではどなたでも無謀な夢かと……」

「そうよね。とても仲が良い様子だったわ」

「はい。第二王子殿下は、あんなにも表情豊かな方だったのですね……」


 オレリアのその言葉にメロディは目を細めて空を見上げながら、ゆっくりと口を開いた。


「多分、レーナ様の前だけではないかしら」

「やはりそう思われましたか? 私たちに話しかけてくださる時には、講義の時と同じ表情を浮かべられていましたよね」

「そうね。それに……レーナ様もとても気を許していらっしゃる様子だったわ。私、少し悔しかったの」


 そう言って唇を尖らせるメロディは可愛らしく、まだそんなメロディに耐性が少ないオレリアは、僅かに頬を赤らめた。


「と言いますと……」

「私たちは友人としていただけたけれど、まだレーナ様は心を許してくださっていないということでしょう?」

「確かにそうですね……しかし、まだ友人となって二日目ですが」

「そうだけれど、第二王子殿下ともそこまで長い付き合いではないはずよ」


 レーナが創造神様の加護を得たのが数週間前であることは周知の事実なので、オレリアは納得するように頷いた。


「まだ数週間ですね」

「ええ、だから私たちもより仲を深められるはずだわ。オレリア、一緒に頑張りましょうね」

「は、はい。頑張ります!」


 可愛らしく微笑んで首を傾げたメロディに、オレリアは拳を握りしめながら頷いた。


「どうすれば良いのかしら。放課後にでもお出掛けに誘うのはどう?」

「良いかもしれませんね。レーナ様は何がお好きなのでしょうか」

「……まだ聞いていなかったわね。明日の朝に聞きましょうか。そういえば、オレリアは好きなものがあるの?」

「私、ですか?」

「ええ、オレリアも友達だもの。もっと仲良くなりたいわ」


 メロディのその言葉に嬉しそうに口端を緩めたオレリアは、少しだけ悩みながらもゆっくりと口を開いた。


「私は……甘いものが好きです」

「そうなのね。ではレーナ様も誘って有名なスイーツ店に行きましょうか」

「わ、私の好きな場所で良いのでしょうか……」

「もちろんよ」


 即答したメロディに、オレリアが僅かに緊張感を漂わせながら問いかけた。


「メロディ様は、何がお好きなのですか?」

「私はお洋服が好きよ。何時間でも見ていられるわ。お屋敷に仕立て屋を呼んで、自分で細かいデザインから決めるの。フリルだったりボタンやリボンなど、そういう細かいものを眺めるのも大好きね。そうだわ、私の制服アレンジも自分で決めたのよ!」


 そう言って楽しそうに話を続けるメロディに、オレリアは僅かに驚きつつ、自分に好きなものを話してくれるのが嬉しいと頬を緩めた。


「メロディ様の制服、可愛いと思っておりました」

「本当? 嬉しいわ。ここについているフリルなのだけれど……」


 それからしばらくメロディの制服アレンジ談義が続き、メロディが我に返ったところで話が終わりとなった。


「ごめんなさい。私ばかり話してしまったわ」

「いえ、楽しかったです。今度レーナ様を誘って、服飾店にも行きましょう」

「そうね、楽しみだわ。後はレーナ様のお好きな場所ね」

「そうですね。明日、聞いてみましょう」


 オレリアのその言葉に頷いたメロディは、ふと何かを思い出したような表情を浮かべて口を開いた。


「そういえば、レーナ様はリオネル様ともとても仲が良い様子だったわね」

「……そうだったかもしれません」

「リオネル様と婚約をする前提で、オードラン公爵家の養子になられたのかしら」

「そうなのですか? 先ほどの様子では、第二王子殿下といずれ婚約をされるのかと思いましたが」

「私もそう思ったけれど、貴族社会の婚約は家同士の関係性もあるから難しいもの」

「確かにそうですね……」


 そこで二人の会話は途切れ、話を切り替えるようにメロディが明るく声を発した。


「今考えても仕方がないことね。いずれその辺りのお話もレーナ様にご相談していただけるような、仲の良いお友達になりましょう。ではお出掛けはいつにしましょうか。私たちの予定だけでも擦り合わせておけば、レーナ様に具体的な日程を提案できるわ」


 メロディのその言葉にオレリアは必死に脳内で自分の予定を思い浮かべ、予定が入っている日だけを伝えた。オレリアの場合は予定がない日の方が多いので、指定した日以外ならいつでも大丈夫、の方が早いのだ。


「たくさん空いていて助かるわ。私はこの日とこの日が空いていて……」


 それから二人は予定を擦り合わせ、明日レーナに提案する日程と、さらに行く場所についても少し話し合い、解散することとなった。


 それぞれリューカ車に乗り学院を去る時の表情は、二人ともとても楽しげな笑みを浮かべていた。

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